平成が終わりを迎え、新たな「令和」の時代が幕を開けようとしています。造り手として、売り手として、そして伝え手として日本酒に向き合うプロフェッショナルたちは、平成の日本酒業界をどのように捉え、どんな令和を見据えているのでしょうか。

SAKETIMESでは、業界の最前線を走る関係者へのアンケートをもとに「平成の日本酒」を振り返り「令和の日本酒」について考えます。本記事では、それぞれに伺った「2019年に注目すべき銘柄や企業」をまとめました!

新時代「令和」に注目の日本酒を総まとめ!

赤武酒造(岩手県盛岡市)

  • 岩手を代表する若手蔵元で、技術も伸び盛り。しかもまだ20代。これからが楽しみでなりません。【久慈浩介(株式会社南部美人 代表取締役社長)】

菊の司酒造(岩手県盛岡市)

  • 平井専務(27歳)が蔵へ戻ってから新卒採用が始まり、2018年秋から社員だけの造りに移行。蔵人の平均年齢がおよそ20歳も若返ったそう。【北井一彰(きき酒師の漫才師「にほんしゅ」)】

「雪の茅舎」齋彌酒造店(秋田県由利本荘市)

  • 「櫂入れしない」「濾過しない」「割り水をしない」という自然の働きに任せた「三無い造り」を実践している。また、米の洗米と浸漬、そして蔵内の清掃・備品の洗浄にとにかく時間をかける凡事徹底。味わいがありながらもきれい、それでいて安定した品質を実現している。【浅野洋平(浅野日本酒店 代表取締役)】

新政酒造(秋田県秋田市)

  • 理想の酒造りを追求する試みは若手酒蔵の手本。次の一手に注目したい。

WAKAZE(山形県鶴岡市/東京都世田谷区)

  • いま、パリで酒蔵を建設しています。超楽しみです。【久慈浩介(株式会社南部美人 代表取締役社長)】
  • 従来の概念とは違う、新しい日本酒の創造に着々と取り組んでいるから。【石井誠(石井酒造株式会社 代表取締役社長)】
  • ボタニカルSAKEや三軒茶屋でのどぶろく造りに加え、今年からパリで酒造りを始めるとのこと。チャレンジし続ける今後の展開に注目したい。【あおい有紀(フリーアナウンサー/酒サムライ)】
  • 今年、フランスでファーストヴィンテージをスタートさせる。【畔柳伸(酒蔵プレス)】
  • パリでの醸造が開始されるため。【立川哲之(全蔵めぐり~日本酒を醸す全ての蔵をめぐる旅~)】

楯の川酒造(山形県酒田市)

  • 全量純米大吟醸で、プレミアム市場を開拓している【生駒龍史(株式会社Clear 代表取締役CEO)】

「伯楽星」新澤醸造店(宮城県大崎市)

  • 杜氏に22歳の女性を起用したり、精米歩合0%の日本酒を造ったり......チャレンジし続ける酒蔵として今後の展開に注目したい。【あおい有紀(フリーアナウンサー/酒サムライ)】
  • 新たな女性杜氏のセンスで造られる「伯楽星」を飲んでみたい。【北原亮庫(山梨銘醸株式会社 専務取締役 兼 醸造責任者)】
  • 日本酒の付加価値を最大限にアピールして高価格商品をリリースしている。 ワインやウイスキーにも肩を並べる商品になっている。【小澤和幸(朝日屋酒店 代表取締役社長)】

佐々木酒造店(宮城県名取市)

  • 東日本大震災後に嵩上げした土地での醸造を、2019年10月から開始する。【立川哲之(全蔵めぐり~日本酒を醸す全ての蔵をめぐる旅~)】

「会津ほまれ」ほまれ酒造(福島県喜多方市)

  • 2015年のIWCでチャンピオンとなった銘柄。東日本大震災後、福島県のポジティブな発信をロンドンから世界へ向けて実現し、翌年には、伊勢志摩サミットのお土産にも採用。日本酒の国際化が地域貢献となることを示した。 【平出淑恵(株式会社コーポ幸 代表取締役)】

