「旬」という言葉は何とも日本らしいいい響き。

四季が明確な日本ならではの食材や海産物は、日本酒とも相性がいいことで知られています。しかし、最近の生鮮食材は技術進歩により年中収穫されるものも多く、旬に関わらずいつでも食べられるので、意外に旬を感じにくくなっています。また販売というビジネスからいうと、人気食材は店内でも目に付く場所・広い面積で陣取ります。その結果、旬に関わらず同じような食材が並びやすいという事情もあります。

利便性と引き換えに感じにくくなってしまった、食材の旬と日本酒との関係、そして、まさにこれから旬を迎える食材のご紹介をします。

日本の食の「旬」とは

”今が旬”と呼ばれる食べ物には、夏なら体を冷やし、冬なら温めるといったように、その時期に合わせて体にうまく働きかけるものが多くあります。

例えば、夏のナスやトマトには水分が多く含まれ、体を冷やす効果があったり、冬のブロッコリーはビタミンCが多く含まれ、免疫を高め、風邪予防にもつながります。また、魚の旬とは、一般的に産卵する前の脂がのっている時期のことを言います。食材の最も良い時期なので当然おいしさも格別、栄養価も高くなります。そして何より収穫量が多いのでお財布にも優しいのです。

見た目だけでは判断しづらくても、食べ物の旬について少し知識をつけることで、何倍も美味しく、栄養もたっぷり摂取することができますね。

日本の食材と日本酒の相性

旬の食材は、おいしさも栄養価も抜群。日本の料理に合うお酒として、日本酒は代表格とも言えますが、それはなぜでしょうか?

まず、日本酒は味わいの成分に旨みを持つ珍しいお酒です。

その旨み成分(アミノ酸)は原料であるお米に由来していますね。ですから日本の料理は米を基本とし、米との相性を考えて作られているものが多いです。例えば冬の寒い時期に鍋を囲んで雑炊で〆る。食材の旨みが出汁に染み、それをお米が吸った時の味わいは格別です。原料が同じという点で、日本の料理と日本酒は基本的に相性が良い。これが前提です。

つぎに、生臭みなど食材の悪い部分を消すマスキング効果が挙げられます。

魚介類の生臭みの元は、その成分分解によるものです。魚の身は肉に比べても分解が早い。その過程で発生するアンモニアや硫黄化合物などの物質がにおいの原因です。しかし、日本酒のもつ有機酸はこの物質を中和し、魚介類の旨みや良い部分だけを残します。生臭みの成分はアルカリ性ですが、日本酒の酸性で中和されるということです。

だからこそ日本酒は魚介類との相性が良く、旬だけど鮮度が落ちやすい青魚やカツオなどもおいしさをそのままに楽しむことができます。

日本酒に合わせたい春の食材

まずは野菜。ほろ苦さと独特の風味を持つ芽野菜は、春の風物詩とも言えます。

代表的なものに、たらの芽、ぜんまい、つくし、菜花、のびるなど。特にたらの芽は「山菜の王様」とよばれ、ビタミンEが豊富でアルコール性脂肪肝の予防にも効果的。酒の肴としてもぴったりの相性なのです。

次は魚。早春の代表はサワラとカツオです。

日本酒は魚と最高の相性を見せます。皮目を炙った「たたき」や「焼霜」のお刺身は格別ですね。新鮮な魚を食べる日本の文化だからこそ、それを支える酒としても日本酒は欠かせないものです。

最後に果実です。春の旬は苺です。

苺の魅力はそのジューシーな果汁の甘みと酸味です。おすすめは春先に出てくる無濾過生原酒を合わせることです。しぼりたての生酒が持つフレッシュでジューシーな味わいは、苺の持つ濃厚な味わいと同調します。

よくしぼりたての生酒は「カタい」と評されることもありますが、そのカタさ・青さが逆に苺と共通する部分で、ベストマッチだと思います。一緒に食べると口の中で少し温度が上がって旨みや香りが広がり、甘みが溶けだす。フルーツにも相性がいい日本酒は本当にいろいろな楽しみ方ができますね。

今回は旬と日本酒の関係について考察してみました。
日本酒は複雑で一般的に知られていない部分も多い、だからこそ追求し、学べる懐の深さがあります。そして深堀りすればするほど、新しい発見がある。それが日本酒の面白味のひとつだと思います。

(文/sake_shin)

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