2016年9月に発売された「菊正宗 しぼりたて ギンパック」。従来のパック酒とは一線を画した、その芳醇な味わいと華やかな余韻は、多くの日本酒愛好家に驚きをもたらしています。

「吟醸酒にも匹敵する味わい」という声を裏づけるかのように、「ワイングラスでおいしい日本酒アワード 2017」のメイン部門において、最高金賞を受賞する快挙を成し遂げました。並みいる受賞酒は、銘酒蔵の純米大吟醸酒や純米吟醸酒がほとんど。パック詰めの普通酒としては、初めての受賞です。

特定名称酒への注目度が高まり、パック酒離れが叫ばれている現状のなかで、まさに"パック酒革命"とも呼ぶべき快進撃を続ける「ギンパック」。

発売から現在に至るまで、市場ではどのような形で受け入れられているのでしょうか。また、その商品に込めた思いについて、大手スーパーやコンビニ、量販店を管轄する、菊正宗酒造広域量販部部長の庄司明弘さんにお話をうかがいました。

最高金賞の受賞によって覆した、パック酒への先入観

2017年5月に開催された「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2017」メイン部門において、「菊正宗 しぼりたて ギンパック」が最高金賞を受賞──商品の企画段階から関わっていた庄司さんにとって、その感慨はひとしおだったと言います。

「"日本酒ブーム"と言われ、多くの方が日本酒に興味を持たれているなかで、パック酒が陳列されているエリアには、まったく光が当てられていませんでした。『私が飲みたいお酒は、ここにはないよね』みたいな。

しかし今回の受賞によって、店頭での販売数も大きくアップし、『ちょっと飲んでみようかな』と手に取るお客さんがたくさん増えました。パック酒に対するネガティブな先入観を覆すことができたのではないか、と思っています」

ギンパックが発売されたのは、2016年9月。当時、各販売店へどうやって展開していくかを提案するときに、庄司さんにはある懸念があったのだとか。

「味わいには絶対の自信がありました。しかし、現状のお酒売り場では新たな価値を提案するギンパックと同じ商品群がありませんでした。確立した商品群での提案ができず、バイヤーも『これ、どの商品群で売ればいいの?』と、頭を抱えていたんです」

けれどもそれは、これまでにない新たな価値を創造しているからこそ。一口飲んだバイヤーからその場で「採用!」の声をもらったこともあったと言います。

「私たちも、どうやって新たな価値を売り場で提案すればいいのか……、と迷っていましたが、やはり決め手となるのは、この味でしょう。『ギンパックの良さは、一度飲んでもらえれば必ずわかってもらえる』と、確信しました」

パック酒らしからぬモダンなパッケージデザインは、陳列棚に整然と並べられたパック酒のなかでもひときわ目立ちますが、より多くの人に手に取ってもらうため、より多くの人に一度飲んでいただくため、『エンド陳列(棚の端にボリューム感を持たせた大量陳列すること)で展開しましょう』『試飲も併せてやりましょう』と、営業マンも懸命に提案してきたのだとか。

こうして、上々のスタートを切ったギンパック。半期の売上目標を当初の予定から3カ月も前倒しで達成しました。販売データを見ても、従来のパック酒の中心購買層よりも若い、30~50代の顧客層を開拓し、多くのリピーターを獲得しています。

「既存のカテゴリーにとどまらない商品なので、販売データを調べてみると"今までパック酒を購入していなかったお客さんが手に取っている"ことも多いですね。バイヤーの方々にも、『新しいお客さんを呼び込んでいる』と、評価いただいています」

日本酒が日常のなかに、さりげなくあること

歴史と伝統のある菊正宗が、どうして新しいパック酒の開発に取り組んだのか。そこには、"日本酒を日常のものに"という強い思いがありました。

「数千円、数万円する大吟醸酒はもちろん美味しいですが、それはあくまでも『ハレ』のお酒で、日常との距離は遠いもの。

たとえば、コーヒーもそうですよね。最近はサードウェーブコーヒーを中心に『シングルオリジン(単一銘柄)』や『テロワール(産地がもたらす、味わいや香りの特徴)』など、"スペシャルティコーヒー"と呼ばれる高品質なものが人気を集めていますが、やっぱりそれはツウの飲み方。多くの人は、カフェラテやキャラメルマキアート、コーヒー牛乳、あるいは缶コーヒーなど、さまざまな形でコーヒーを楽しんでいます。

ワインも、昔は高級なものでなかなか飲む機会がありませんでした。しかし、リーズナブルなデイリーワインが浸透したおかげで、日常的にワインを楽しむ人が増えたんですよね」

日本酒が日常のなかに、さりげなくあること──それが菊正宗の思い描くビジョン。

「その入口になってくれるのが、ギンパックだと思います。日本酒ファンのなかには『小さな酒蔵を応援したい』と思う人が少なくありません。けれども、蔵の大小でお酒を判断するのではなく、菊正宗のお酒もぜひ一度飲んでみてほしいですね。

私たちには、多くの日本酒を安定的に、かつハイクオリティで醸すことのできる技術があります。だからこそ、日本酒好きの裾野を広げ、日本酒のさらなる発展に貢献していくことが、私たちの果たすべき役割だと思うのです」

ギンパックを新たな日常酒のカタチに

ギンパックが「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2017」メイン部門最高金賞を受賞したことは、今年6月に新社長に就任したばかりの嘉納逸人 改め 嘉納治郎右衞門 代表取締役社長にとっても、大きな励みになるものだったそうです。

「普通酒であるにもかかわらず、先入観なくここまでの評価をいただけたことには、驚きと喜びの気持ちでいっぱいでした。低精白だからこそ、米の旨味をたっぷりと残し、なおかつ独自酵母によって、大吟醸のような香気と新酒の香味をまとっていること。まさにギンパックでしか味わえないものだからこそ、『日本酒をワイングラスで楽しむ』という新たな食提案に、スッと馴染むものだったのかもしれません。これからもギンパックを新たな柱として、大切に育てていきたいですね」と嘉納社長。

お客様のことを思うからこそ、日常的に楽しめるリーズナブルな価格で、最大限に美味しいお酒を──。それが実現できたのは、研究・醸造における高い技術力と、常にお客様のことを考え続ける姿勢があったからでしょう。あなたもぜひ、ギンパックでしか体験できない「新しい日常酒」を味わってみませんか。

(取材・文/大矢幸世)

sponsored by 菊正宗酒造株式会社

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