「SAKETIME(サケタイム)」と「SAKETIMES(サケタイムズ)」
どちらも2014年6月にリリースされた、日本酒に特化したWebサービスです。
名前がよく似ていることもあって、SNSの投稿やメールの文面、打ち合わせの場などで、たびたび混同されることがありました。今回はお互いの5周年を記念して、SAKETIMEの代表・吉田和司さんとSAKETIMESの編集長・小池潤の対談企画が決定。それぞれのこれまでの歩みと、今後について伺いました。
名前は似ているけれど、違うサービスです
吉田:企画のご連絡をいただいた時に「ついに名前を訴えられるのか」と社内がざわつきました(笑)
小池:名前が似ているのを逆手にとった企画ができるんじゃないかとずっと考えていたんです(笑)。ちなみに、どうして「SAKETIME」という名前にしたのですか。
吉田:SAKETIMEは、飲んだ日本酒の感想を書いていただくユーザー参加型のサービスです。自分の感じたことをしたためる時間も「日本酒を楽しんでいる時間」だと考えて、SAKETIMEと名付けました。
小池:SAKETIMESは、「ニューヨーク・タイムズ」から勢いで付けた名前なんです(笑)。実はこれまで、たくさんの方々に間違えられてきたのですが、そちらはどうですか。
吉田:もちろん、我々もたくさん間違えられていますよ。「いつも読んでます!」「〇〇の記事が気に入っていて......」と言われると「それはSAKETIMESですよ」とお答えしています(笑)。
小池:やっぱりそうだったんですね......お互い諦めずに訂正し続けましょう(笑)。
美味しい日本酒を忘れないために
小池:そもそも、どうして日本酒に特化したサービスを立ち上げようと思ったのですか。
吉田:創業者が日本酒好きだったからです。彼がやりたかったのは、ユーザーが投稿したコンテンツによって作られていくメディア。せっかく美味しい日本酒を飲んだのに、銘柄や味わいを覚えていないのはもったいない。そこで、飲んだ日本酒を記録するサービスがおもしろいんじゃないかと。
小池:吉田さんは、いつから運営に関わっていたのですか。
吉田:およそ2年前からですね。それまでは、創業者の友人として相談を受けたり、いちユーザーとして投稿したりしていました。
小池:吉田さんも日本酒がお好きだったんですね。
吉田:もともと小売業のバイヤーをしていたのですが、酒類メーカーにいた時期もありました。並行して運営している会社も酒類関係で、かれこれ20年以上は酒類業界に携わっています。
小池:ちなみに「SAKETIMES」という名前のサービスがあると知ったときは、どのように思われましたか。
吉田:衝撃でした!当初、こちらが名前を変えるべきかと悩んだ時期もありましたよ(笑)。
オリジナルで良質な一次情報を
吉田:SAKETIMESは、どうして日本酒特化のメディアにしようと思ったのですか。
小池:吉田さんと同じように、とにかく日本酒が好きという気持ちがすべてのベースにあります。SAKETIMESを立ち上げた弊社の代表が美味しい日本酒に出会い、その可能性にトライしたいと考えたのがきっかけですね。
ただ、日本酒のことをもっと知りたいと思った時に、良質な情報にたどり着けなかった。そこで、日本酒の情報流通を改革すべく、SAKETIMESがスタートしました。美味しいお酒や満足度の高いイベントが増えていく一方で、それらを知る術が不足していると考えたんです。
吉田:SAKETIMESの記事はどのように作っているのですか。
小池:主に全国各地、そして海外にいるライターが企画・取材・執筆をしています。ライターは本業が別にある方々がほとんどで、酒販店・飲食店のスタッフや料理研究家、現役の蔵人、通訳案内士など、さまざまです。文章能力も大事ですが、自身のネットワークを使ってオリジナルな日本酒情報を見つけてきてくれるか。ここを重要視しています。
吉田:他のメディアにはない独自の仕組みですね。
小池:現地取材の一次情報を発信することにこだわっています。編集部で企画から編集までを行う記事についても変わりません。それが、SAKETIMESの大きな強みです。
ユーザーからの言葉が支え
小池:この5年間で特にうれしかったことはありますか。
吉田:居酒屋で飲んでいたら、隣のお客さんがお酒のラベルを撮影していたんです。その後、SAKETIMEに投稿しているのを見たときは感動しました。ユーザーが実際に使っている姿を見るのは、本当にうれしいですね。もうひとつは、ある酒屋で、若い女性がSAKETIMEのレビューを見てお酒を選んでいたときも感動しました。
小池:自分たちの作っているものが、実際にユーザーの日本酒体験を後押ししているのを見るのは、グッときますよね。「SAKETIMES International」で都内の酒屋を特集したことがあって、シンガポールから旅行に来ていたお客さんがその記事を読んでお店に来てくれたという話を聞いたときは熱い気持ちになりました。異国から旅行に来て、SAKETIMESの情報を頼りに日本酒体験にたどり着いた。情報が人と日本酒をつないだ瞬間だと感じました。
これからの5年間
小池:お互いに5周年を迎えて、これからの展望を教えてください。
吉田:ひとつは、世界中の方々に使ってもらえるサービスにすること。今後、英語と中国語には対応したいと考えています。日本酒の魅力を世界に広めようと努力されている方々の後方支援として活用してほしいです。商品のPRをするときに、ユーザーのリアルな声が役に立つとうれしいですね。
小池:海外の方々からどんなレビューが集まってくるのか、とても興味があります。
吉田:私たちもわくわくしています。まずは、現在投稿されているレビューを多言語化し、日本人による評価として紹介します。その後で、現地の方々にもレビューを書いていただけるようにしていきたいと考えています。
小池:日本人がどんな評価を付けているのか、海外の方々が日本酒を選ぶ際の重要な判断材料になると思います。飲みなれていないお酒を選ぶ時、現地での評価が高いものを飲みたいですから。
吉田:もうひとつは、日本酒にこだわりのある飲食店や酒販店のサポート。どんなお店にどんな日本酒が置いてあるのか、知ってほしいなと。
小池:海外市場と飲食店・酒販店へのサービス展開。包括的な取り組みになりそうですね。
吉田:SAKETIMEを活用していただくために、もっとも大事なのはユーザーの方々に投稿してもらうこと。それが、我々の財産です。ユーザー目線でより使いやすいものにしていきたいですね。SAKETIMESのこれからはどんな形になるのでしょうか。
小池:メディア運営で培ってきた読者のコミュニティや、全国の酒蔵とのネットワークを活かして、Webメディアという枠組みにとらわれない事業を展開していきたいです。求職者と酒蔵をつなぐマッチングサービスや、酒蔵のもつストーリーに焦点を当てた日本酒コンペティションなど、いろいろなアイディアがあります。
SAKETIMEもSAKETIMESも日本酒業界の内側と外側をつなぐ存在だと思っているので、コラボ企画もやりたいですね。これからも、どうぞよろしくお願いします。
吉田:日本酒の魅力をもっと広く知ってもらうために、お互いがんばっていきましょう!
どちらも日本酒に特化したサービスで、かつ名前が似ているため、混同されることの多い「SAKETIME」と「SAKETIMES」。サービスの内容は違えど、日本酒の魅力をもっと多くの方々に知ってほしいという思いは同じです。
今回の対談を通して、日本酒の未来に貢献しようという強い意志があらためて明らかになりました。それぞれの今後に期待しましょう。
(文/橋村望)