兵庫県・灘を代表する酒造メーカーの大関が、2021年8月31日より、クラウドファンディングのプロジェクトをスタートしました。

「BOUQUET OF HERBS(ブーケ オブ ハーブス)」と名付けられた新商品は、純米酒に香り豊かなハーブを漬け込んだリキュール。これまでの大関の商品ラインナップにはなかった新たなジャンルのお酒として、社内からも大きな期待が寄せられています。

大関にとって初めてだらけの試みだったという「BOUQUET OF HERBS」は、どのようにして生まれたのでしょうか。商品開発の中心メンバーである3名の女性社員に話をうかがいました。

既存の日本酒の枠に当てはまらない商品を

新商品の企画・開発を担ったのは、大関の女性社員のみで構成されたチーム「彩irodori」。女性目線で商品を開発するために、営業、商品開発、研究所などの各部署の若手社員を中心に、2019年に編成されました。

2020年には、同チームで開発した第1弾の商品として、外部の女性唎酒師とコラボした「舞藤(まいふじ)特別純米酒」を限定販売しました。

このチームの第2弾商品となるのが「BOUQUET OF HERBS」です。

大関 営業推進部 商品開発グループ 波多野彩子さん

「BOUQUET OF HERBS」の商品企画全般を担当した波多野彩子さん

「彩irodoriは『既存の枠に当てはまらない、チャレンジングな商品をつくろう』という目標を持ったチームです。さまざまな新商品のアイデアを提案していくなかで、"リフレッシュ"をコンセプトに、大関の前例にない"ハーブを使ったお酒"を造ろうということになりました」(営業推進部 商品開発グループ 波多野彩子さん)

ハーブを使ったお酒というアイディアの発端は、長部訓子社長の「食事は体に自然と調和していくもので、お酒もそのひとつでありたい」という想いがヒントになったといいます。

そこから「彩irodori」で形にするべくアイデアに肉付けしていき、"純米酒にハーブを漬け込んだお酒"という方向性が固まっていきました。

ハーブを漬け込むという前例のない手法

新商品の方向性が決まると、まずは使用するハーブの選定とブレンド比の検証から開発がスタート。ブレンドするハーブの種類を4種類と決め、20種類以上のハーブとスパイスの中からどの組み合わせが良いか、試作を重ねました。

総合研究所の酒質開発チームで十数種類の候補まで絞り、「彩irodori」のメンバーがそのすべてを試飲。もっとも人気の高かった組み合わせから「レモングラス」「シナモン」「ジンジャー」「コリアンダーシード」の4種類が決まり、そこから微調整を加えて最終的なハーブのブレンド比を決めていきました。

「レモングラス、シナモン、ジンジャーの3種類だけでは、ちょっとありがちな組み合わせかなと感じました。せっかくなら少し変わったものをと考えて、コリアンダーシードを入れてみたんです。さわやかな香りがプラスされて、個性を出すことができました」(総合研究所 技術開発グループ 原田春佳さん)

仕込みの方法も、清酒造りとは大きく異なります。選定したハーブをメッシュ状の袋に入れ、袋ごと原酒に漬け込むことでリキュールを造りますが、漬け込みの時間もお酒の味を左右する重要なポイントです。

大関 総合研究所 技術開発グループ 原田春佳さん

酒質の設計など商品開発を担当した原田春佳さん

「ハーブをずっと漬け込んでいると雑味が出てしまうので、時間を変えながら何度も試験し、雑味を出さずにハーブの香りがしっかり感じられる、ベストな時間を探りました」(原田さん)

ハーブを漬け込む原酒は、大関がもともと製造していた純米酒の中から選び、すっきりしたタイプと米の旨味を感じる甘酸っぱいタイプの2種類をブレンド。甘みと酸味のバランスが取れた味わいを目指したといいます。

大関では梅酒やリキュールなどの商品も展開していますが、ハーブをそのまま漬け込んだ酒造りは初の試みです。研究所で試作に成功したとしても、製造部門で安定的に生産できなければ商品化は叶いません。

「おいしさの追求だけでなく、現実的に大量生産できる製造方法になっているかを実証するのがとても大変でしたね。漬け込みとなるとコストもかかるため、ハーブのエキスを使う方法も上がったのですが、せっかくなら本物のハーブから抽出したいという思いがあったので、その点は妥協していません。

ハーブの品質にもこだわりたくて、さまざまなメーカーのものを比較して選んでいます。これまでも新しい商品の開発は担当してきましたが、ここまで何もわからない状態でゼロから造るのは初めてだったので、製造に携わるすべての方の協力があってできた商品だと思っています」(波多野さん)