「荷札酒」加茂錦酒造(新潟県加茂市)

  • 淡麗辛口が主流の新潟県にあって、伝統的な酒造りを踏まえながらも現代に合った旨口の酒を目指している。試行錯誤しながらではあるものの、目指すべきイメージを明確にもち、先輩の造り手から多くを学んでいる。そんな蔵元の姿に注目している。【はせがわ酒店】
  • 酒質向上への情熱がすごい。他蔵へ醸造技術についての質問をしたり、設備の相談をしたりと、まだまだ進化する要素がある。また、日本酒造りをロジカルに検証しているが、決して無機質にならない。日本酒が好きであることがよくわかる。【薄井一樹(株式会社せんきん 十一代目蔵元 専務取締役)】

「あべ」阿部酒造(新潟県柏崎市)

  • 毎期々々、確実に酒質を向上させ、ファンを惹きつけています。どのラインナップも個性的ですが、それぞれが似ることなく異なる方向でクオリティを上げている。とても高いポテンシャルをもった酒蔵です。【山本祐也(MIRAI SAKE COMPANY, CEO)】
  • フレキシブルな発想でおもしろい酒質を生み出している。【石井誠(石井酒造株式会社 代表取締役社長)】

「八海山」八海醸造株式会社(新潟県南魚沼市)

  • 甘酒への投資。日本酒のみならず発酵食品全体へのアプローチ。すべてを形にしているのがすごい。【ポッツ・ジャスティン(株式会社ポッツ家プロダクションズ 代表取締役&CEO)】

「天領盃」天領盃酒造(新潟県佐渡市)

  • 蔵元である加登さんのパッションや想いに共鳴しています。【山本祐也(MIRAI SAKE COMPANY, CEO)】

「仙禽」せんきん(栃木県さくら市)

  • 甘酸っぱい味わいや、仕込み水と同じ水系で栽培した酒米を使って酒造りを行うドメーヌ化など、コンセプトがしっかりとしている。確固たるブランドイメージを構築する新スタイルの蔵として注目。特定名称にこだわらない商品ラインナップなど、業界の常識をどう変えていくのか期待している。【はせがわ酒店】
  • 地元・栃木県産の米と水を使用した、トラディショナルな酒造りに注目している。【君嶋哲至(株式会社横浜君嶋屋 代表取締役)】

「SAKE100」株式会社Clear(東京都渋谷区)

  • スペックに頼らない、日本酒の高付加価値を追求しているから。【石井誠(石井酒造株式会社 代表取締役社長)】

「誉国光」土田酒造(群馬県利根郡)

  • チャレンジングでキャッチーな酒造りやSNSの積極的な活用によって、人気が急上昇している。【立川哲之(全蔵めぐり~日本酒を醸す全ての蔵をめぐる旅~)】

愛知県の酒蔵

  • モノづくり県としてのイメージが強い愛知県。清酒の出荷量が全国7位というのは意外と知られていない。酒造り県としての知名度アップに向け、昨年度から県を挙げて首都圏でのアピールに本腰を入れている。【畔柳伸(酒蔵プレス)】

「醸し人九平次」萬乗醸造(愛知県名古屋市)

  • フランスにワイナリーをもち、続いて山田錦の本場に新蔵を建設する狙いとは。

黒龍酒造(福井県吉田郡)

  • 「無二」の販売を通して、新しい流通を作り出している。【小澤和幸(朝日屋酒店 代表取締役社長)】

「北島」北島酒造(滋賀県湖南市)

  • 若き杜氏の齋田さんに加え、竹鶴酒造にいた村上さんが今年の造りから加わっている。 村上さんの加入でどのように進化するのか、とても期待。【宮下祐輔(ふしきの 店主)】

月桂冠(京都市伏見区)

