日本酒の原料は、米と米麹と水だけですから、米の良し悪しが酒の出来に大きく影響します。なかでも酒造りに適した米のことを、酒造好適米や酒米と呼びます。
今回は、酒米の一大生産地・兵庫県で育成された「愛山(あいやま)」の味わいや歴史、その特徴を探っていきましょう。
米の旨味がしっかりと感じられる濃醇な味わい
「愛山」は、酒米の王様と呼ばれる「山田錦」と日本最古の原生種である「雄町」をルーツに持つ酒米です。
大粒で、山田錦と同等かそれ以上の米粒の重さがあります。心白発現率は山田錦より高く、心白が非常に大きいため、米が砕けやすく高精白には向きません。
また、よく溶けるため雑味が出やすい傾向にありますが、一方で米の濃醇な甘みも強く感じられます。
山田錦よりも栽培が困難な品種
1949年に兵庫県立明石農業改良実験所で、「愛船117」を母に、山田錦と雄町を掛けあわせた「山雄67」を父として誕生した酒米で、両親の名前から一文字ずつとって「愛山」と名付けられました。粒が大きく背も高くなるため倒れやすく、農業改良実験所で試験が中止されることもあるほどに栽培が難しいと言われています。
その栽培の難しさから、現在でも生産する農家は少ないです。生産量は第一位の山田錦の34,644玄米トン(令和元年)に比べて、732玄米トン(令和元年)と山田錦の2%程度しかありません。
しかし、この品種が無くならなかったのは兵庫県の剣菱酒造が契約栽培を続けて守ってきたからです。そのおかげで、現在では全国各地の酒蔵が愛山を使った日本酒を醸すようになりました。
(文/SAKETIMES編集部)