2017年7月22日に起きた秋田県南部の豪雨災害。出羽鶴酒造も被災したこの災害から1ヶ月が経ちました。報道される機会は減ってしまいましたが、蔵では毎日掃除作業。いまだに終わらない片づけが続いています。
浸水でほとんどの機材が泥をかぶってしまった
ようやく被害の全貌が見えてきました。蔵のあちらこちらに浸水の爪痕が残っているのがわかります。
出羽鶴酒造には、刈穂酒造と合せて2蔵分の米を搗精(とうせい)する精米機が4台ありましたが、すべて浸水によって故障しました。基盤やパソコン、昇降機なども破損。玄米を搗く際に床下の空間に玄米を保存しておくのですが、そこに泥水が多く入り、掃除は1ヶ月経った今でも完全には終わりません。
フォークリフトとポンプが全て破損したのは大きな痛手です。水害が起きてしまったら、重要な機材はできるだけ高い所に持っていくことが必要でしょう。取り外しがすぐにできない大型モーターなどは、酒造りの期間が終わったら取り外して高い所に保管するという方針になりました。
ヤブタも浸水したので、板や配管を洗っています。枚数が多いものは手間がかかります。
浸水した休憩所は床板を外し、張り直しです。壁や床などの工事が連日続いています。
瓶も泥をかぶってしまったものが多くありました。酒粕などに用いる梱包資材も多くが泥をかぶり、このまま使うことはできません。
蔵にある道具は木製のものが多く、これらは煮沸して再利用できればよいのですが、棚や下駄箱、机などは、残念ながら廃棄をしたものが殆どです。
ボランティアに助けられた清掃作業の日々
浸水してからというものの、穏やかだった夏の蔵は一変し、片づけに追われる1ヶ月となりました。
当面の目標は、10月から始まる造りに間に合わせること。蔵人や蔵のOBが集まって復旧作業をしますが、被災した蔵人もいたり、野菜農家が農繁期のため、人手が足りなくなる日もありました。そんなときには地元酒販店や様々な地域からのボランティアの手を借りながら作業を進めました。遠い所からわざわざ来てくださった方や、いつもはお店でお世話になっている方々が大集合です。
前半は浸水した大きな機材を運びだす作業がメインで、それを洗い流すような作業に移り、後半は細々としたものの掃除になりました。同時に支援物資もたくさんいただきました。飲み物や果物、お菓子は暑い作業に助かります。タオルや掃除用具は効率的な掃除に欠かせません。
今まで以上に清潔で働きやすい酒蔵を目指して
泥水が浸かったところは掃除をして殺菌を行う必要があります。タワシでこすったり、洗浄機で流したり、タオルや歯ブラシでくまなく掃除をします。蔵全体を改めて徹底的に掃除することにし、道具類も再整理。いらないものは捨て、必要なものはよく洗いました。
今後は、オゾン水や過酸化水素を利用した殺菌作業をしていきます。その後しっかり清掃した箇所に、雑菌がいないかどうか検査します。
検査結果が出るのはしばらく後ですが、それまでの間も殺菌は欠かしません。
壁や床も再整備が行われ、今まで以上に働きやすく清潔な環境で酒造りが行える予定です。休憩室の畳が新しくなるのは、個人的にうれしいところですね。
29BYの仕込みの予定が立ち始めました
このような作業の積み重ねで、現在では「だいぶ復旧してきたなぁ」という思えるほどにはなりました。当初は終わりが見えないと思っていたものの、泥が片付き壁や床に輝きが戻ると、秋への期待も高まります。
精米機の修理のスケジュールも決まり、蔵入りの予定日も決まり、29BYの生産予定が組まれはじめています。一部の設備は復旧が終わったので、市内で販売している甘酒の生産を再開しました。徐々にではあるものの、酒造りに向けて一歩ずつ歩んでいます。
このように、以前よりも酒造りの環境がと整うと信じて復旧作業を進めていますが、先の8月25日、再び大雨が秋田県を遅い、雄物川が数カ所で氾濫。「大曲の花火」の桟敷席も被害を受けました。
蔵でも大雨洪水警報が発令されると、近所の蔵人が招集されて、上の階にポンプやホース、洗浄機、酒造道具を運び、フォークリフトやトラックを避難させるといった対応をとっています。今回は2度目の浸水には至らなかったものの、今までにない気候の変化に十分気を付けなければなりません。
来月は台風が気になるところですが……無事に秋を迎えられることを願うばかりです。
(文/リンゴの魔術師)