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地元に寄り添う食中酒!岩手県釜石市のちいさな酒蔵「浜千鳥」に行ってきました

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東北には、美味しい日本酒を造っている酒蔵がたくさんあります。
今回はその中でも、「Meetup Kamaishi2017」の一環として、岩手県釜石市にある「浜千鳥(はまちどり)」を特別に訪問・見学させていただきました。

仕込みに使うのは、岩手県釜石市のおいしい井戸水

日本酒作りにおいて重要な仕込み水。
蔵の見学に入る前に、まず、水の飲み比べをさせてもらいました。

ここで出てきたのは以下の3種類。

・浜千鳥の仕込み水(井戸水)
・釜石鉱山の仙人秘水(ミネラルウォーター)
・釜石市の水道水

どのコップにどの水が入っているのか、わからない状態でクイズ形式の飲み比べをします。

舌の鈍感な私でもすぐにわかるほど、明らかにおいしい水が!
まさにその水こそが、浜千鳥の仕込み水でした。

浜千鳥の酒蔵には2本の井戸があり、外井戸で汲む水は酒瓶の洗浄用、内井戸で汲む水は仕込み水用、といったように使いわけられているそうです。なんでも、水質が異なるのだとか。

そもそもこの地に酒蔵を建てたのも、より良い水を求めて。酒造りに対する真摯な姿勢がうかがえます。

酒米・酵母も岩手生まれのものを使用

酒蔵見学は、現杜氏の奥村康太郎さんが案内してくださいました。

奥村杜氏は、20代で南部杜氏試験を首席合格した実力派です。
酒造りを志して岩手県内の酒蔵を回った際に、当時の釜石酒造商会を見学。浜千鳥のお酒と釜石の土地柄に惹かれて入社を希望したそうです。

蔵に入るとまず目に入ったのは米袋。使っているお米のサンプルを見せていただきました。

左から、兵庫県産の山田錦40%、岩手県大槌町産の吟ぎんが60%、精米前の兵庫県産の山田錦(玄米)です。
「吟ぎんが」は、岩手県内で吟醸酒向けの酒造好適米として開発された品種。浜千鳥ではこの大槌町産「吟ぎんが」をメインの酒米として酒造りを行っています。

お米は岩手県内の県酒造協同組合の精米所で精米しています。

洗米作業は「ムラがでないように」と機械で行っています。
杜氏の奥村氏によれば「すべて手作業にこだわるのではなく、機械で効率化したほうがいいところはしています」とのこと。反対に、目利きを大事にしている部分もあります。

そのひとつが、米の吸水具合の見極めです。米は浸水させて水を含むと白っぽくなります。このときの水の吸水具合を、直接目で見極めた上で計量し、グラム単位で判断しています。ほんの少しの差で、吸水後の全体の米の重量が大きく変わってしまうので、大事な作業になります。

こちらは麹室(こうじむろ)。
浜千鳥では、岩手生まれの「ジョバンニの調べ」と「ゆうこの想い」・自社酵母・きょうかい酵母などが主に使われています。

酒米「吟ぎんが」と岩手産酵母、さらに、冒頭で紹介した釜石の仕込み水でつくるお酒は"オール岩手"のお酒として販売されています。

海産物との相性には自信アリ!

株式会社浜千鳥は1923年に釜石酒造商会として創立しました。その後2003年に社名を変更し、現在に至ります。その歴史のなかで、浜千鳥は釜石の食事のお供、つまり"食中酒"として地元から愛されてきました。

酒蔵の見学後、試飲をさせてもらえました。

原料米による違いを感じてもらおうと、出されたのは2種類の純米吟醸酒。精米歩合はどちらも55%です。

「純米吟醸 吟ぎんが」

写真左は「純米吟醸 吟ぎんが」。岩手県大槌町産酒米「吟ぎんが」を使用しており、酵母は岩手県産の「ゆうこの想い」で醸しています。

まず甘くほんわりとしたやさしい香りが。このような香りの立ち方は、「ゆうこの想い」の特徴なのだそう。甘酸っぱいテイストですが、いわゆる「フルーティ」な日本酒ほど主張は強くありません。後味もスルッと軽やかです。

「純米吟醸 美山錦」

写真右は「純米吟醸 美山錦」。長野県産酒米「美山錦」を使用しており、こちらは自社酵母を使って醸しています。

こちらは比較的穏やかな香り。口に含んだ瞬間から喉に流し込むまでに、口中で味の変化があり、全体的にまろやか。

浜千鳥の造る日本酒の特徴は、バランスの良いまるさと、主張の強すぎない味です。だから、食中酒にうってつけ。そんな浜千鳥が特に得意なのが、海産物との組み合わせです。

「魚に合う自信はあります。合わないものはないんじゃないかってくらい」と奥村杜氏。

釜石に宿泊しているあいだ、飲食店で、刺し身や煮魚、お寿司といった海鮮料理と浜千鳥を合わせて飲んでみたのですが、ほんとうによく合います。

「日本酒は刺し身と合う」はもう古い常識だといわれていますが、「浜千鳥は刺し身と合う、魚と合う」これは間違いありません。

地元民に愛される食中酒

地元のコンビニ、スーパー、飲食店。どこにいっても、日本酒はまず「浜千鳥」が目につきます。

コンビニには、浜千鳥各種が取り揃えられていました。
釜石ではどこにいっても浜千鳥なのです。

浜千鳥全体の清酒の製造量は、一升瓶換算で年間約15万本ほど。その9割が岩手県内、うち6割が釜石市内だといいます。大半が地産地消の環のなかにあるため、残念ながら東京ではあまり見かける機会がありません。

浜千鳥をまだ飲んだことのない方も、飲んだことのある方も、ぜひお食事と一緒に。できれば、お魚と味わってみてください。
料理の邪魔をせず、お酒もお魚も美味しくいただける。そんな理想の食中酒が、浜千鳥なのです。

<取材・文/嘉手川瑞姫>

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嘉手川瑞姫

カデカワ・ミズキ。沖縄生まれ沖縄育ち、東京住まいのライター。21歳にして日本酒にどはまりしてしまった女の子。財布に千円札が余分にあると酒屋でお酒を買いがち。チョコレートを愛してやまないチョコおたく。フットワークが軽いので、どこにでも行きます。