  • 「上撰」がIWCのグレートバリューSAKEに選出されるなど、プレミアム以外の日本酒市場の可能性を感じさせてくれる。【生駒龍史(株式会社Clear 代表取締役CEO)】

「播州一献」山陽盃酒造(兵庫県宍粟市)

  • 昨年の火災で大きな被害を受けながらも復旧に向けて健闘している。今後も注目し、応援し続けていきたい。【あおい有紀(フリーアナウンサー/酒サムライ)】
  • 昨年の火災からどのような復活を遂げるのか、期待している。【山本典正(平和酒造株式会社 代表取締役社長)】

「剣菱」剣菱酒造(兵庫県神戸市東灘区)

  • 木桶専用酵母の開発など、木桶文化にコミットしている。文化を守る動きに注目。【ポッツ・ジャスティン(株式会社ポッツ家プロダクションズ 代表取締役&CEO)】

「みむろ杉」今西酒造(奈良県桜井市)

  • 地元・奈良県の米と水を使った、トラディショナルな酒造りをしている。【君嶋哲至(株式会社横浜君嶋屋 代表取締役)】
  • お酒の神様が鎮座する大神神社の御神体「三輪山」に見守られながら力強くていねいに醸される"三輪の酒"は、すべてを受け入れてくれる上にピシッと姿勢を正してくれるような味わいが新時代の幕開けにピッタリ。明日への希望と未来への挑戦をみむろ杉が後押ししてくれる。【あさやん(きき酒師の漫才師「にほんしゅ」)】
  • お酒の神様が祀られ、杉玉の起源でもある大神神社の膝元にあるというストーリー。お客さんの「美味い!」のために、毎年大規模な設備投資と徹底した従業員教育を実施し、年々酒質が向上している。また、いたずらにアイテムを増やさず、定番アイテムを磨き続ける信念がある。【浅野洋平(浅野日本酒店 代表取締役)】
  • 地元・奈良県産の米と水を使用した、トラディショナルな酒造りに注目している。

「風の森」油長酒造(奈良県御所市)

  • しぼりたての生酒を理想の形で飲み手まで届ける動きに目が離せない。

「酔鯨」酔鯨酒造(高知県高知市)

  • 昨年末に新しい蔵が完成し、海外の市場を見据えたハイエンド商品のラインナップなど、商品や販売方法の見直しを着々と行っている。他社とのコラボレーションや海外でのイベントにも積極的で、今後の展開が楽しみ。【はせがわ酒店】

賀茂鶴酒造(広島県広島市)

  • 地域で存在感を発揮し、地域社会を支え続ける酒蔵が見直される時代が「令和」だと考える。賀茂鶴酒造のようにぶれない味わいをもち、各地で購入することができる「地酒大手」と呼べるような酒蔵の価値が高まっていく。【北井一彰(きき酒師の漫才師「にほんしゅ」)】

「天穏」板倉酒造(島根県出雲市)

  • 若き小島杜氏が年々、造り方に改良を加えている。特に「無窮天穏」のシリーズがどのように進化しているのか、とても気になる。【宮下祐輔(ふしきの店主)】

「獺祭」旭酒造(山口県岩国市)

  • 日本酒の輸出を実質的に牽引しているリーディングカンパニー。【生駒龍史(株式会社Clear 代表取締役CEO)】

「五橋」酒井酒造(山口県岩国市)

  • チャレンジングでおもしろい。スパークリング・生酛造り・木桶仕込み・白麹・黒麹・低精白96%など、仲間杜氏の探究心に脱帽。ラベルのデザインも尖っていて、「美味しい」だけではない「楽しい」日本酒の世界を伝えている。また、山口県柳井市伊陸(いかち)のトラタン村と山田錦の契約栽培を行い、品質の良い酒米の確保と村おこしにも取り組んでいる社会貢献の酒蔵。【浅野洋平(浅野日本酒店 代表取締役)】

重家酒造(長崎県壱岐市)

