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都会のど真ん中でどぶろく造り ―― 東京・神田「にほんしゅ ほたる」の店主・宮井敏臣氏が語る日本酒バルの新スタイル

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JR神田駅の西口から徒歩5分。にぎやかな西口商店街を通り抜けると飾樽を構えたお店が見えてきます。そこは本格的な料理も楽しめる日本酒バル「にほんしゅ ほたる」。約50種類の日本酒を均一価格で飲めるほか、なんと店内で醸造したフレッシュなどぶろくも味わえる注目のお店です。

今回は、そんな「にほんしゅ ほたる」のオープンに至るまでの経緯や自家醸造どぶろくの魅力、そして今後の展開について、店主の宮井敏臣氏にお話しを伺いました。

同じ醸造という仕事を通して知った日本酒の魅力

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宮井氏は大学卒業後、クラフトビールを製造するヤッホーブルーイングに入社。その後、地ビール事業の責任者として働いていました。

―もともとは、日本酒ではなく地ビールの製造に関わる仕事をされていたんですね

宮井氏「そうです、当時は毎日できたてのビールに触れていました。ときどき仕事の勉強で酒蔵に出向くことがあったんです。そこでしぼりたての直汲み日本酒を味わった時、あまりのおいしさに感動してしまいました。そのころから日本酒を人生のテーマにしたいと思い始めました」

―公認会計士や税理士の資格もお持ちとのことですが、どういった経緯で今の事業を始められたのですか?

宮井氏「ヤッホーブルーイングを退社したあとは、会計事務所を経営し、中小企業向けに企業再生のコンサルティングなどをしていました。同時にこの事業を活かして日本酒の支援ができないかと考え、酒蔵の事業再生支援を始めようとしました。全国の酒蔵が都内に酒を卸すことでモチベーションを上げられるような酒蔵経営のコンサルティングですね。しかし、日本酒を今以上に広めていくためには、若い人々を中心とするビギナーが日本酒に初めて触れる機会をつくることが大切だと気づいたんです。そこで、酒蔵の支援だけにとどまらず、このような日本酒バルを開店するに至りました」

「日本酒の啓蒙をライフワークにしたい」という宮井氏の熱い想いから始まった「にほんしゅ ほたる」。ここのお店のウリでもある自家醸造のどぶろくについて、詳しく話を伺いました。

こだわりの原料と本格的な設備で醸す「自家醸造どぶろく」

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―どぶろく醸造のこだわりは何ですか?

宮井氏「うちの自家醸造どぶろくが日本酒を好きになるきっかけになってほしいという想いから、原料にはこだわり、酒米に山田錦を使っています。また、敢えて清酒に近い造り方をすることで、初めての人でも飲みやすいどぶろくを目指しています」

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店内にあるどぶろくのタンクを見せていただきました。およそ1.5坪のスペースに2つの200リットルのタンクを置いて、交互にどぶろくを醸しています。

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タンクの中を覗かせていただくと、米粒の形がわずかに残っていました。

「自家醸造どぶろく」が提供できるまで

現在、日本の各地にどぶろくを造っている場所がありますが、その多くはいわゆる「どぶろく特区(構造改革特区)」の制度を利用したもの。「どぶろく特区」とは、ひとことでいうと、農業者が自ら生産する米とを原料とし、自ら運営する農家民宿や農家レストラン内で消費する目的であれば、免許申請の条件が緩和される制度のことです。

では「どぶろく特区」ではない東京のど真ん中で、なぜ自家醸造のどぶろくを醸すことができたのでしょうか。

宮井氏「構造改革特区の制度で造られているどぶろくは地域振興を目的としたものです。ですが、にほんしゅほたるのどぶろくは、特区を利用しない通常の製造免許で造っています。どぶろくは『その他醸造酒』に分類されますが、その他醸造酒の免許を昨年の12月に取得しました」

―通常の製造免許として取得されたのですね!ですが、酒蔵でもない、ましてや東京のど真ん中で自家醸造どぶろくを製造するには、いろいろと苦労があったのではないですか?

