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秋田酒屋唄の練習から醸造学酒税法テストまで!山内杜氏の酒造講習会

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秋田を代表する杜氏集団といえば、山内(さんない)杜氏。この山内杜氏が集まる勉強会「山内杜氏酒造講習会」が、毎年8月に開催されます。

参加しているのは山内杜氏組合に加盟している酒蔵の杜氏と蔵人が中心、半数以上が秋田県民と言えるでしょう。「高清水」「新政」「雪の茅舎」「刈穂」「爛漫」「まんさくの花」など、秋田を代表する蔵元の杜氏・蔵人が一同に集います。参加者のほぼ全員が酒造りに関わる人たち、ライバルであり仲間でもあるのです。

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「ハァ、ドッコイドッコイ!」伝統ある秋田酒屋唄の練習

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酒屋唄の練習は、杜氏が前に出て、それに合わせて唄います。

なぜ仕事をしながら唄うのかといえば、時計がない蔵内では米研ぎや櫂入れの時間が測れないため、唄うことで時間を測っていたという説が有力でしょう。「昨日は3番まで唄ったけど、今日は2番のドッコイドッコイまで」みたいに唄い終わりの位置を変えることで、米の浸漬時間やもと擦りの回数を変えることができます。

酒造りといえば、今でも櫂棒(かいぼう)を持って作務衣を着て唄いながら仕事をしている、というイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私が働いている蔵では、酒屋唄を唄いながら仕事をすることはほぼありません。出るのは鼻歌くらいなものです。

とは言っても、酒屋唄は大切な文化なので、唄い継いでいくためにこうした機会に練習して、酒の会などのイベントで披露しています。

今回練習した酒屋唄は「秋田酒屋唄」とも呼ばれ、民謡としても唄われているようです。蔵や地域によって歌詞に違いはあれど、メロディはおおよそ一緒です。

唄の内容は「酒造りが始まる時は何も手につかないくらい忙しく、始まってみれば夜中の蒸しや宵のもと擦りなど、朝も晩も関係ないくらいたいへんなものだけど、それでも造りをやる若者は秋の稲穂がごとく、揃ってやってくるものだよ!」というものです。

合いの手の「ドッコイドッコイ」もあるので覚えやすいかもしれません。興味のある方は「刈穂」の齊藤泰幸杜氏が唄っている動画をご覧ください。

杜氏の伝統の技が光る!山内杜氏自醸酒鑑評会

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講習と同時に開催されるのが「自醸酒鑑評会」です。

各蔵から出品酒を持ち寄ってきき酒会を行い、審査員が順位をつけます。上位の酒は表彰され、トロフィーや賞状が贈られます。高評価の出品酒は、ほどよい熟成感香りのフレッシュさキレの良さが感じられました。

ここでもやはり秋田県の純米志向がうかがえます。大吟醸もよいですが、純米大吟醸には特に杜氏の技が光ります。ググッと飲みたくなりますが、鑑評会の最中は我慢です。しっかりと評価して、今度の晩酌の参考に……、いえいえ、次の仕込の参考にしましょう。

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蔵人もうかうかしていられない!全員参加の醸造学酒税法テスト

評価されるのは酒だけではなく、蔵人自身も「醸造学酒税法テスト」で、その知識を試されます。

酒税法など諸法規はもちろん、酒造一般知識の他に、化学や数学の知識も問われます。若手蔵人にはこれが鬼門で、自分の専門部署はともかく他の部署の知識については知らないことも多いので、合格を目指して勉強します。

成績優秀者は翌年の開講式で所属会社と名前が読み上げられ、賞品がもらえます。名前が呼ばれないと杜氏や社長に「おや?」という顔をされますので、ぜひとも勉強をしておきたいところです。

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私はばっちり合格しましたので、心配無用です。

ちょうど講習会が開催されるのは、稲が出穂(しゅっすい)する時期にあたります。稲から穂が出てきて実り始め、新米ができるのを待ちます。この時期の積算気温が米の出来を左右するとも言われるので、杜氏は天気にも注目しています。

田んぼが黄金色になって刈り取りが始まったら、いよいよ今年の酒造りが始まります。造り酒屋にとって、1年はあっという間なのです。

(文/リンゴの魔術師)

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リンゴの魔術師

札幌生まれ、弘前大学人文学部に入学するも農学生命科学部を卒業。今は秋田で杜氏を目指し修行中。夏は技師、冬は麹室助手をやっています。造りを通して見た日本酒というものを書いてゆきたいと思います。お酒って、飲んでも考えてもおもしろいですよね。趣味はお絵かき、リンゴ彫刻、鉄道、雑魚釣り、花いじり、猫いじりなどなど。