「獺祭」を醸す山口県岩国市の旭酒造が主催する「東京 獺祭の会 2016」に行ってきました。
この会は獺祭ファンへの感謝の気持ちを込めて、旭酒造が10年以上前から東京で冬場に開催しているものです。
今回初めて着席式にしたので、参加者はゆったりとした気分ですべてのスペックの獺祭を堪能していました。
開会の挨拶は桜井博志社長でした。次のような話をされていました。
最近、獺祭はいろいろなところでニュースに取り上げられていますが、昨年の一番のニュースは4月30日に本蔵が完成したことです。高さ60メートル、地上12階の中でお酒を造っています。新しいビルということもあって、
「獺祭はお酒を全部機械で造っている」
「テクノロジーだけで酒を造っている蔵とは取引したくない」
といった誤解も生まれます。
また、機械で造っていると勘違いした見学客から、「獺祭蔵では米を手で直接触っていた。非衛生的ではないか」との指摘を受けることもあります。
五感をフルに活用しないと美味しい酒はできません。デジタル機器のデータも活用しながら、200人のスタッフが麹の感触、匂い、色などの五感をすべて動員して、獺祭を造っていることを説明して納得してもらいました。今夜はスタッフたちがていねいに造った美酒を食事と共に楽しんでください。
そして、乾杯。
洋食のコースをいただきながら、提供された獺祭のお酒は以下の通りでした。
括弧内は蔵元さんのコメントです。
レギュラーシリーズ
・磨きその先へ(常識的な純米大吟醸で踏み出せない酒質を目指しました。美しい香りと両立する味の複雑性・重層性と長い余韻を持っています)
・純米大吟醸 磨き二割三分(山田錦を使った純米大吟醸しか造らない獺祭の中の獺祭。「THE獺祭」)
・純米大吟醸 磨き三割九分(精米歩合39%の純米大吟醸。香り、味わいのボリューム抜群)
・純米大吟醸50(精米歩合50%の純米大吟醸。品質に妥協なし)
遠心分離シリーズ
・磨き二割三分 遠心分離
(このお酒は、遠心分離の技術を使い圧力をかけずに搾ったものに、通常のお酒の搾り方である圧力をかけて搾ったものをブレンドしております。遠心分離の美点である「いやなところが何もない酒質」に、通常の搾り方由来のパンチのあるごく味を持つ酒質を加えて、洗練された華やかさと繊細さに厚みと複雑さを表したものです)
・磨き三割九分 遠心分離
(無加圧状態で、もろみから酒を分離するため、純米大吟醸もろみの本来持つ香りやふくらみ等の美点が崩れることなく表現されています)
発泡にごり・おりがらみシリーズ
・純米大吟醸磨き二割三分 発泡にごり酒 聖夜限定(本当に贅沢な発泡にごり酒。キメ細やかな泡立ちが心地よい)
・純米大吟醸 遠心分離 おりがらみ 元旦届け(優美な上立ち香、蜂蜜のようなきれいな甘みとそのバランス、少し濃厚な味と香り)
・発泡にごり酒 磨き三割九分(50のにごり酒の上に味の緻密さ・繊細さを重ねた味わい)
・発泡にごり50(にごり酒だからこその「米の甘み」と「爽やかな発泡性」)
季節限定品
・寒造早槽48(10月から3月にかけて発売している期間限定の“しぼりたて”、ちょっと濃い目の味わいです)
・温め酒50(お燗に合わせて、まるみとふくらみを味わいの中心にしました。40度位がおすすめです)
なんと12種類!
さすがに「磨きその先へ」など一部は1杯のみの限定でしたが、それ以外は呑み放題。
同じ磨き二割三分でも、通常のヤブタ搾りと遠心分離搾りの2種類のお酒を飲み比べると、その味の違いにびっくり。
発泡にごりはシャンパンのようで、洋食とのマリアージュは最高でした。
また、獺祭のお酒はほとんどが一回火入れですが、この時期のみ提供される寒造早槽の生酒はいつもの獺祭よりは艶っぽくてどっしりとした印象でした。
お燗用の温め酒も肉料理との相性は抜群でした。
めったにできない貴重な体験を十分に堪能できました。
我々が獺祭のお酒を楽しんでいる間にも、桜井社長と息子さんの桜井一宏副社長はすべてのテーブルを回って、獺祭ファンのみなさんの声に耳を傾けていました。
知名度の高い獺祭には、静かなブームが続いている日本酒の、愛好家のすそ野を広げる役割も果たしてほしいと思います。
一方で海外への輸出にもますます拍車をかけて、日本酒業界のフロントランナーとして走り続けてくださることを願ってやみません。
(文/空太郎)
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