精米歩合50%以下の純米大吟醸酒のみを醸造する山形県・楯の川酒造

今回は、楯の川酒造の「楯野川」のラインナップから、通年商品として販売されている13種類をSAKETIMES編集部で飲み比べ、官能評価をしました。それぞれ、どのような味わいなのでしょうか。

『純米大吟醸 清流』

純米大吟醸 清流

テイスティングコメント

熟した果実を想起させる甘みの強い香りが印象的でした。強すぎず、弱すぎず、ほど良いバランスの整った吟醸香が立ち上がります。

口に含むと、香りと同様に、熟した果実のような甘みが広がります。中盤以降は、炊いた米のような、やわらかい旨味がじわっと続いていきます。心地良いボリュームがありながらも、それでいて純米大吟醸酒らしい、きれいな味でした。

淡白でいながらもしっかりと旨味を感じられる、鯛などの白身魚の刺身との相性が良さそうです。

◎商品詳細

『純米大吟醸 本流辛口』

純米大吟醸 本流辛口

テイスティングコメント

爽やかな果実を思わせる甘い吟醸香が、穏やかに感じられます。「清流」と比べると、香りの要素が少ないぶん、アルコールのツンとした刺激もありました。

味わいの要素は少なく、なめらかでスッキリとしていて、「本流辛口」という名前に納得感があります。余韻はアルコールの苦味が長く続き、料理やおつまみを誘う味でした。

日本酒の定番のおつまみである塩辛など、塩気の強い酒肴を少しずつ食べながら飲みたい一本です。

◎商品詳細

『純米大吟醸 主流 限定醸造』

純米大吟醸 主流 限定醸造

テイスティングコメント

「清流」と比べると、香りはかなり穏やか。吟醸香はあまり強く感じません。米由来の香ばしさや旨味のある香りが優勢でした。

味わいも同様に、穏やかでゆったりとした味。中盤〜終盤の旨味のボリュームが大きく、やわらかい甘み・心地良い旨味がじわりと続いていくイメージです。旨味の余韻で、ひと口の時間が長く感じられました。

魚の煮付けや豚の角煮など、こっくりとした味付けの料理との相性が良さそうです。

◎商品詳細

『楯野川 純米大吟醸 雄町』

楯野川 純米大吟醸 雄町

テイスティングコメント

大地を感じる野性味のある香りで、爽やかなハーブの印象もありました。ベースの香りは「主流 限定醸造」に近いですが、それ以上に旨味のある香りです。わずかですが、吟醸香もしっかりと感じられます。

飲みごたえは「清流」に近いですが、味の方向性は異なります。余韻はドライで、全体的に複雑性を感じる味でした。焼き鳥(たれ)など、香ばしく焼いた鶏肉との好相性が期待できそうです。

◎商品詳細

  • 商品名:『楯野川 純米大吟醸  雄町』
  • アルコール度数:15度
  • 精米歩合:50%
  • 販売価格(税込):3,630円(1,800ml)
  • 備考:本商品の四合瓶は既に完売し、一升瓶のみ、在庫があるそうです。※ 公開時点での情報ですので、ご了承ください。

『純米大吟醸 美山錦 中取り』

純米大吟醸 美山錦 中取り

テイスティングコメント

吟醸香も原料香(米由来の香り)もほど良く、全体的に穏やかで、爽やかなアルコールの香りを感じます。口に含んだ瞬間は甘みの印象が強いものの、終盤にかけてはハーブなどの薬草に近い苦味が優勢でした。

心地良い苦味が余韻として長く残るため、一般的な和食やおつまみだけでなく、セビーチェ(魚介類のマリネ)など、爽やかな味わいの他国の料理とのペアリングも楽しめそうです。

◎商品詳細

『純米大吟醸 三十三』

純米大吟醸 三十三

テイスティングコメント

グラスに注ぐと、甘みを感じつつも透明感のあるクリアな吟醸香が立ち上がります。精米歩合50%の他商品と比べて、かなり香りが強いです。

甘くて華やかな香りとなめらかでクリアな飲み口で、良い意味でオーソドックスな純米大吟醸酒という印象。中盤で米の旨味を穏やかに感じ、全体的にはすっきりとしています。余韻は少し長めで、米の旨味をしっかりと感じました。

