兵庫県神戸市の酒造メーカー・沢の鶴から、「古酒仕込み 紅茶梅酒」が9月28日に発売されました。
この新商品は、同じく神戸市に本社を構える総合食品商社・富永貿易の協力のもと、同社が取り扱うイギリスの紅茶ブランド「ハムステッドティー」とのコラボレーションによって生まれたものです。
SAKETIMES編集部は、9月24日に神戸で行われた新商品発表会に出席。2社の代表が登壇した発表会の様子と、会場で語られた新商品の魅力をお伝えします。
日本酒仕込みの梅酒のおいしさを伝える
新型コロナウイルス感染症への対策を徹底した上で行われた今回の発表会。会場には地元の新聞社やテレビ局、ラジオ局など多くの取材関係者が出席しており、新商品への関心の高さがうかがえます。
発表会には、沢の鶴 代表取締役社長の西村隆氏が登壇し、沢の鶴の酒づくり、特に米へのこだわりを紹介しながら、「古酒仕込み 紅茶梅酒」の開発の経緯が語られました。
日本で梅酒が飲まれるようになったのは江戸時代と伝えられています。当時の梅酒といえば日本酒で仕込んだものでしたが、現在、家庭で梅酒を仕込む際に使われるのは、ホワイトリカーと呼ばれる甲類焼酎が一般的です。
その理由として挙げらるのが、一般的な日本酒のアルコール度数の15度前後では、梅酒を漬けた時に腐敗や再発酵をしてしまう可能性があること。また、酒税法の規定で「家庭で20度未満のアルコールで梅酒を造ること」が禁止されているため、一般家庭で日本酒を使った梅酒づくりは難しいのが現状です。
そんななか、沢の鶴では2010年から梅酒の製造と販売を開始。出荷量も年々増え、国内だけでなく免税店や海外への輸出も含めて売上は好調だといいます。米にこだわった酒づくりを続けている同社らしく、添加物を使用せず梅と砂糖だけを使って古酒で仕込んだ、バラエティー豊かな本格梅酒を展開しています。
なぜ、沢の鶴は梅酒づくりにこだわるのでしょうか。その理由を「日本酒で仕込んだ梅酒のおいしさを伝えたいから」と西村社長は語ります。
「沢の鶴の梅酒は、日本一の梅の里・紀州で丹念に育てられた上質の南高梅を、3年以上かけて熟成させたまろやかな生酛造り純米酒に漬け込んでいます。長期熟成された日本酒の深みと芳醇な旨み、コク、梅の酸味が調和したプレミアムな味わいが特徴です。
また、日本酒には米由来の自然な甘み成分や、麹菌などが生み出すアミノ酸などのうまみ成分がたっぷり含まれているため、仕込みに使う砂糖を少なくできるのもポイントです。梅酒を好まれる方の中には砂糖の量を気にする方もいらっしゃいますので、そのような方にもおすすめできる日本酒を使った梅酒を開発し続けています」
地元・神戸の文化を掛け合わせて生まれる新たな価値
そんな梅酒にもこだわりを持つ沢の鶴が今回注目したのが、「紅茶」でした。2018年にトレンドの兆しを見せていた紅茶を使い、新しい梅酒の開発をスタートさせます。
神戸は、日本における紅茶文化の発祥地。一世帯当たりの消費量がトップクラスにあたるなど、神戸には紅茶を楽しむ文化が根付いています。また、昨今はタピオカドリンクのブームやコロナ禍でのステイホーム期間などにより紅茶の需要が増え、特に女性や若年層からの注目も高まっています。
西村社長は、地元・神戸の企業同士でコラボレーションし、神戸を代表する日本酒文化と紅茶文化を掛け合わせることで、新しい価値を生み出したいと考えたのだそう。同じく神戸に本社を構え、紅茶製品の輸入販売にも力を入れている富永貿易に、沢の鶴から商品の共同開発をオファーしました。
ともに商品発表会に登壇した富永貿易 取締役社長の富永昌平氏はこう振り返ります。
「当社が扱う複数の紅茶のラインナップから、沢の鶴さんのこだわりに見合うブランドを選定。イギリスの紅茶ブランド『ハムステッドティー』の企業姿勢やコンセプト、品質や味わいに魅力を感じていただき、そのなかのダージリン茶葉を新商品の梅酒に使うことが決まりました」
「ハムステッドティー」は、1989年創業のロンドン初のオーガニック紅茶メーカーです。単一農園の茶葉を使用するシングルエステート、自然環境を守る最上級レベルのオーガニック栽培「バイオダイナミック農法」を行い、世界で最も基準が厳しいとも言われるオーガニック認証「demeter(デメター)」の認定も受けています。
