みなさんは「菊正宗」というお酒をご存じですか?
お酒を飲んだことがある人なら一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
では、どんな印象をお持ちでしょうか?
・流通量の多い大手メーカー
・コンビニ、スーパーでよく見かけるパック酒
・昔ながらの辛口酒
様々なイメージがあると思いますが、
「よく見るけど、どんなお酒なのかよく知らない」
あるいは、
人によっては「大手=小さな蔵を圧する悪者」なんて勝手なイメージを持っている場合もあるかもしれません。
確かに菊正宗酒造の規模は大きく、全国各地に流通している大手製造メーカーです。
でも、はたして本当にそのイメージが「菊正宗」のすべてなのでしょうか?
われわれSAKETIMES編集部では、特別連載をもって「菊正宗酒造」の全容に迫っていきます。
業界大手の蔵元の”真の姿”とは、いったいどのようなものなのでしょうか?
1)菊正宗ってどんな蔵?
菊正宗酒造は、日本を代表する酒処・兵庫県神戸市、いわゆる”灘”の大手酒蔵です。
創業は1659年、なんと350年以上も昔の超老舗蔵元なんです!
長い間業界を引っ張ってきた、まさに日本酒業界の雄。それが菊正宗酒造です。
2)造りは「こだわり」そのもの!
菊正宗酒造では、誕生以来一貫して”本流辛口”を信条に酒造りを続けてきました。
本流辛口の味わいとは、「飲み飽きせず、料理を引き立てる日本酒こそ本流である」という意味。料理をおいしく味わうための食中に最適な酒として、辛口にこだわった酒造りを続けています。
さらに、菊正宗のこだわりはそれだけではありません。
国内で造られる日本酒の僅か5%しかない「生酛(きもと)造り」という古来伝承の酒造りを守り続けています。
生酛造りは、アルコールを造る酵母を育てる「酛」(酒母)を、水と米と米麹から、昔ながらの手作業で4週間かけて造り上げる、酒造りの原点とも言える製法です。
しかし、この製法は通常の倍以上の時間と手間がかかり、安定性も低いためチャレンジする蔵元はほどんどいないのが現状。
それでも菊正宗酒造では”本流辛口”をもっとも表現できるこの製法にこだわり、なんと2009年秋からはこの生酛づくりを冬季だけの限定酒から、通年流通が可能な上撰本醸造酒へ広げることに踏み切ったのです。これは全国でも類を見ない大きなチャレンジなんですよ!
3)伝統を守るだけじゃない、最先端の取り組みにも注目!
生酛造りへのこだわりを持ち続ける一方、日本酒ファンを若い世代にも広げるために、様々な最先端の企業努力をしていることもあまり知られていないのではないでしょうか?
例えば、新酵母「キクマサHA14酵母」の開発。
良い香りを出すにはコストをかけて米を磨く、これが常識でした。しかし菊正宗はまったく逆の発想で開発にチャレンジ。低精米でも華やかでフルーティーな吟醸系の香りを引き出すことができる酵母を開発したのです。
華やかな吟醸系の香りは人気が高いため、各社ともこぞって精米率を上げていましたが、どうしてもコストがかかるため高価なお酒になってしまいます。菊正宗が目指したのは手に取りやすい価格で、華やかな香りがするお酒。顧客目線でモノづくりをする姿勢が伺えます。
4)地元にも愛される酒蔵
大手メーカーといえど、地元との関わり合いも大切にしています。毎年、新酒ができあがることには、日頃の感謝をこめて、香り華やかなしぼりたて新酒を楽しめる「蔵開き」を行い嘉宝蔵の構内を一般開放して開催しています。丹波杜氏伝承の技「生酛造り(きもとづくり)」で醸造した、新酒の無料試飲のほか、超特撰「嘉宝蔵 雅(みやび)」などの高級酒の試飲もできる有料試飲コーナーはもちろん、酒蔵見学会・樽酒貯蔵場の見学会・落語会・アコースティックカバーライブ・酒樽の製作・コモ巻き作業の実演・丹波杜氏による酒造り唄の披露などなど、地元の方との交流にはかなり力をいれています。
丹波杜氏による酒造り唄の披露
こもを巻く作業の実演
”酒造りへの情熱”に、蔵の大小は関係ない!
嘉宝蔵杜氏の渋谷さん
今回、菊正宗の取材を通して感じたことは、大手でも中小でも「酒造りへの情熱には変わりはない」ということです。
もちろん蔵によって市場へのアプローチの仕方は変わります。小さな蔵よりも大きな蔵のほうがより多くのお酒を造り、全国に流通させられることは間違いありません。そんな中、「地酒ブーム」といえるような、流通量の少ない限定酒などが高い人気を誇ることもまた事実です。
しかし一方、「菊正宗酒造」のような大手蔵元が、より多くの、様々なライフスタイルの方に広く日本酒の魅力を伝えるため日夜研究開発を行い、試行錯誤を繰り返しているのもまた事実なんです。例えば菊正宗では「糖質ゼロ」の純米酒を開発しました。これは、体調などの事情から「糖質は制限しないとダメだ、けど日本酒は飲み続けたい!」という人へのソリューションになっているんです。米から作られている日本酒の糖質をゼロにするということは並大抵の技術では実現しません。商品化にいたるまでには不断の努力と長い年月がかかっています。なぜここまでする必要があるのか?
「それを求めているお客様がいるから」です。
こうして生まれる新しい開発技術や商品は、全て「日本酒の魅力を知ってもらいたいという情熱」の賜物だと思います。
SAKETIMESは全ての日本酒を応援するメディアです。”酒造りの情熱”というものに、蔵の大小は関係なく、その魅力に貴賎はないと考えているからです。
もちろん小規模蔵の特集も積極的に行っていきますが、この連載では大手である菊正宗だからこそできる努力、生まれる魅力をしっかりと伝えていきたいと思います。
来月以降も「菊正宗酒造」とタッグを組み、その全容に迫ってまいります。
”大手=機械的で無機質”といった誤ったイメージを払拭すべく、「菊正宗」にディープに迫る特別連載、どうぞお楽しみに!
(取材・文/SAKETIMES編集部)
sponsored by 菊正宗酒造株式会社
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