宮井氏「構造改革特区ではない東京でどぶろくの製造免許を取得することは、決して容易なことではありませんでした。たとえば、年間6,000リットル以上のどぶろくを醸造し、必ず販売できなければならないことや、醸造設備を用意してからではないと申請できないこと、醸造技術があることを証明してもらう必要があることなど、免許申請にはさまざまな条件があり、結果的に申請に8ヶ月もかかってしまいました。ですが、飲食店を経営している知り合いや、地元の方々のサポートもあって、開店までのステップが踏めました」

「自家醸造どぶろく」を本格的な和食とともに味わう

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さて、そんな「にほんしゅほたる」の自家醸造どぶろくを試飲させていただきました!

グラスに注ぐと、ふんわりとお米の香りがして、きめ細い泡がとても上品です。いざ飲んでみるとわずかな発泡感を残したまま、さらっと喉を通ります。清酒らしいキレを重視しすっきりした味わいに仕上げることで、初めてどぶろくを飲む人でも飲みやすいように工夫されているのだとか。

どぶろくに合わせて、ほたるイチオシのお料理もいただきました。

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「にほんしゅ ほたる」の料理は、都内のホテルや料亭で約20年間腕を磨いた和食料理人・神戸悠輔氏によるもの。日本酒と肴のマリアージュを日々探求されているというだけあって、かなり本格的です。

日本酒やどぶろくがメインのバル業態にも関わらず、プロの料理人による本格的な和食が食べられるのも、「にほんしゅ ほたる」の大きな魅力ですね。

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定番銘柄から季節限定品まで、常時50種類程度を揃えるなど、どぶろく以外の日本酒も充実しています。

グラスのサイズは3種類あり、一番小さいものだと1杯60ml(360円)から注文できます。さらにすべての日本酒が均一価格で飲めるようになっています。日本酒を初めて体験する人でも、これなら安心ですね。

「にほんしゅ ほたる」の今後の展開

最後に、宮井氏に「にほんしゅ ほたる」の今後の展開についてお聞きしました。

宮井氏「2017年には自家醸造どぶろくと全国の銘酒の通販をはじめたいと考えています。さらに、現在外部から購入しているどぶろくの原料となる麹を自社での製造を開始するなど、これからいろいろと変革していく予定です。

また、店舗展開としては、都内に直営店を3店舗出店したいと考えています。日本酒を今以上に広めていくためには、実際に日本酒に触れる機会を多く提供することが大切ですからね。そうして、私が日本酒の店を開こうと思ったきっかけでもある、直汲みしたお酒をその場で飲むという体験をたくさんのお客様に提供したいです。近隣の居酒屋にしぼりたてのどぶろくをデリバリーするなんてのも、面白そうだなと思っています」

「にほんしゅ ほたる」は、店舗であると同時に“小さな酒蔵”であるとも言えます。酒蔵というと、地方にあり、広い敷地と大きな設備で酒造りをするイメージが一般的だと思いますが、ここは東京のど真ん中。しかも、わずか1.5坪のスペースで酒造りをしています。

しかしながら、そこで行われているのは原料と品質にこだわる、まさに本格的な酒造りそのもの。宮井氏の熱い想いと積み重ねたさせた努力によって、厳しい条件を乗りこえ開店にいたった「にほんしゅ ほたる」。そこには、“あたらしい酒蔵のカタチ”を感じさせるワクワクがありました。

醸造や販売の条件が厳しいなかで、こうして開店までに至ることができたのは、宮井氏のしぼりたてお酒の感動をお客様にも感じてもらいたいという熱い想いと、免許取得のためにひとつひとつ積み重ねた努力あってのものでしょう。

「にほんしゅ ほたる」が今度どのように展開・発展していくのか、期待が高まりますね!

◎にほんしゅ ほたる
住所:東京都千代田区内神田1-17-1 MⅢビル1階
電話:03-5577-6556
営業時間:平日 17:00-23:30(LO22:30)・土曜日 17:00-23:00(LO22:00)
日曜・祝日定休

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