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全国から広島に酒造関係者が大集合!854点の出品酒をきき酒する「製造技術研究会」

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5/28(土)に広島県東広島市にて開催された、「平成27酒造年度製造技術研究会」の様子をレポートします。

全国新酒鑑評会の全出品酒を試飲できるこの催しに、全国から酒造関係者が集まりました。「どうしてこれが金賞をとるに至ったか」「なぜ賞をとれなかったのか」「この地域の造り方はこうではないか」「○○杜氏の酒はこういう傾向にあるのか」など、各出品酒をきき酒できるこの会のお酒の味わい方は、普通のお酒の楽しみ方とは大きく異なります。「うーん、このお酒は燗にして、なめろうを合わせると旨いだろうねぇ!」なんて考えてはいけません。

今年は全国から854のお酒が出そろいました。各蔵が1本(=1仕込)の日本酒を持ち寄り、予審・決審にわけてきき酒評価をします。

毎年何本も大吟醸を仕込んで厳選した1本で金賞をとる蔵もある一方で、「そもそも1本造るので手一杯」「鑑評会には出品しない」という蔵もあるようです。山田錦の大吟醸で出品する蔵が多いようですが、他の酒造好適米を使った純米大吟醸で受賞する蔵もあります。使う酵母は地域や蔵ごとに違いますから、お酒の香りもさまざま。一般的には大吟醸の方が金賞をとりやすいとされています。

福島県の金賞26点は今年最多!それに次ぐ人気は秋田と山形

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研究会の会場は東広島運動公園・アクアパーク体育館です。西条駅や東広島駅から路線バスとシャトルバスも出ますが、タクシーなどで来ている人もいます。会場には朝早くから行列ができています。開場は10時からですが、中には6時前から並ぶ方もいるのだとか。

私は会場に朝8時に到着しました。外で並んでいる間に他の蔵の方々や試験場の先生に挨拶したり、お互いに昨年の造りを振り返ったり、後ろに並んだ人の酒造りの話に聞き耳を立てたりします。こういう情報も何かとに役立つものなんです。

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会場には酒が並べられたレーンがあり、そこに並んで自分の番が来たらきき酒をします。

国税局ごと、あるいは県ごとでレーンが形成されていて、出品酒がきき猪口に入っています。そこからスポイトで3ml程度吸い取り、配布される自分の試飲カップに移してきき酒をします。香味を確認し、吐器に吐き、評価をメモし、次の酒に移ります。

「3mlなんて少ないな」と思われるでしょうが、これくらいでわかるのがきき酒のプロなのです。それでも1日に数百点きき酒するので舌は疲れてきます。意外に体力勝負なんですよ!

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これだけ人が並びます。みんな日本酒関係者なんだと思うと、冬場一人さみしく麹をいじっている孤独感も吹き飛びます。

金賞・入賞蔵が多い列は並んでもしばらくきき酒ができません。近年の人気は福島県で、今年の金賞数26点は最多を誇ります。それに次ぐ人気が秋田県・山形県の出羽国列です。山形は金賞18点、秋田は14点。純米大吟醸での出品も多く、注目が高まっています。銘醸地である兵庫県や新潟県、宮城県も金賞蔵が軒を連ねています。

酒造関係者はきき酒から造りの問題点を見つける!

日本酒のきき酒は基本的に減点法をとります。きき酒をし、際立つ特徴香と付随する香味をピックアップします。その香味がクセ香(良くない香り)であれば、そのクセが何であるか指摘し、5点法(1が最良で5が不良)で評価します。

クセや雑味には必ず理由があります。たとえば、汚れた手で麹をかき回していれば雑菌が繁殖して煙のような香りが出ます。塩素系漂白剤を使って洗った櫂棒を使うとその匂いが酒に付着し、酒にはカビたような臭いが出ます。"漂白剤"なのにカビた臭いが出るのは不思議ですよね。

このように「良くない酒ができている=作業に問題がある」というアプローチをします。つまり「自分の蔵の造り方のどこにミスがあるのか」「あの蔵はどうして○○臭のない酒を造れるんだろう」という技術をきき酒を通して研究する場なのです。

したがって、コクのある酒や生酒の香りが強いものは、鑑評会では弾かれやすいです。そういうものも美味しいのですが、評価がされる場がなかったので、近年では「燗酒コンテスト」「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」など、個性ある日本酒にも門戸が開かれた賞もありますね。

また、香味を表現するときには一般の方には聞きなれない用語、たとえば「カプロン酸エチル」「TCA」「イソバレルアルデヒド」などの化学物質の名前を使います。これは技術者間で「なんかバナナみたいな香りするね」と言っていては科学的ではないからです。

しかし、普段お酒を楽しむ時に「上立ちの酢酸エチルとイソアミルアルコールに混じって、分別閾値を僅かに越えたジアセチルと若干の4VGが、STD.と比べると80℃ウォーターバス3sec.区では有意に強調されていて、焼いた Pleurogrammus azonus に合うわー」と言ってしまっては興ざめですね。混乱のもとになりますから使わない方が無難でしょう。

利き酒が終わったらメモを見返して、いったいどうして金賞が取れなかったのか、改めて蔵に戻ってきき酒してみたり、傾向を考えてみたり、作業の悪い点を洗いだしてみたり、反省点は夏のうちに修正しておきます。上司や営業にドヤされると悔しさもにじんできますね。来年こそは・・・!

(文/リンゴの魔術師)

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リンゴの魔術師

札幌生まれ、弘前大学人文学部に入学するも農学生命科学部を卒業。今は秋田で杜氏を目指し修行中。夏は技師、冬は麹室助手をやっています。造りを通して見た日本酒というものを書いてゆきたいと思います。お酒って、飲んでも考えてもおもしろいですよね。趣味はお絵かき、リンゴ彫刻、鉄道、雑魚釣り、花いじり、猫いじりなどなど。