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名古屋メシにも合う懐の広さ!愛知の「東春酒造」に行ってきた

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愛知県名古屋市といえば、手羽先、名古屋コーチン、味噌カツや味噌煮込みうどんに代表される「名古屋メシ」が全国的に有名です。

そんな名古屋市内には、実は7つもの酒蔵があることをご存知でしたか?今回はそのうちのひとつ、「東龍」などを製造する東春酒造にうかがいました。

こだわりのダブル麹室でお酒を造り分ける!

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名古屋駅から電車に乗って15分。新守山駅の近くに東春酒造はあります。蔵の目の前にある売店にて受付をお願いすると、杜氏の安藤さんがいらっしゃいました。

今回は、安藤杜氏に日本酒を造っていく工程順に蔵を案内いただきました。

(以下、「」内は安藤杜氏のコメント)
蔵の中に入ると、精米機がありました。

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- 精米は自家精米なんですね。
「そうですね、10月頭に五百万石で最初の仕込みを行います。それに備え、米の準備を始めています。精米歩合60%まで削る場合は10時間ほど。また、精米歩合35%まで削る場合は72時間ほどかけてゆっくり削ります」

「精米後は、洗米と浸漬になります。水は木曽川の伏流水を敷地内の井戸からくんでいます。洗い方は、手洗いとタンク洗いの2種類を使い分けています。例えば、精米歩合35%であれば1分洗って9分浸けます。これはストップウォッチで測ります。浸す時間は、初日は去年のデータをもとに、そこからは毎日のデータから割り出しています」
続いて麹室を見させていただきました。

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- 麹室が2つあるんですか!初めて見ました。
「はい。総破精(そうはぜ)用と突破精(つきはぜ)用とで分けています。東龍では、綺麗なお酒としっかりと味がある酒の造り分けをしています。突破精にすると綺麗なお酒に、総破精にするとしっかりと味があるお酒になります。
麹造りの作業は、麹を盛るのは5人全員で、手入れ作業は2人で行います。吟醸用は10kg盛り、総破精用は30kg盛りで行っています」

続いて仕込みタンクへ向かいます。

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- タンクは何本あるのでしょう。
「タンクは31本あります。24〜5日間、手作業で撹拌しています。半仕舞(はんじまい)にしており、2日に1本仕込みます」

- 酵母はどのようなものを使われているのでしょうか。
「造り方としては速醸酵母と山廃酵母の2種類を行っています。使用酵母は、吟醸用には香りが華やかになりやすい酵母、純米・本醸造用には、愛知県の酵母や7号酵母を使用しています。乾杯を吟醸酒でしていただき、食中は純米酒や本醸造酒に切り替えて飲んでもらえるとよいですね」

なるほど、麹だけでなく、酵母も使い分けをして味を変えているのですね。

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- 四角いタンクもあるんですね。こちらも初めてみました。

「そうですか、意外と使いやすいんですよ。他にもタンクがありますが、サイズはさまざまです。この仕込み量は社長と相談しながら決めています」

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- こんなところに酒粕が。
「酒粕も小分けにして販売していますが、あまり売れないんですよ…。昔はあるだけ売れていたようなんですけども悩ましいところです」

「お酒がかわいい」と語る安藤杜氏

東龍の試飲をしながら、安藤杜氏にさらに詳しくお話をうかがいました。

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- 3,000石程の生産量ですが、東京や大阪ではあまり見かけないのですね。
「流通は、ほぼ地元のみだと思います。むしろよくご存知でしたね」

- 「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2013」で最高金賞を受賞したためでしょうか、東京の居酒屋さんで純米酒を飲む機会がありました。とても好きな味でしたので覚えておりまして、今回、訪ねさせていただきました。
「それはありがとうございます。できれば東京にも行きたいのですが、なかなか営業に行く機会が少ないもので」

- 「東龍」は、安藤杜氏になってから味が変わったとお聞きしています。
「変わったわけではなく、前任の越後杜氏・鳥島さんの酒造りを継承しながら、その中に自分らしさを表現しようと思い、今の味になりました」

- かなりお若い年で杜氏になられたそうですね。
「平成17年から杜氏になりました。29歳でしたね。私の前任杜氏は越後杜氏の鳥島さんです。蔵人として働いていたのですが、鳥島さんの引退時に杜氏に指名されました。杜氏一年目は、一緒に造りましたが、その後は独力で杜氏として勤めています」