こだわりの梅、日本酒、そしてオーガニック紅茶を原料として、「古酒仕込み 紅茶梅酒」は何度も試作や試飲を重ねてつくり上げられました。
「古酒由来の芳醇な旨みとコク、紅茶の豊かな香りと味わいを感じてもらえる商品です。日ごろから紅茶を好む方やこだわりの梅酒に関心がある方、オーガニック食品や無農薬、有機農法など、健康志向でサステナブルに関心のある方に飲んでもらいたいですね」と、西村社長はその仕上がりに自信をのぞかせます。
おすすめの飲み方をたずねられると、「料理との相性が非常に良いです。日本酒由来のコクや旨みがありながら、紅茶の香りもあるので和食だけでなくパンやスイーツにも合います。おすすめの飲み方は、温かく香りが立つホットです」と、西村社長。富永社長は「コクと旨みが感じられるロックで」と、それぞれの好みを紹介していました。
西村社長は、発表会の最後をこう締めくくりました。
「梅酒は女性や若い方に人気があるお酒なので、日本酒仕込みの梅酒をきっかけに日本酒が持つ米の旨みや甘み、味わいを知ってもらい、日本酒に興味を持つきっかけにしたいです。『古酒仕込み 紅茶梅酒』で和やかな気持ちや幸せな気持ちになって、前向きなライフスタイルの一助になればうれしいですね」
コラボによって視野を広げ、新しい発想を得る
発表会終了後、西村社長と富永社長から、商品や開発の経緯について、さらにお話を聞くことができました。
「苦労したのは、梅酒と紅茶のバランス」と、西村社長は語ります。
「茶葉を選定してから、茶葉の量や抽出する時間を決めるのに一番時間がかかりました。私たちは紅茶に関しては素人なので、試作を繰り返し、富永社長をはじめ社員のみなさんにも試飲していただき、『紅茶の香りや味わいがきちんと出ているか、あるいは出すぎていないか』という議論を何度も重ねましたね。梅酒と紅茶の良いところが出るバランスに気を遣いました」
これまでもさまざまな企業とコラボレーションしてきた富永貿易ですが、日本酒メーカーとのコラボは今回が初めて。富永社長は次のように振り返ります。
「沢の鶴さんからお話をいただいて、大変光栄なことだと思い快諾したんです。梅酒はこれまで扱ったことがありませんでしたが、面白い商品ができそうだと期待がありました。
今回、日本の伝統である酒造りを300年以上続けている沢の鶴さんのものづくりへの熱意と情熱を感じました。私たちは時代のニーズに合わせてスピード感ある商品開発を続けていたので、じっくり2年間かけて商品開発をする機会は今までなかったんです。一緒に取り組ませていただき、とても勉強になりました」
沢の鶴もまた、さまざまな企業とコラボレーションを重ねてきた実績があります。自身が代表に就任したころから企業コラボがより活発になったと語る西村社長は、「コラボレーションが会社全体に刺激を与えられる」と、その意義を感じているといいます。
「私たちの業種は伝統産業で、基本的にひとつのものを扱う仕事です。逆に富永貿易さんは世界中のさまざまなカテゴリーの食品を扱っている。同じ食品や飲料を扱っていてもマインドや視座が異なるので、非常に刺激になります。
コラボレーションによって新しい価値を生み出せるのはもちろん、視野を広げて新しい発想を得るということにもつながっています。お互いの想いや理念に共感し合えれば、1+1=2ではなくて3にも4にもなると思います」
フルーティーな南高梅、長期熟成させた日本酒のまろやかで深みのある味わいと、さわやかに香るアールグレイティー。神戸の産業を支える2つの企業のコラボレーションによって生まれた「古酒仕込み 紅茶梅酒」は、それぞれの素材の良さを出しながらも、穏やかな調和を生み出しています。
食事やデザートと一緒に、豊かな香りと芳醇な味わいの紅茶梅酒を楽しんでみてはいかがでしょうか。
◎商品概要
- 商品名:沢の鶴「古酒仕込み 紅茶梅酒」
- 酒質:リキュール
- アルコール分:11%
- 原材料:日本酒・梅(和歌山県産南高梅100%)・糖類・紅茶/香料
- 容量:300ml
- 価格:1,280円(税抜)
(取材・文/芳賀直美)
sponsored by 沢の鶴株式会社
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