こんにちは、日本酒指導師範&酒伝道師の空太郎です。
前編の【花から造る美酒】多彩な花酵母を使って酒造りをするフロントランナー 来福酒造の藤村俊文さんに聞く!
に引き続き、後編をおおくりいたします。
さて、10種類もの花酵母を、酒米やスペックとどう組み合わせているのでしょうか。
まずは、花酵母の種類から見てゆきましょう。
花酵母の種類
花酵母研究会によれば、リンゴや洋ナシのような香り(カプロン酸エチル)を多く産生するのはナデシコ酵母。
バナナのような香り(酢酸イソアミル)を多く作るのはベゴニア酵母やシャクナゲ酵母。
リンゴ酸に特徴があるのはアベリア酵母。
残る花酵母はいずれもバランスよく香りが出るそうです。
来福酒造ではすでに花酵母を使い始めて15年以上が経過しています。
当初から一度もらった酵母は自分の酒蔵で培養する方針でいたそうで、藤村さんが会社勤めを辞めて、蔵に戻って最初の投資が培養室の新設でした。
そして、培養は実際に酵母を使用する前日にできあがるように計画を立てて、元気な酵母を投入できるようにしています。
さて、そんな経験を生かして、藤村さんは緻密な考え方で酵母を選択しています。
酒米に合う酵母の選択
まずは、酒米の性質を見ます。蒸した後のコメの状態が硬くて溶けにくいタイプ、軟らかくて溶けやすいタイプ、あるいはその中間のタイプによって、相性の合う酵母を振り分けます。
また、いい香りを出すが短期間の貯蔵で重たくなりがちな酵母は、搾った後なるべく短期間で売ってしまう商品に採用する。
秋上がりしそうなお米の場合は香りよりも酸を出す酵母を。新年の初しぼりで売るお酒には香りを多く出す酵母を重視する、といった具合です。
具体的には次のような使い分けをしています。
お酒の種類と酵母の相性
初しぼりのお酒にはツルバラと日日草のブレンド。
シャクナゲはものすごくバナナの香りが出るが、火入れして貯蔵すると熟成が早いので、夏場の2か月間で売り切るお酒に。
大吟醸クラスは香りがあったほうがいいので、アベリア。
超辛口酒には発酵力が旺盛なベゴニア。
春に売りだすお酒にはサクラ。
綺麗な酸を求める場合はカーネーションか月下美人。
プライベートブランドで夏場に売る酒はヒマワリ。
ちなみに、「藤村さんが一番好きな花酵母は?」と伺うと、
「ベゴニアですね。キレもいいし、扱いやすい。純米酒にも本醸造酒にも適応できるので」
と、きっぱりでした。
季節感が出る花酵母は販売がしやすいようで、藤村さんは今後も新しい花酵母が手に入るようなら、迷わず使ってみるつもりだそうです。
これからも花酵母を使って美酒を醸すフロントランナーとしての活躍を期待したいと思います。
さいごに
花酵母は世に出た当初は、花の甘い香りがプンプンするのでは、と先入観を持たれ、端から買わない、お酒のイベントに花酵母酒があっても、一切試飲も拒否するという人も結構いらっしゃいました。
また、すべての酒蔵が花酵母を上手に活用できたかというとそうでもなく、酒質にややばらつきもあったようで、花酵母の人気は当初は伸び悩んだのです。
それがここ数年は、いろいろなメディアが注目するようになり、若い世代の間で日本酒に関心を持つ人が増えて、
花に棲みついていた清酒酵母にロマンを感じる人も多く、好んで飲む人も増えています。
是非、たくさんの酒蔵さんがいろいろな花酵母を使って、味わいの個性を競い合ってほしいものです。
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