  • 復活のストーリーが注目されることで壱岐島が発祥と言われる麦焼酎にも目が向き、國酒全体の認知向上にもつながる。國酒全体において果たす役割は今後も大きい。【北井一彰(きき酒師の漫才師「にほんしゅ」)】

「HEAVEN SAKE」

  • Instagramでの有名人ネットワークを活用したマーケティングで1万人を超えるフォロワーにリーチし、知名度が上がってきている。

Dojima Sake Brewery(イギリス・ケンブリッジ)

  • 今年が2期目の酒造り。間違いなく良いお酒を醸してくれると思う。【株式会社南部美人 代表取締役社長・久慈浩介】

Brooklyn Kura(アメリカ・ニューヨーク)

  • NYの現地メーカーながらクオリティが高く、ビールのようにケグで提供することで新しいマーケットを開拓している。

Kanpai London Craft Sake(イギリス・ロンドン)

  • ロンドンの現地メーカー。ビール醸造の知見を活かして麦で麹を造ったり、圧搾機や蒸米機などをみずから設計開発したり、DIYの精神で新たな醸造プロセスを開拓したり......ホップを使用した瓶内二次発酵スパークリングなど、商品も斬新。
  • 「日本酒」ではありえないが、広義の「SAKE」であればこういう考え方もあるのか......と勉強になる。【山本祐也(MIRAI SAKE COMPANY, CEO)】

いまでや(千葉県千葉市)

  • 氷温庫の導入など、品質管理に対する高い意識が感じられる。【青島壮介(レフェルヴェソンス)】

Makuake(クラウドファンディング)

  • 商品開発の新しい形が、クラウドファンディングによってさらに活性化しそう。【山本典正(平和酒造株式会社 代表取締役社長)】

燗酒Bar Gats(東京都渋谷区)

  • 熱燗の概念を大きく変えてしまう圧倒的存在感。【青島壮介(レフェルヴェソンス)】

酒蔵の個性やオリジナリティが進化していく

今回のアンケートでは、若手蔵元を中心に、地酒としての価値を再定義している酒蔵やこれまでにない新しい価値を提案している酒蔵に期待する声が多く挙がりました。

現代の消費者にとってわかりやすく、かつ共感しやすいストーリーをアピールしていくことは、飲み手があらゆる情報にアクセスできるようになったこの時代において、ますます重要性が高まっていくでしょう。

世界各地の酒蔵がそれぞれの個性やオリジナリティを存分に発揮することで、日本酒がさらに美味しく楽しくなる。そんな「令和」を楽しみにしましょう。

◎アンケートにご協力いただいた方々(順不同/敬称略 ※名前出し可の方のみを記載)

久慈浩介(株式会社南部美人 代表取締役社長)/君嶋哲至(株式会社横浜君嶋屋 代表取締役)/あおい有紀(フリーアナウンサー・酒サムライ)/北原亮庫(山梨銘醸株式会社 専務取締役 兼 醸造責任者)/山本典正(平和酒造株式会社 代表取締役社長)/ポッツ・ジャスティン(株式会社ポッツ家プロダクションズ 代表取締役&CEO)/山本祐也(MIRAI SAKE COMPANY, CEO)/小澤和幸(朝日屋酒店 代表取締役社長)/浅野洋平(浅野日本酒店 代表取締役)/生駒龍史(株式会社Clear 代表取締役CEO)/石井誠(石井酒造株式会社 代表取締役社長)/平出淑恵 (株式会社コーポ幸 代表取締役)/青島壮介(レフェルヴェソンス)/畔柳伸(酒蔵プレス)
/薄井一樹(株式会社せんきん 十一代目蔵元 専務取締役)/立川哲之(全蔵めぐり~日本酒を醸す全ての蔵をめぐる旅~)/あさやん(きき酒師の漫才師「にほんしゅ」)/北井一彰(きき酒師の漫才師「にほんしゅ」)/宮下祐輔(ふしきの店主)

(文/SAKETIMES編集部)

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