- 全国新酒鑑評会では、安藤杜氏になってから金賞を取られています。
「鑑評会への出品酒は、できたお酒の中から選びます。鑑評会用には造っていません。目指すところとしては、毎年金賞を取れるようになりたいと思っています。愛知は酒どころのイメージがあまりありません。そのため、金賞を取ることで愛知のお酒をPRしたいですね。愛知のお酒を飲んでもらうためにも、金賞を取ることで、名前が出るようにしたいと思っています」

- 杜氏として、お酒造りで楽しいところはどんなところでしょう。
「まず、もろみがかわいいんですよ。プツプツしているいきもの、これを見るのがとても楽しいですね。それと、できた酒を飲み、『これはキタな』と思った瞬間。やはり良い酒ができるとうれしいものです。そのお酒を家族やお客様に飲んでもらい、おいしいと言ってもらえるとさらによいですね」

- 逆に辛いことはありますか。
「うーん、以前は朝早かったことくらいでしょうか。現在は8時出勤に変えたので大丈夫です。作業的なことは、好きで行っているので辛くはないですね。
あとは酒米が足りないことがあります。特に山田錦は欲しい分だけ回ってくるとよいのですがなかなか。足りなくなった場合は、小さいタンクで仕込みます。タンクのサイズに種類があるので、いろいろと対応はできます。辛いことよりも、楽しいことのほうが多いです」

- 話は変わりますが、名古屋市内の蔵で協力してイベントをされているそうですね。
「名古屋市内の酒蔵のうち4社(東春酒造・金虎酒造・神の井酒造・山盛酒造)の若手が結成したグループ『ナゴヤクラウド』に参加しています。若い人中心に、蔵元の息子さんや若い営業が頑張っていますね。蔵として応援しています」

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- 今、いただいている「佐藤東兵衛 山廃純米酒」は濃厚でしっかり芯のある飲み応えです。
「東海地域の鑑評会では、東龍の純米酒と本醸造酒は燗酒審査で燗にすると評価が高いです。
燗にすると旨味がしっかりし、なおかつ、たるくならない。名古屋の濃い味付けにも対応できると思います」

-「東龍 純米吟醸生酒」はまさに吟醸酒。香りがぱっと広がり、フワッとたゆたんでからスーっと消え、清涼感があります。これだけ同じ蔵で味が違うのは、やはり明確に造り分けているからなんですね。

- では最後に、どのように東龍のお酒を飲んでいただきたいと考えていらっしゃいますか。
「まずは、華やかな飲みやすいお酒から試して欲しいですね。さまざまな味のお酒を造っているので、そこからいろいろと試していただければと思います」

ありがとうございました!

名古屋メシとあわせたい東春酒造のお酒

名古屋メシと言われる、味噌煮込み、味噌カツや手羽先に代表される濃い料理。この料理に合う日本酒とはなんだろうと思っていましたが、そのひとつの答えが東春酒造にありました。
最初の乾杯は大吟醸酒で、軽やかにスタート。
純米吟醸に切替え、鳥刺しや刺身を楽しみつつ、吟醸の香りとともにいただきます。メインの濃いめの料理が出たところで山廃純米にチェンジ。がっつりとした味を山廃の太さが受け止めます。

味噌煮込みの鍋が登場したならば、山廃を燗すれば体も芯から温まります。そして、少しはにかみながら、お酒がかわいい、造るのが楽しいと話す安藤杜氏の笑顔を思い出しながら、また一杯を飲む。

一つの蔵の酒で、食事の最初から最後まで対応できる懐の広さ。

まだ愛知県以外では見ることは少ないかもしれませんが、
幅広い料理に合う東春酒造のお酒、ぜひ飲んでいただきたいです!

東春酒造のご紹介

創業は元治二年(1865年)。
名古屋城の櫓を建造する予定だったが、中止となった際の材木を譲り受け、
創業者・佐藤東兵衛が酒蔵を建造。
屋号を「龍田屋」とし、酒造りを始めました。
昭和初期までの銘柄は「菅公」。
その後、創業者の名前より「東」、屋号より「龍」をとり「東龍」と改め現在に至っています。
自家精米した酒造好適米をふんだんに使い
手造りで、昔ながらの山廃酒母の純米酒を始め、特定名称酒のみを醸造しています。

東春酒造株式会社HP より)

(取材・文/鈴木将之)

日本酒の魅力を、すべての人へ – SAKETIMES

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鈴木 将之

普段は某コンサルティング会社で堅い仕事をしていますが、暇さえあれば日本酒会に参加したり酒蔵を訪問しています。大きな蔵から小さな蔵まで、造り手の思いと共に、日本酒の様々な魅力を熱く伝えます。