創業以来140年以上にわたり、滋賀県湖南市に蔵を構える竹内酒造。「基本に忠実に、ブレずに良いものを造る」をモットーに、地元で飲み継がれる定番酒「香の泉」と全国向けブランド「唯々(ただただ)」の二本柱で酒造りをしています。
これまで、代表の武石さんや杜氏の中村さん、そして地元有名店の方々に話を伺い、竹内酒造の魅力に迫ってきました。そのなかで見えてきたのは、地域に根ざした日本酒を届けることにこだわる地酒蔵の姿。そしてその思いは、年に1度開催される蔵開きイベントにも表れていました。
今回は、蔵開きで出会った方々の言葉から、竹内酒造が深く愛される理由や地域で果たす役割を紐解きます。
地元のお祭りのようなあたたかさ
竹内酒造の蔵開きが開催されるのは、毎年2月11日。今年で8回目を迎えます。同じ日に市内の北島酒造でも蔵開きが行われ、2つの蔵を歩いて巡るウォークラリーに参加する方も多いのだそう。毎年1,000人を超える来場者でにぎわいます。
蔵に到着すると、敷地内の広場には試飲ブースや飲食店のテントが立ち並び、地元のお祭りのような雰囲気。開始を待ちきれないお客さんの姿がちらほらと見えていました。
試飲ブースは、「香の泉」を中心に「唯醸」「天醸」などの高級酒が無料で飲めるコーナーや、果実酒やスパークリングなどの日本酒初心者や女性が飲みやすいお酒を集めたコーナー、熱燗を味わえる有料試飲コーナーがスタンバイ。また、湖南市のゆるキャラ「こにゃん」をモチーフにした日本酒がこの日だけの限定酒として登場し、人気を集めていました。
小雨まじりの天気をものともせず、どのブースも多数のお客さんで大盛況。お酒を酌み交わしながら語らう参加者の顔からは自然に笑顔がこぼれ、年に1度のお祭りを思い思いに楽しんでいる様子でした。
地域の有名店に愛される竹内酒造
会場でひときわ目を引いたのは、湖南市内や滋賀県内の各所からやってきた有名店のブース。郷土料理や焼き鳥、おでんなど、さまざまな店舗が並びました。ひっきりなしに訪れるお客さんの合間を縫って、お店の方々に話を伺いました。
まずは、近江八幡市から出店した「近江佃煮庵 遠久邑」。琵琶湖で獲れた新鮮な湖魚を加工・販売しています。店先には、郷土料理として有名な「鮒寿し」や名物の「赤こんにゃく」など、滋賀県らしい品々が並んでいました。
「初めての参加ですが、とてもにぎわっていますね。滋賀県は海がないので、佃煮などの発酵食品が発展した地域。だからこそ、刺身と合わせて飲むようなさらっとした辛口タイプよりも、竹内酒造のようなふくらみのある味わいのほうが合うんですよ」
続いては、草津市の地酒専門店「徳地酒店」です。試飲販売をしていた「明尽」は、徳地酒店をはじめとする数店のみで流通している限定商品。兵庫県産の特A山田錦を使用し、香りを抑えつつもフルーティーですっきりとした味わいが特徴です。
「竹内酒造さんは子どものころから知っている身近な存在。こうして蔵開きに呼んでいただけてうれしいです。竹内酒造さんのお酒はどれも人気がありますよ。酒質がどんどん良くなっているので、酒屋としては見逃せません。長くお付き合いしていきたい酒蔵ですね」
「また来たい!」と語る、その理由
ほろ酔いのお客さんにも竹内酒造の魅力を聞いてみましょう。
マイグラスを持参していた地元在住のご夫婦は「晩酌はもっぱら『香の泉』。心地良くて優しい味が好きですね。酒蔵の方々があたたかいので、このイベントを毎年楽しみにしています」と話してくれました。
こちらは市内に住んでいるベネズエラ出身のふたり。今回は会社の同僚といっしょに来たのだそう。
「昨年に続いて2回目の参加です。ベネズエラでは日本酒がまったくポピュラーではなく、日本に来てから飲むようになりました。竹内酒造の大吟醸酒が好きです。とてもジェントルな味わいですね」
上品な着物姿が素敵なふたりの女性。「もともと日本酒が苦手だったのですが、竹内酒造のお酒を飲んでから、日本酒の楽しみ方がわかってきました。リキュールやスパークリングなど、女性も親しみやすいお酒が豊富でうれしいですね」と話してくれました。
こちらのグループは、昨年10月にオープンした竹内酒造の直営店「立ち飲み割烹 竹内酒造」の常連客というみなさん。お店で作ってもらった特製弁当を持参し、イベントを満喫していました。
地元のファンだけでなく、県外からもたくさんのお客さんが訪れ、イベントを楽しんでいる様子でした。みなさんが口を揃えて語るのは、竹内酒造のお酒がもつ口当たりの良い飲みやすさ。来年もまた来たいという声が多数聞かれました。
地酒を介して地域のつながりをつくる
多くのファンでにぎわる竹内酒造の蔵開きを、湖南市の代表はどのように見たのでしょうか。谷畑英吾市長を直撃しました。
「湖南市は旧東海道が通る町。大きな工業団地があるので、全国や海外から人が集まってきますが、街道の通っていた時代から受け継いできた、外の人を受け入れる懐の深さがあると思います。竹内酒造のお酒にもそんなあたたかさが感じられますよね。甘すぎず辛すぎず、するすると飲めるところが好きです。また、湖南市をPRする資源としても大いに期待しています。これからも、老若男女みんなが楽しめる日本酒造りに励んでほしいですね」
湖南市の市議会議員で、イベント当日は地元婦人会のメンバーとともに出店していた赤祖父裕美さんも、竹内酒造の未来に期待するひとりです。
「初開催のころから参加していますが、輪がどんどん広がっているのを感じますね。竹内酒造のお酒はコクがあるのに、身体にすっと入っていきます。そして次の日に残らない。蔵開きはもちろん、地元の人々が地元のものを使って地元をPRすることは、湖南市の未来をつくる上で重要になると思います。竹内酒造さんといっしょに盛り上げていきたいですね」
市民のリーダーたちが太鼓判を押す竹内酒造。地酒の存在は市民の誇り、そして地元愛の象徴になっているようです。「地酒を介して住民がつながり合うことは、防災や助け合いの観点からもメリットがある」という赤祖父さんの言葉が印象的でした。
同じお酒を共有することで生まれる連帯感や親近感。それが人々の心に残り続けることで醸成されていくのが「郷土愛」。竹内酒造の蔵開きはその大きな役割を担う大切な場でした。
竹内酒造の蔵開きで目にしたたくさんの笑顔からは、地酒蔵としての理想の姿が感じられるようでした。
(取材・文/渡部あきこ)
sponsored by 竹内酒造株式会社