世界3大広告・クリエイティブ賞といわれる「カンヌライオンズ(Cannes Lions International Festival of Creativity)」および「ワンショウ(The One Show)」の両賞をはじめ、世界各国20以上ものデザイン賞を受賞した、こちらの商品。これが何だかわかりますか?
実はこちら、「錦鯉」という名の日本酒なんです。造ったのは新潟の「今代司酒造(いまよつかさしゅぞう)」。今年で創業250周年を迎える、由緒ある酒蔵です。
他の商品と並べてみても、ひときわ目を引く「錦鯉」。ただ美しいというだけでなく、"(酒造りをする)地域そのものがデザインされている"ところに、今代司酒造のオリジナリティがあるのです。
地域×デザインで日本酒の新機軸を打ち出す「今代司酒造」。その魅力をご紹介します。
新潟駅から徒歩15分!新潟清酒の"玄関口"
今年で250周年を迎える今代司酒造。創業当時の新潟は北前船が頻繁に寄港し、"東洋のヴェニス"と呼ばれるほどに栄えていたそう。江戸や京都と並ぶ日本三大花街のひとつでした。
なかでも、今代司酒造のある沼垂(ぬったり)地区は、すぐれた水質の伏流水をもつ阿賀野川と物資運搬の要路であった栗ノ木川、2つの河川の影響で発酵産業が活発になり、「発酵食の町」と呼ばれるまでに成長します。
創業100年以上の歴史を誇る味噌蔵「峰村醸造」
味噌蔵や納豆蔵が同エリアに集まり、酒蔵もひと昔前までは約10軒あったほど、にぎわっていたのだそう。
今代司酒造は、新潟駅からおよそ徒歩15分。もともと栗ノ木川だった場所が埋め立てられてできたバイパス沿いに蔵を構えています。 好立地を活かし、酒蔵見学などの"見て楽しむ"取り組みにも心を砕いているのだとか。新潟県内にある90酒蔵の"玄関口"として門戸を広げ、日本酒ファンの入り口になるような役割を果たしています。
今代司酒造の核となる「むすぶ」という思想
今代司酒造が大切にしているのが、「むすぶ」という考え方です。これは、現在社長を務める田中洋介さんが提唱し始めたもの。
田中社長は元々、広告業界で働いていました。その後、縁あって今代司酒造の代表に就任します。日本酒業界とは異なる畑にいたからこそ感じた"今代司酒造の価値"をひとことに込めたものが、この「むすぶ」なんだと話してくれました。
今代司酒造の田中洋介社長
「僕が今代司酒造に入った当初、『今代司酒造らしさって何だろう』ということをよく考えていたんです。あらゆる要素を洗い出していくと、『"今と古"、 "人と人"、そして"地方と都市"をむすんでいるのが今代司だ』と気付き、これを提唱するようになりました」
多様な文化が混じり合い、変化し続けてきた港町にある酒蔵らしく、古き良き伝統は守りながらも常に今の時代にあった提案をすることで"今と古"をむすび、酌み交わす酒によって"人と人"とをむすび、米や水・気候などの地域資源をギュッと詰め込んだ、日本酒というプロダクトの魅力を多くの人に伝えることで"地方と都市"をむすんできた今代司酒造。
アルコール添加の技術をベースにした"淡麗辛口"が主流の新潟において、県内のどこよりも先駆けて「全量純米仕込み」へと切り替えたのも、地域農業への貢献を考えた結果とのこと。
この「むすぶ」という思想を核に、250年間蓄積してきた今代司酒造らしさを表現しています。
今代司の"デザイン"に注目!
企業理念の核である「むすぶ」という思想を、商品や酒蔵の"デザイン"で体現しているのが今代司の特徴のひとつでしょう。
田中社長が「むすぶ」という思想を提唱し始めたころから、デザインに力を入れるようになった今代司酒造。その理由として、田中社長は地域産品である"日本酒の特性"を挙げます。
「日本酒って米と水と気候、そして人の集合体で成り立っているじゃないですか。要するに、地域が全部詰まっているんですよね。だから、日本酒を語るときは自然と地域の説明になる。これをパッと理解してもらえるよう、デザインに力を入れるべきなんだと思ったんです」
そうした思想から、現会長やデザイナーとともにプロデュースしたのが、先にご紹介した「錦鯉」。みんなで日本酒を飲み終えた後、「瓶を横に倒した様が魚のように見えた」ことに着想を得て、新潟の特産品である「錦鯉」の日本酒を造ろうと思い至ったといいます。
またこのほかにも、日本らしさを表現するために筆で描いたようなテクスチャーの紅白模様や、"金魚が泳げるほど薄い酒"を揶揄した「金魚酒」へのアンチテーゼなど、さまざまな要素を盛り込んでいきました。構想開始から2年、ようやく形になった「錦鯉」は世界的なコンペティションで高い評価を受けるとともに、新潟という地域を知ってもらう機会創出にもなっています。
今代司酒造が見つめる、日本酒と地域のこれから
田中社長に今後の展望をうかがったところ、やはり"地方"と"デザイン"という2つのキーワードが挙がってきました。
「日本酒を通して、地方を盛り上げていきたいですね。特に、日本の美しい田園風景を守ることに貢献することがひとつの使命だと考えています。そのためにも、地域資源を活かしながら、そのことをきっちり伝えることが大切でしょう。 地元県産の米を使うことで農家さんにお金が入るという直接的な恩恵はもちろん重要。それだけではなく、地域資源がギュッと濃縮されたコンセプトの日本酒を生み出し、それをデザインにも反映することで、国内だけでなく海外の方にも新潟という土地の魅力を知ってもらえると思うんです。これからはもっと首都圏や海外に展開していきたいという気持ちがありますね」
それ以外にも、沼垂地区にある「沼垂ビール」や味噌蔵との連携を強め、沼垂全体を盛り上げていきたいと語ってくれた田中社長。
どんなエピソードもすべて"地域"に結びつく、その芯の深さに今代司酒造らしさを見た気がしました。
デザインという"非言語"で、地域の魅力を伝えていく
日本酒がグローバルなマーケットに出ていく上で、今まで重視されてきたのは米・水などの素材や、酒造りの技術・手法、酒蔵のストーリー、食とのペアリングなど、"言語化できる情報"がほとんどだったかもしれません。一方で、"非言語的な情報"である意匠やデザインは、あまり重視されてきませんでした。
しかし今代司酒造は、そのデザインこそ、雄弁に地域の魅力を語るものだと言います。
日本酒を"地域資源の結晶"と捉え、クリエイティブで表現し、商品から酒蔵に至るまで徹底したブランドづくりを行う今代司酒造。このネクストブレイク筆頭の注目酒蔵から、目が離せません。
(取材・文/佐々木ののか)
sponsored by 今代司酒造株式会社
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