「エンタメ化経営」という独自の経営方針を掲げている、岐阜県飛騨市の渡辺酒造店。

主要銘柄は創業当初から続く「蓬莱」ですが、2014年からは、酒米の違いによる味わいの違いを知ってもらうために、「W(ダブリュー)」というシリーズを展開しています。

このシリーズは、渡辺酒造店の特約店でのみ販売されている限定流通の商品です。

今回は、日本酒の専門家2名に、この「W」シリーズをテイスティングしていただきました。酒米の違いによる個性の違いに、日本酒のプロフェッショナルはどんな感想を抱くのでしょうか。

酒米の違いによる個性の違いを楽しんでほしい

「W」シリーズのラインナップは、酒米の品種が異なる14種類。渡辺酒造店の代表取締役社長 渡邉久憲さんの「日本酒の主原料である酒米の違いによる味わいの違いを楽しんでほしい」という思いのもとで誕生しました。

渡辺酒造店の「W」シリーズ

「当初は『いろいろな種類の酒米を使ってみたい』という造り手としての純粋な思いから生まれたシリーズです。

はじめは酒米の品種に合わせて酵母を変えるというアイデアもありましたが、条件をなるべくそろえたほうが酒米ごとの個性が明らかになるのではないかと、香りや味わいのバランスが良い『M310酵母(※)』で統一しています」(渡邉社長)

※茨城県の明利酒類が開発した酵母。大吟醸系の高級酒を中心に、全国で幅広く使用されている。

シリーズ名の「W」は「渡辺酒造店(Watanabe Sake Brewery)の日本酒を世界(World)に発信し、笑い(Warai)を届けたい」という3つの「W」から名付けられました。

また、シリーズを通して、精米歩合が50%よりも小さい純米大吟醸規格ですが、ラベルにはあえて「純米酒」と表示。「W」が追求する本質は、精米歩合の数値では表せないという意志を示しています。

本シリーズをきっかけに初めて採用した酒米もあるそうですが、14種類ものラインナップをそろえることができたのは、「栽培農家の方々にご協力いただいたおかげです」と渡邉社長は語ります。

たとえば、岡山県の高島町で栽培された「高島雄町」は、使用できる酒蔵は全国でも数社しかなく、農家を毎年訪問して交流を深めることで、最高品質のものを手配できているのだとか。

また、兵庫県産の「愛山」は、コロナ禍の影響で他社がキャンセルしたものを買い取ったことをきっかけに、令和3年度から契約栽培量を倍増することができたといいます。

「酒米の品種によっては、地元以外には出荷しないというものもあります。そんな中でも、酒米を提供していただける農家の方々のご協力を得て、ここまでラインナップを増やすことができました。みなさんとのご縁の集大成が『W』シリーズだと思っています」(渡邉社長)

日本酒の専門家によるテイスティング

「W」シリーズのテイスティングに参加していただいたのは、日本酒ジャーナリストの松崎晴雄さんと日本酒インフルエンサーのいとみゆさんです。ふたりとも、渡辺酒造店とは交流があり、飛騨古川にある酒蔵にもたびたび訪れています。

日本酒ジャーナリストの松崎晴雄さん(右)と日本酒インフルエンサーのいとみゆさん(左)

日本酒ジャーナリストの松崎晴雄さん(右)と日本酒インフルエンサーのいとみゆさん(左)

今回は全14種類のラインナップの中から、代表的な7種類を厳選し、酒米ごとに香りや味わいにどんな違いを感じるか、じっくりと吟味してもらいました。

  • W 山田錦 純米無濾過瓶火入原酒
  • W 飛騨ほまれ 純米無濾過瓶火入原酒
  • W 先祖返りひだみのり 純米無濾過瓶火入原酒
  • W 愛山 純米無濾過瓶火入原酒
  • W 高島雄町 純米無濾過瓶火入原酒
  • W 美郷錦 純米無濾過瓶火入原酒
  • W Underground 火入

W 山田錦 純米無濾過瓶火入原酒

W 山田錦 純米無濾過瓶火入原酒

まずは、“酒米の王様”とも呼ばれる「山田錦」から。

「若々しくきれいな印象です。口に含んだ瞬間、梨のような華やかでみずみずしい香りを感じます。後味のキレが良く、全体的にフレッシュ。バランスが良く、完成度の高い味わいで、どんな料理と合わせても飲み続けられそうです」(松崎さん)

「洋梨やリンゴのような香りを感じます。飲み口はフレッシュで、ピチピチとした甘みが口の中に膨らんでいきます。後味にほのかな苦味があり、キレの良い印象です。肉料理や揚げ物など、存在感の強い料理にも合わせられると思います」(いとみゆさん)

