平成が終わりを迎え、新たな「令和」の時代が幕を開けようとしています。造り手として、売り手として、そして伝え手として日本酒に向き合うプロフェッショナルたちは平成の日本酒業界をどのように捉え、どんな令和を見据えているのでしょうか。

SAKETIMESでは、業界の最前線を走る関係者へのアンケートをもとに「平成の日本酒」を振り返り、「令和の日本酒」について考えます。本記事では、それぞれに伺った「平成の日本酒を象徴する出来事」を紹介します。

平成の日本酒を象徴する出来事とは?

久慈浩介(株式会社南部美人 代表取締役社長)

  • 東日本大震災後、東北のお酒を飲んでいただいたこと
  • 「獺祭」の成功

君嶋哲至(株式会社横浜君嶋屋 代表取締役)

  • セルレニン耐性酵母の発見
  • 海外輸出量の増加

あおい有紀(フリーアナウンサー・酒サムライ)

  • 級別制度が廃止され、吟醸酒が日常酒として飲まれるようになってきたこと
  • 「十四代」の高木社長が蔵元杜氏としての酒造りを始め、酒造りの在り方に一石を投じた

北原亮庫(山梨銘醸株式会社 専務取締役 兼 醸造責任者)

  • 長く続いてきた杜氏制度から蔵元杜氏のスタイルへ移行していったこと

山本典正(平和酒造株式会社 代表取締役社長)

  • 蔵元杜氏の台頭
  • 若手蔵元の活躍

ポッツ・ジャスティン(株式会社ポッツ家プロダクションズ 代表取締役&CEO)

  • 日本酒の香りや味わい、そして提供方法の多様化

山本祐也(MIRAI SAKE COMPANY, CEO)

  • 技術のアクセサビリティが向上したことによって、資本の多寡や年齢の壁を越えて酒造りがしやすくなったこと

小澤和幸(朝日屋酒店 代表取締役社長)

  • 級別制度の廃止
  • 東日本大震災をきっかけとした「飲んで応援」の動き

浅野洋平(浅野日本酒店 代表取締役)

  • 「獺祭」の飛躍。ひとつの成功モデルを築いた。日本酒を知らない人にも日本酒を知らしめた功績は大きい。
  • 「澪」の発売。スパークリング日本酒というジャンルを一般化したと思う。
  • はせがわ酒店の存在。酒屋の新しい在り方を提示し、「SAKE COMPETITION」をはじめ、消費者目線の新しい評価を提示した。

生駒龍史(株式会社Clear 代表取締役CEO)

  • 級別制度の廃止
  • IWCでのSAKE部門設立

石井誠(石井酒造株式会社 代表取締役社長)

  • 「獺祭」の存在

平出淑恵 (株式会社コーポ幸 代表取締役)

  • IWCでのSAKE部門設立。日本酒がワインと並んだ価値のある醸造酒という位置づけとなり、ロンドンから品質を評価された銘柄が世界に向けて発信されるようになった。
  • 国策としての日本酒振興。日本酒の輸出や日本酒の国際化に国が取り組み始めた。
  • WSETにSAKE講座が誕生。世界70ヶ国に展開する世界最大のワイン教育機関でワイン業界の中心にいる人材が日本酒を学ぶ環境ができた。

青島壮介(レフェルヴェソンス)

  • 氷温庫の登場
  • フレンチとのペアリングの実現

畔柳伸(酒蔵プレス)

  • 級別制度の廃止と特定名称の登場
  • 若手蔵元杜氏の活躍

薄井一樹(株式会社せんきん 十一代目蔵元 専務取締役)

  • 級別制度の廃止と特定名称の登場
  • クール便の登場によって、生酒の全国流通が始まったこと

立川哲之(全蔵めぐり~日本酒を醸す全ての蔵をめぐる旅~)

  • 級別制度の廃止と特定名称の登場
  • 「十四代」のブレーク
  • 蔵元杜氏の台頭
  • 東日本大震災後の復興応援特需

あさやん(きき酒師の漫才師「にほんしゅ」)

  • 一ノ蔵「すず音」の発売
  • 「獺祭」の経営改革
  • ペアリングを意識した楽しみ方の広がり

宮下祐輔(ふしきの店主)

  • 「獺祭」の功績。日本酒の裾野を広げ、海外マーケットを開拓する先遣隊の役割を担ってくれた。アメリカでの取組が、世界市場にどんな影響を及ぼすのか、期待している。

そのほかの意見

  • 1万円を超える日本酒が店頭にならび売れるようになったこと
  • 宅配便などの冷蔵ネットワークが確立し、生酒の流通が一般的になったこと
  • 日本酒が海外で積極的に造られるようになったこと
  • 「BROOKLYN KURA」「KANPAI SAKE」など、欧米に日本酒メーカーが出てきたこと
  • WAKAZEのボタニカルSAKE開発による新たな香味の実現

日本酒業界の過渡期「平成」

今回のアンケートで多く挙げられたのは、特定名称の導入(平成2年)や級別制度の廃止(平成4年)に加え、「獺祭」をはじめとするリーディングカンパニーの出現と、それに付随する世界的な日本酒の認知度向上でした。

日本酒の品質向上や高級化、新しい造り手の登場など、平成に起こった日本酒の変化は数え切れません。平成を通して、娯楽の選択肢は大幅に増え、私たちのライフスタイルは大きく変化しました。私たちの生活や嗜好そのものが変わりゆく時代だったからこそ、日本酒業界の変化も多かったのでしょう。

新しくやってくる「令和」の時代には、味わいや提供方法がさらに多様化し、その結果、世界中にその魅力が伝わっていくことが期待されます。日本酒がどのように変化していくのか、楽しんでいきたいですね。

◎アンケートにご協力いただいた方々(順不同/敬称略 ※名前出し可の方のみを記載)

久慈浩介(株式会社南部美人 代表取締役社長)/君嶋哲至(株式会社横浜君嶋屋 代表取締役)/あおい有紀(フリーアナウンサー・酒サムライ)/北原亮庫(山梨銘醸株式会社 専務取締役 兼 醸造責任者)/山本典正(平和酒造株式会社 代表取締役社長)/ポッツ・ジャスティン(株式会社ポッツ家プロダクションズ 代表取締役&CEO)/山本祐也(MIRAI SAKE COMPANY, CEO)/小澤和幸(朝日屋酒店 代表取締役社長)/浅野洋平(浅野日本酒店 代表取締役)/生駒龍史(株式会社Clear 代表取締役CEO)/石井誠(石井酒造株式会社 代表取締役社長)/平出淑恵 (株式会社コーポ幸 代表取締役)/青島壮介(レフェルヴェソンス)/畔柳伸(酒蔵プレス)
/薄井一樹(株式会社せんきん 十一代目蔵元 専務取締役)/立川哲之(全蔵めぐり~日本酒を醸す全ての蔵をめぐる旅~)/あさやん(きき酒師の漫才師「にほんしゅ」)/北井一彰(きき酒師の漫才師「にほんしゅ」)/宮下祐輔(ふしきの店主)

(文/SAKETIMES編集部)

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