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三増酒の出来るまでの経緯と純米酒復活に至るまでの流れ【Vol.4】三増酒の終焉と日本酒マーケットの現状

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こんにちは、SSI研究室専属テイスターの石黒と申します。

日本酒が低迷した原因を作ったのは三増酒という意見は多いですが、どのような経緯で三増酒が造られ、どのように純米酒が復活したのかまでは意外に知られていないように感じます。三増酒について、また純米酒が復活に至るまでの経緯を説明させていただきます。

Vol.1では、「合成酒と三増酒の登場」と「満州国とアルコール添加酒」について、
Vol.2では、「終戦直後の食糧難と施設及び人的損失による酒造りの困難」と「戦後闇市にて販売されていた密造酒について、
Vol.3では、「昭和30年代後半から昭和40年代後半にかけての日本酒ルネッサンス」についてお伝えしました。

vol.4の今回は、「三増酒の終焉と日本酒マーケットの現状」についてお伝えいたします。

三増酒の終焉と日本酒マーケットの現状

Ⅰ日本酒の低迷とアサヒスーパードライの登場とワイン、焼酎のブーム

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(出典:アサヒビール HP

1987日本がバブル景気の最中、アサヒスーパードライが発売されました。

スーパードライは、刺身に合うビールとして開発され、キャッチコピーが、コクがあるけどキレがある

スーパードライの発売によってアサヒビールの経営が立ち直っただけではなく、その後のドライ戦争等により、この時期日本のビール市場は拡大しました

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(出典:楽天 HP)

その後、洋酒やワインの関税が引き下げられ、1990年代後半にワインブームが起こり、それまで家庭であまり馴染みのなかったワインが家庭でも飲まれるようになり、その後も低価格帯のワインがテーブルワインとして定着していき、一定のシェアを酒類市場の中で持つようになっていきました

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(出典:楽天 HP

2000年代に入り健康に良いという理由と品質の向上から焼酎ブームが起こり、焼酎の市場が大きく拡大していきましたこの焼酎ブームの結果、日本酒と焼酎の市場でのシェアは逆転し、日本酒の市場はますます縮小していきました

Ⅱ日本酒級別制度の終焉と特定名称酒制度の登場

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(出典:長龍酒造株式会社 HP 蔵人日記

平成2(1990)から日本酒は品質による特定名称酒制度が政府によって導入され、それまでの級別制度と併用して用いられるようになりました

その後、平成4(1992)に級別制度が廃止され、現在は従来の特級、上撰、佳撰に変わって、特級、1級、2という表示が一部の市販酒で用いられるようになりました

ただ、この特定名称酒制度も9つのカテゴリーにわかれていて、一般の消費者から日本酒のカテゴリーの種別が少し解り難くなっています

2006年の酒税法改正による三増酒の終焉

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(出典:菊正宗 HP

以前より日本酒低迷の原因と考えられていた三増酒造りが平成18(2006)より廃止され、清酒に加えられるアルコール添加量が従来よりも少なくなるよう規制されました

もっとも、一部の酒蔵では既に普通酒において三増酒製造を止めていた酒蔵もあり、規制されたというよりも時代の流れと共に消えていったというのが本筋のようにも考えられます

戦後の物資不足の時代はとうに終焉し、三増酒はその役割を早くに終えていたにもかかわらず、現代に至るまで残っていた理由としては、メーカーサイド及び消費者サイドから重宝され、経済酒としての一定のマーケットがあったことがあげられるのではないでしょうか。

Ⅳ家飲みにおける日本酒の比率と若い方のアルコール離れの原因

平成16(2010)における家飲みでの酒類マーケット構成は、以下のようになっています。

年代

20

30

40

50

60

70代以上

清酒

2.7

4.9

9.6

19.0

30.2

33.6

焼酎

3.4

8.7

13.4

21.3

28.2

24.6

ワイン

4.6

11.1

22.4

21.7

25.1

15.0

ビール

4.9

10.6

14.9

21.5

27.2

20.9

発泡酒・新ジャンル

4.4

18.4

20.1

22.8

19.5

14.9

(日本政策投資銀行新潟支店レポートより引用)

少し古い資料になりますが、家飲みにおける日本酒の年齢別構成比率は、明らかに他の酒類よりも高く、高齢者向けの経済酒もマーケットの需要から無くすことができないことが、この表より読み取ることができます

一方で、以前は日本酒の三増酒を無理やり飲まさせられておいしくなかったので日本酒が嫌いになったという話をよく耳にしましたが、最近は若い世代のアルコール離れ自体が進んでいるように感じます

若い世代のアルコール離れに至る原因については、酒類提供者の側にアルコールの危険性についての基本的知識が欠如していることで急性アルコール中毒に関する事故が発生していることと、仕事の付き合いで父親がお酒を飲んで帰ってくる姿を見て酒を飲むのを若い世代の方が止めていることがあるように感じます。

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石黒 建大

SSI研究室専属テイスター。酒匠、日本酒学講師、SSIの日本酒地酒検証研究員、日本酒香味検証研究員、日本酒セールスプロモーション研究員。 第2回、第3回世界利き酒師コンクールセミファイナリスト。現在は大阪の某有名料理店に勤務。