◎商品情報

  • 商品名:W 山田錦 純米無濾過瓶火入原酒
  • アルコール度数:16.8度
  • 精米歩合:45%
  • 販売価格(税込):1,650円(720mL)/3,190円(1,800mL)

W 飛騨ほまれ 純米無濾過瓶火入原酒

W 飛騨ほまれ 純米無濾過瓶火入原酒

続いては、岐阜県の飛騨地方のみで栽培されている「飛騨ほまれ」。

「若々しいガス感があり、わずかにナッツのようなニュアンスも感じますね。甘味と酸味が断層のようにはっきりと分かれています。後味のキレが良く、余韻が短いのも特徴。甘味と酸味が立っているので、飛騨牛のステーキなど、味の濃い肉料理と合うと思います」(松崎さん)

「『山田錦』と比べると香りは穏やかで、炊きたてのお米のような印象を受けました。ナッツを燻製したようなスモーキーな香りもほのかに感じられます。飲んでみると、フレッシュできれいな甘味と旨味があります。少し温めてみると、個性の際立った味わいが調和して、また違った印象になりそうです」(いとみゆさん)

◎商品情報

  • 商品名:W 飛騨ほまれ 純米無濾過瓶火入原酒
  • アルコール度数:16.5度
  • 精米歩合:45%
  • 販売価格(税込):1,606円(720mL)/3,080円(1,800mL)

W 先祖返りひだみのり 純米無濾過瓶火入原酒

W 先祖返り飛騨みのり 純米無濾過瓶火入原酒

「ひだみのり」は、2015年に栽培が途絶えてしまいましたが、2020年に少量の生産に成功し、現在は渡辺酒造店のみが使用している品種です。

「グレープフルーツやメロンのような清涼感のある、ワインのソーヴィニヨン・ブランを思わせる香りですね。繊細な味わいですが、きらきらと跳ねるような甘味がチャーミング。軽快な酸味とほど良い苦味も感じます。料理に合わせるなら、鮎の塩焼きなど、素材の味を楽しめるものが良さそうですね」(松崎さん)

「最初の印象は、ミルキーな香り。甘味と酸味がぎゅっと詰まったような印象で、少し時間が経つと、メロンのような香りに変化していきました。口当たりがなめらかでやさしく、甘味は華奢でライト。シンプルな味付の料理と合わせて、ずっと飲んでいられそうな一本です」(いとみゆさん)

◎商品情報

  • 商品名:W 先祖返りひだみのり 純米無濾過瓶火入原酒
  • アルコール度数:16.5度
  • 精米歩合:50%
  • 販売価格(税込):1,650円(720mL)/3,190円(1,800mL)

W 愛山 純米無濾過瓶火入原酒

W 愛山 純米無濾過瓶火入原酒

続いては、日本酒ファンの間で人気の高い「愛山」。

「熟した梨を思わせる香りです。甘味もありますが、軽快な酸味が印象的です。『飛騨ほまれ』は甘味と酸味の境目がはっきりとしていたのに対し、『愛山』は甘味が中心に据わっていて、酸味がその引き立て役に回っているイメージ。果物が入ったサラダや炒め物などと相性が良さそうですね」(松崎さん)

「香りは穏やかですが、イチゴのような甘味と酸味を感じます。口の中に広がる甘味も穏やかで、後味には、ほのかな渋味や苦味も感じられます」(いとみゆさん)

◎商品情報

  • 商品名:W 愛山 純米無濾過瓶火入原酒
  • アルコール度数:16.4度
  • 精米歩合:50%
  • 販売価格(税込):1,650円(720mL)/3,520円(1,800mL)

W 高島雄町 純米無濾過瓶火入原酒

W 高島雄町 純米無濾過瓶火入原酒

岡山県高島町の地名を冠した「高島雄町」。その味わいを充分に引き出すために、生酛造りで仕込んだ一本です。

「香りも味わいも、密度が濃いですね。青リンゴのような香りとともに、ミネラル感があります。酸味の存在感が強いですが、この酸味が甘味をしっかりと押し上げてくれています。ジビエなど、大地を感じる食材と相性が良さそうですね」(松崎さん)

「香りはフレッシュでみずみずしさがあり、熟したリンゴやマスカットのような芳醇さを感じます。飲み口は軽快で、酸味と甘味がありますが、後味には苦味があり、キレの良い印象。酸味のバランスが良いため、お寿司といっしょに食べてみたいと思いました」(いとみゆさん)

◎商品情報

  • 商品名:W 高島雄町 純米無濾過瓶火入原酒
  • アルコール度数:16.8度
  • 精米歩合:50%
  • 販売価格(税込):1,925円(720mL)/3,740円(1,800mL)