蒸し鶏など、さっぱりとしていながらも旨味の強い料理との相性が良いでしょう。

◎商品詳細

『純米大吟醸 一雫入魂』

純米大吟醸 一雫入魂

テイスティングコメント

「純米大吟醸 三十三」と比べると、線の細いシャープな吟醸香です。果実の甘みではなく、ユリなどの白い花の甘みを感じます。

非常にやわらかく、なめらかな飲み口が特徴的。穏やかな甘みが細く長く続いていきます。全体的に主張が強すぎず、余韻もじんわりと長く続いていくため、心地良い時間でした。

「純米大吟醸 三十三」と同様にホワイトミートを使った料理に合いそうな印象ですが、やさしい甘みのある和菓子などにも好相性でしょう。

◎商品詳細

『純米大吟醸 十八』

純米大吟醸 十八

テイスティングコメント

「山田錦の純米大吟醸酒だ」と思わせる、バランスの取れた端正な香りです。果物を思わせる甘みと米の旨味をはっきりと感じ、それでいて、きれいな印象。

編集部の持っていた「楯野川」のイメージにもっとも近い味わいでした。飲み口は甘みが優勢で、中盤からは旨味の存在感が強くなります。余韻は、ほど良い旨味が穏やかに継続します。

テイスティングした中でもっともバランスの良い一本でした。淡白でかつ旨味のある食材であれば、肉でも魚でも野菜でも寄り添ってくれる味わいです。

◎商品詳細

『純米大吟醸 極限』

純米大吟醸 極限

テイスティングコメント

香りの質は「十八」とほぼ同じ印象ですが、こちらのほうが、やや強いように感じました。

味わいは「十八」の透明感がさらに増し、より洗練された雰囲気。「十八」も充分にクリアな味わいだったため、さらに上があるのかと驚きました。余韻は短めで、ややドライなイメージです。

やさしい甘みが口の中に持続する食材、たとえば、いかの刺身や寿司とのペアリングが良いでしょう。

◎商品詳細

『純米大吟醸 七星旗』

純米大吟醸 七星旗

テイスティングコメント

吟醸香はそれほど強くなく、「極限」と比較するとやや穏やかな印象です。クリアで透き通った甘みが、非常に上品です。飲み口は透明感があってきれいでなめらかですが、「極限」と比べると、若干の複雑性を感じました。

白身魚の刺身や蒸したホワイトポークなどにも合うと思いますが、上品な甘みのある和三盆などを使用した和菓子とのペアリングも期待できそうです。

◎商品詳細

『純米大吟醸 七星旗 2016vintage』

純米大吟醸 七星旗 2016vintage

テイスティングコメント

複雑な熟成香の中に、梅のような酸味を感じました。

ただ、口に含んでみると、「七星旗」がベースになっていることがよくわかります。「七星旗」と同様に透明感のある飲み口ですが、干したきのこのような旨味やアーモンドを思わせる香ばしさなど、熟成由来のニュアンスもはっきりと感じました。

酸味を同調させ、梅を使った料理との好相性が期待できると思います。また、熟成のニュアンスも強いため、チョコレートやナッツ類とのペアリングも楽しめそうです。

◎商品詳細

『純米大吟醸 光明 出羽燦々』

純米大吟醸 光明 出羽燦々

テイスティングコメント

吟醸香は思ったよりも穏やかで、原料香(米由来の香り)と少しのアルコール感があります。炊く前の白米のような、淡い米の香りを感じました。

とにかくきれいな口当たりで、透き通った味わいです。ただ、精米歩合1%というスペックから想像する以上に、米の旨味を感じました。中盤から終盤にかけて、やわらかい甘みが顔を出し、心地良い飲み口の一本でした。

◎商品詳細

『純米大吟醸 光明 山田錦』

純米大吟醸 光明 山田錦

テイスティングコメント

吟醸香と原料香(米由来の香り)のバランスが美しい一本です。

口当たりは「光明 出羽燦々」と同じく、圧倒的な透明感があります。ただ、中盤から少しずつ膨らんでいく旨味は「光明 山田錦」のほうが強く、山田錦のポテンシャルを感じました。香りと味の余韻が長いため、ひと口の時間が非常に長く、深呼吸のようなリラックス感のある味わいです。

◎商品詳細

「楯野川」13種類を飲み終えて

精米歩合50%から1%まで、「楯野川」の通年商品を飲み比べてみると、同じ純米大吟醸酒というスペックでもハッキリとした違いがあることに驚きました。

紹介した商品は、全国の「楯野川」特約店で購入することができます。特別なギフトに適したプレミアムな商品からふだん使いできる商品まで、さまざまなラインナップが取り揃えられているので、気になったお酒があれば、ぜひご検討ください。

(文/SAKETIMES編集部)

この記事を読んだ人はこちらの記事も読んでいます