暑い夏が終わり、秋の訪れが感じられるようになってきました。酒販店や居酒屋には、ひやおろしの日本酒が並び始め、秋の味覚とともに日本酒を味わうのが楽しい季節です。
「食欲の秋」「スポーツの秋」などの言葉があるように、秋は没頭するのに良い時期。「読書の秋」を楽しみたいのなら、日本酒にまつわる本を手に取ってみるのはいかがでしょうか。
日本酒に関連する書籍は数多くありますが、そのなかから、深い学びを得られる3冊を紹介します。
酒造りの奥深さを知りたい人に!
最初に紹介するのは『日本酒の科学』(著・和田美代子、監修・高橋俊成/講談社)。
タイトルのとおり、日本酒を科学的な観点から解説している1冊です。監修を担当した高橋俊成氏は菊正宗酒造に入社した後、およそ20年にわたって、生酛の研究に携わっていました。まさに、"日本酒の科学"のエキスパートです。
この本の魅力は、日本酒の製造工程を、図やデータなどを用いて教えてくれる点です。特に、高橋氏が力を注いできた「生酛」については、わかりやすい図解や実際に使用されていたデータが引用されているため、強い説得力があります。
他にも「日本酒のおいしい飲み方」「日本酒と健康」などの章もあり、造りだけでなく、料理や医学の視点から見た日本酒の魅力を知ることができます。
「どうやって造られてるんだろう?」という、造りに関する疑問から、「どうやって飲んだらいいんだろう?」という、飲み方に対する疑問まで、幅広く答えを示してくれる1冊です。
さまざまな銘柄の味わいを知りたい人に!
1995年に、世界最優秀ソムリエコンクールで日本人として初めて優勝した田崎真也氏。ワインのみならず、日本酒や焼酎にも造詣の深い彼が著したテイスティングの指南書こそ、この『No.1ソムリエが語る、新しい日本酒の味わい方 』(SBクリエイティブ)です。
この一冊は、日本酒のテイスティング方法だけでなく、醸造工程や原料米、酵母など、さまざまな要素による味わいの違いをていねいに解説しています。
こちらは、田崎氏がテイスティングを行なった銘柄の一覧。それぞれの銘柄について、色調、香り、味わい、広がり、余韻、そして相性の良い料理などが記述されています。No.1ソムリエならではの多彩で美しい表現に、思わずページが進んでしまいます。
また、発刊時点で存在したあらゆる酒造適合米と酵母が紹介されています。あまり有名ではないものもわかりやすく紹介されているため、ある程度の専門知識をもっている人にとっても、発見の多い1冊です。
No.1ソムリエの繊細な表現を通して、テイスティングの深淵を感じることができますよ。
今までにない切り口で日本酒の魅力を知りたい人に!
最後に紹介するのは、酒ジャーナリスト・葉石かおり氏が監修した『日本酒マニアックBOOK』(シンコーミュージック)。
葉石氏は、料理と酒のペアリングをテーマに各地で講演を行なうなど、全国の酒蔵を飛び回っている酒ジャーナリストです。また、世界に通用する"プロの伝え手"を育てる「SAKE EXPERT」という資格を新たに立ち上げるなど、精力的に活動されています。
この『日本酒マニアックBOOK』は「日本酒で遊ぶ!日本酒を学ぶ!こんな日本酒本、見たことない!」というコンセプトのとおり、ユニークな企画が詰め込まれた1冊。
「魅せる 酒漢」という章では、人気蔵元が抱く日本酒への思いに迫るインタビューとともにポートレートが載っています。いつもとは少し雰囲気の違うかっこいい姿に、思わず見入ってしまいますね。
他にも、印象的なラベルを紹介する「思わずジャケ買いしたくなる32選」や、写真家・小説家である藤代冥砂氏による、美女と日本酒の写真コーナー「一升瓶とわ・た・し」など、今までとは異なる切り口で日本酒を楽しめる内容です。
カルチャー的な要素の強い印象ですが、若手蔵元への濃やかなインタビュー「日本酒フロンティア 新世代蔵元の熱き挑戦」や、酒米から日本酒の未来を考える「蔵元が米を作る理由」など、日本酒業界の生の声を聴くことができますよ。
この「日本酒マニアックBOOK」には、蔵元の思いがぎゅっと詰まっています。
本棚に日本酒を!
今回は、日本酒をさまざまな視点から学べる3冊を紹介しました。日本酒初心者も、さらに知識を深めたい人も、気になる1冊があれば、ぜひ手に取ってみてください。
(文/鈴木紗雪)