W 美郷錦 純米無濾過瓶火入原酒

W 美郷錦 純米無濾過瓶火入原酒

「美郷錦」は「山田錦」と「美山錦」を掛け合わせた、秋田県オリジナルの品種です。

「香りは穏やかで、きれいな甘味とやわらかさがあります。果肉の赤いメロンやバナナのような香りに加え、オレンジのような香りも少し感じられますね。ふくよかで角の取れた丸みがあり、旨味を楽しめる一本です。料理と合わせるなら、どちらかと言うと、淡白なものに合うと思います。蒸した魚や蕪、ふろふき大根と合わせたいです」(松崎さん)

「冷えた状態では、香りの特徴が控えめだったので、常温に戻してみました。すると、炊く前のお米や酒粕のような、穏やかな旨味のある香りを感じました。飲み口はなめらかで、甘味と旨味を感じます。飲んだ後に豊かな香りが残るのも印象的でした」(いとみゆさん)

◎商品情報

  • 商品名:W 美郷錦 純米無濾過瓶火入原酒
  • アルコール度数:16.5度
  • 精米歩合:50%
  • 販売価格(税込):1,650円(720mL)/3,190円(1,800mL)

W Underground 火入

W Underground 火入

最後は、特A地区で栽培された「山田錦」をさらに選別し、精米歩合18%まで磨き上げた「W」シリーズの最高峰。岐阜県の新酒鑑評会にて、2021年から3年連続で最高賞の主席知事賞に輝いています。

「香りは繊細で、マスクメロンなどの果物を連想させます。口に含むと、トロっとした甘味があり、ふくよかで厚みのある味わいです。精米歩合18%というと、もっと繊細な味わいになるのではないかと想像していましたが、ゆったりとした深みのある、“きれいな蜜”という印象です」(松崎さん)

「香りは上品で、メロンのような香りの中に麹の印象も感じました。シルキーな口当たりで、飲んでみると、キャンディーや綿あめのような甘味を感じます。繊細な味わいかと思いきや、凝縮された甘味が存在感のある味わいです。食事の後半に単体で楽しみたいと思いました」(いとみゆさん)

◎商品情報

  • 商品名:W Underground 火入
  • アルコール度数:16.0度
  • 精米歩合:18%
  • 販売価格(税込):11,800円(720mL)

日本酒ジャーナリストの松崎晴雄さん

「W」シリーズのそれぞれの個性を確かめるように、1本ずつじっくりと評価していた松崎さんといとみゆさん。すべてのテイスティングが終わると、「酒米によってこれほど違いが出るとは」と感心した様子で、お互いの感想を語り合いました。

「同じ酵母を使っているのに、酒質がこれほど変わるのは新しい発見でした。個人的な好みでいえば、『先祖返りひだみのり』のチャーミングな甘味が印象に残りました。対して『飛騨ほまれ』は力強い印象で、飛騨の日本酒らしい個性が出ていたと思います」(松崎さん)

日本酒インフルエンサーのいとみゆさん

「改めてテイスティングをしてみて、それぞれの個性を感じることができて楽しかったです。私は、以前から推していた『高島雄町』が、やっぱり一番好きですね。『この酒米ならこんな香りや味わいだろう』という固定概念を持たずに飲んでみて、いろいろな発見を楽しんでほしいです」(いとみゆさん)

渡辺酒造店の「W」シリーズ

「W」シリーズは、今回テイスティングした「山田錦」「飛騨ほまれ」「先祖返りひだみのり」「愛山」「高島雄町」「美郷錦」の他にも、「亀の尾」「赤磐雄町」「穀良都」「金紋錦」「秋田酒こまち」「出羽燦々」「八反錦」「強力」を使用しています。

それぞれの酒米の個性を引き出しながら、シリーズとしての完成度が求められる「W」は、造り手の技術が試される日本酒です。伝統的な製法を大事にしながらも新しい挑戦に取り組んできた渡辺酒造店だからこそ実現できたシリーズだと言えるかもしれません。

「W」シリーズは全14種類の個性豊かなラインナップをそろえています。気になるものから飲み比べて、自分の好みを見つけてみてください。

(取材・文:芳賀直美/編集:SAKETIMES)

協力していただいた日本酒の専門家

◎松崎晴雄さん

株式会社SAKEマーケティングハウス代表取締役。日本酒輸出協会会長。酒類ジャーナリスト・酒類コンサルタントとして、執筆や講演などの活動を行うほか、国内外の日本酒イベントやプロモーションに従事。著書は『日本酒ガイドブック』(柴田書店)など。

◎いとみゆさん

日本酒インフルエンサー、唎酒師、日本酒学講師。“日本酒の笑顔担当”として、SNSを中心に日本酒の魅力を発信している。青森県・佐賀県の日本酒アンバサダーや、渡辺酒造店のアンバサダーも経験。東京都浜松町の酒販店「浅野日本酒店」では、月1回スタッフとしても活躍中。

sponsored by 有限会社渡辺酒造店

編集部のおすすめ記事