20〜30代の若手蔵元が集まる人気の日本酒試飲イベント「若手の夜明け」。このイベントは、2007年から毎年開かれているもので、蔵元たちが自ら企画してつくりあげていることが大きな特徴のひとつです。

今回は、以下の16蔵から、16人の蔵元が参加しました。

  • 渡部景大さん 「山の井」会津酒造
  • 古舘龍之介さん 「AKABU」赤武酒造
  • 鈴木孝市さん 「天明」曙酒造
  • 阿部裕太さん 「あべ」阿部酒造
  • 阿部昌弘さん 「阿部勘」阿部勘酒造
  • 今西将之さん 「みむろ杉」今西酒造
  • 田中悠一さん 「加茂錦」加茂錦酒造
  • 川名由倫さん 「黄金澤」川敬商店
  • 相良沙奈恵さん 「朝日榮」相良酒造
  • 壺阪雄一さん 「播州一献」山陽盃酒造
  • 薄井一樹さん 「仙禽」せんきん
  • 常山晋平さん 「常山」常山酒造
  • 鍵和田亮さん 「松みどり」中沢酒造
  • 吉田泰之さん 「手取川」吉田酒造店
  • 柏瀬幸裕さん 「若駒」若駒酒造
  • 今村嘉一郎さん 「若波」若波酒造

すでに人気な蔵も、さらなる酒質向上を図りこれから人気蔵になるポテンシャルを秘めた蔵も数多く参加しています。

若手蔵元が勢ぞろい!

「若手の夜明け」に参加できる条件は、日本酒業界では比較的若手であること。40歳前後を目処にメンバーは卒業していくため、初開催となる2007年から継続して参加している酒蔵はほとんどいません。今回もメンバー全員が20~30代であり、酒蔵の後継者です。

今回は「体育館de酒ポーツ大会」というテーマを掲げ、東京都千代田区にある旧区立中学校を改修したアート施設「3331 Arts Chiyoda」の体育館で開催されました。参加者は学生時代に戻った気分で16蔵のお酒を楽しむことができます。

せんきん・薄井一樹さん(右)と山陽盃酒造・壺阪雄一さん(左)

せんきん・薄井一樹さん(右)と山陽盃酒造・壺阪雄一さん(左)

イベントは、「若手の夜明け」実行委員会の会長である、せんきん・薄井さんの挨拶から始まりました。

「体育館で日本酒のイベントを開くのは、おそらく初めての試みだと思います。本当は玉入れをしたり、かけっこをしたりするのもいいと思いましたが、みなさんお酒を飲むのが目的なので今回は諦めました(笑)。普段とは違う雰囲気を楽しみながら、16蔵すべてのお酒を味わってくださいね」

「若手の夜明け」の様子

次代の担い手が語る、それぞれの思い

副会長である山陽盃酒造・壺阪さんの乾杯のあいさつでイベントがスタート。続いて、参加蔵元が順に登壇し、それぞれの蔵の歴史やお酒の説明をしました。

まずは、川敬商店の川名由倫さんです。川名さんは父の後を継いで杜氏となり、全国新酒鑑評会の金賞連続記録を途絶えさせることなく、今年も金賞を獲得しました。

川敬商店の川名由倫さん

川敬商店・川名由倫さん

「私は昨年度から製造責任者になりました。今日は4種類のお酒を持ってきましたが、3種類は定番酒、残るひとつは製造責任者になったのを記念して商品化した、香りはおだやかで旨味のある純米大吟醸酒です。この商品は、毎年、私が挑戦したいことを詰め込んだお酒にしていくつもりなので、来年は味が変わります。今日飲んだ味を覚えておいて、来年、またこのイベントで飲み比べてくださいね」

続いて、賀茂錦酒造の田中悠一さんです。賀茂錦酒造の「荷札酒」は、近年、最も注目されているお酒のひとつ。酒質もどんどん向上し、荷札を貼り付けたような斬新なデザインも高く評価されています。非売品の銘柄には人だかりができていました。

賀茂錦酒造の田中悠一さん

加茂錦酒造・田中悠一さん

「私は日本酒を造り始めてまだ5〜6年ですが、最初に参加した日本酒のイベントが『若手の夜明け』でした。全国各地の素敵な若い先輩たちといっしょに、このような形でお客さんと触れ合えるのは本当にありがたいですね。今日は定番酒ではなく、特別に非売品である斗瓶取りの純米大吟醸酒を持ってきました」

続いて、阿部酒造の阿部裕太さんです。

阿部酒造の阿部裕太さん

阿部酒造・阿部裕太さん

「私は阿部酒造の六代目であり、製造責任者も務めています。新潟県で開発した酒米『一本〆』で造っている醪の経過が気になってしまい、なかなか落ち着きません。そんな僕の魂をここに引き留めてくれるような、熱い質問をお待ちしています」

続いて、吉田酒造店の吉田泰之さん。

吉田酒造店のブース

吉田酒造店のブース

「2020年は当蔵の創業150周年ということで、改革を進めている最中です。地元の米や、山廃酒母を用いた酒造りに力を入れています。山廃のお酒が苦手という方は、ぜひブースに来てください。さわやかな味わいで新しいタイプの山廃と、クラシックタイプの山廃を持ってきているので、好みの味わいが見つかるかもしれません」

最後に、今西酒造の今西将之さんです。

今西酒造の今西将之さん

今西酒造・今西将之さん

「当蔵は、奈良県の三輪という地域で約350年前から酒造りを続けています。三輪は杉玉発祥の地とも言われる、日本酒の聖地です。蔵の平均年齢は30歳で、35歳の私が最年長です。若いメンバーで、『お客様のために最高にうまい酒を造ろう』とがんばっています」

「若手の夜明け」の参加蔵元

「若手の夜明け」が始まったころは、参加者の多くは日本酒ビギナーでしたが、近年はある程度の知識を持った方々も多く参加しているようです。自分好みのお酒を見つけて人気になる前から応援するべくお酒をじっくりと味わう姿や、お酒について蔵元から直接レクチャーを受ける姿などが見受けられました。

10年後、この「若手の夜明け」のメンバーの中から日本酒業界の引っ張るリーダーとなっている蔵がでてくるかもしれませんね。

(取材・文/空太郎)

この記事を読んだ人はこちらの記事も読んでいます