甘み、酸味、香りのすべてが調和

試行錯誤を繰り返し、通常より長い1年以上の開発期間を経て「BOUQUET OF HERBS」は完成しました。自然の素材そのままを使うことにこだわり、香料や着色料は不使用。奄美産のきびオリゴ糖を加えた、ほのかな甘みのあるやさしい味わいのリキュールです。

液色はハーブ本来の色を活かし、その色と合わせるためラベルデザインには上品なゴールドが使用されています。500mlのスリムなボトル瓶。キラリと輝くゴールドのメタルチャーム。高級感のあるデザインです。パッケージデザインも、「彩irodori」メンバーである商品開発グループの社員が担当しています。

「第一印象として、初めて飲む味わいだと思いました。最初にレモングラスのさわやかな香りが来て、ジンジャーとコリアンダーシードで深みを感じつつ、最後にシナモンのやわらかい風味が残る。日本酒の旨味や酸味にハーブの香り、きびオリゴ糖の甘みが加わった、新しいおいしさだと感じます」(宣伝・広告グループ 村川有佐さん)

大関 宣伝・広告グループ 村川●●さん

「BOUQUET OF HERBS」をはじめ、商品PRを担当する村川有佐さん

新商品のターゲットとして想定しているのは、こだわりの商品を買うのが好きで、昼は仕事を頑張り、夜は家でお酒を飲みながらゆっくり過ごしたいという人たち。当初は女性をイメージしていましたが、社内で試飲した際は男性社員からも「おいしい」と評判だったといいます。

アルコール度数は8%。氷を入れてロックで飲んでも、ソーダやジンジャエールなどお好みのドリンクで割っても楽しめます。

「紅茶で割れば、スパイスの効いたエスニック料理との相性も良さそう」(村川さん)、「トニック割りがおすすめ。トニックのほのかな苦味がハーブに合って、より爽やかな味わいになります」(波多野さん)と、「彩irodori」メンバーのなかでもさまざまな飲み方で楽しんでいるそうです。

大関の技術が活かされた、大関らしくないお酒

ハーブを漬け込んだお酒という未知の領域に挑戦し、「どちらかというと、大関らしくない商品を目指した」という波多野さんと村川さん。一方で、酒質設計を担当した原田さんは「いろいろな種類の原酒を自由に組み合わせて、ハーブとの相性を試しながらの商品開発というのは、大関だからこそできたことだと思う」と話します。

今年で創醸310周年を迎える長い歴史と培ってきた酒造りの技術があるからこそ、新しいことにも積極的にチャレンジできたといえそうです。

まもなく、「BOUQUET OF HERBS」商品化に向けたクラウドファンディングが始まります。三者三様、小さな不安と大きな期待を胸に、ユーザーからの反応を楽しみにしているといいます。

「今回の商品には『人の気持ちに寄り添うようなお酒を造りたい』という想いが込められています。飲んで楽しむのはもちろん、部屋のなかにボトルを飾ってご褒美として楽しめるような、いつもの生活にちょっと喜びを与えられるような商品になればうれしいです。チャームのデザインもこだわっているので、お酒を飲み終わった後もどこかに飾ったり付けたりして楽しんでほしいですね」(村川さん)

「今はよりおいしい商品として世に出すために、最後の調整を行っているところです。本物の素材を使うことにこだわった商品なので、そのこだわりが伝わるお酒になっていると思います。私は入社5年目なのですが、『こういうおしゃれな商品をつくりたい』とずっと思っていました。約1年をかけて取り組んできたものがやっと形になるので、とても楽しみにしています」(原田さん)

「一般的に、大関といえば『ワンカップ大関』というイメージが強いと思いますが、今回の商品は、それを良い意味で裏切れるものになっていると思います。どんな反応をいただけるか、期待したいですね」(波多野さん)

8月31日より、クラウドファンディングサービス「READYFOR」にて、「BOUQUET OF HERBS」のプロジェクトがスタートしました。

「クラウドファンディングを通して、どのような方々に『BOUQUET OF HERBS』に興味を持っていただけるのかがわかれば、今後、一般販売に向けて提案しやすくなるのではと考えています」(波多野さん)

「BOUQUET OF HERBS」は、2022年以降の一般販売を予定しています。クラウドファンディングは一般販売に先駆けて、ひと足はやく新商品を味わえるまたとない機会。灘を代表する酒蔵メーカー・大関の新たな挑戦を応援するサポーターのひとりになってみませんか。

(取材・文:芳賀直美/編集:SAKETIMES)

sponsored by 大関株式会社

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