EXILEを筆頭に、多くのアーティストや俳優、アスリートなどが所属する「LDH JAPAN」。事業内容はアーティストのマネージメントや企画製作のみにとどまらず、スクール(expg)、ファッション(LDH apparel)、ジム(LDH martial artsによるEXFIGHT)など、さまざまなグループ会社が独自に展開されています。
そのなかのひとつで、飲食関連の事業を行う「LDH kitchen」が進める「LDH kitchen WALKABOUT 47. JAPAN」は、全国各地の優れた食材やその生産者、日本酒の造り手をはじめとする職人がコラボレーションして、地域の魅力を多くの人たちに知ってもらおうというプロジェクトです。
きっかけは、EXILEのリーダーであるHIROさんが、長野県知事の阿部守一さんを表敬訪問したこと。阿部知事は地域貢献活動を始めようとしていた「LDH kitchen」の話を聞き、「ぜひ、長野県の特産品をテーマにしてほしい」と要請したのだといいます。
その話は、大の日本酒好きであり、全国各地の酒蔵に足を運んでいるEXILE / EXILE THE SECONDのメンバー・橘ケンチさんのもとに届きました。そこで、橘さんが「長野の食材と地酒を組み合わせたイベントはどうか」と提案したことから、本プロジェクトはスタートしたのです。イベント第1弾では、長野県「岩清水」が登場しました。
第2弾となる今回は、伴野酒造とのコラボ。会場は、LDH kitchenの1号店「KIJIMA」です。ふだんは鍋料理を中心に提供しているお店ですが、今回のために特別なコースメニューが組まれました。
橘ケンチさんが感じた、蔵元の熱い思い
長野県佐久市にある伴野酒造。橘ケンチさんがみずから蔵へ赴き、「杜氏が酒造りに対して熱い思いをもっていた。その人間性も味のひとつだと思った」と感銘を受けたのだそう。
杜氏を務める伴野貴之さんは同蔵の6代目。貴之さんが製造責任者になってから、すべての商品に長野県産の米を使い、特定名称酒のみを醸造するなど、クオリティの高い酒造りに取り組んでいます。
東京農業大学を卒業し蔵に戻ってきた当初は、純米酒にする対する気持ちがそれほど強かったわけではなかったのだそう。しかし、造りに携わる過程で日本酒全体の売り上げが下がっている現状を知り、どうしたら良いかと考えました。その結果、ひとつひとつひとつの作業をとにかくていねいに行ない、酒質を上げることが必要だと考えたのです。
そして「地酒とは何か?」と自分に問いかけたとき、「"地元で飲むお酒"ではなく、"地元を思い出すお酒"ではないか」と思ったのだとか。地元を離れてもそれを思い出させてくれるお酒。それならば地元の米を使うべきだろうと、長野県産の米にこだわることにしました。
伴野酒造の主力銘柄は「澤の花」。蔵のある佐久市には美しい千曲川が流れています。そこに咲く"あやめの花"から命名されたこのお酒を大事にしていきたいと話してくれました。
兄妹で蔵を支える伴野酒造のお酒とともに「KIJIMA」の料理を味わいましょう。
信州食材と伴野酒造のペアリングを堪能
提供される料理には、こだわりの信州産食材を使用しています。どのように調理されて出てくるのか、期待が高まりますね。
まずは、甘酸っぱい低アルコール日本酒「Beau Michelle」の飲み比べから。
通年商品としてリリースされているタイプと、取材時点では未発売の生原酒「Beau Michelle snow fantasy in summer」の2種類が出てきました。
「良く冷えていて、シュワシュワだね」「甘くて飲みやすい」「今日みたいな暑い日にぴったり!」と、会場のあちこちで参加者の声が聞こえてきます。
先付は夏野菜のムース、ハニートマト、鞍掛豆の3品。ハニートマトには酢で伸ばした酒粕がソースとしてかけられています。
前菜5品は、信州プレミアム牛のエリンギ射込み、鰻の蒲焼、五平餅、焼き茄子、もろこし真丈。
「信州プレミアム牛」は厳しい規格をクリアした牛にのみ与えられる称号で、甘味のある脂としっとりの食感が特徴。苦味がしっかりと感じられ、後半に酸味が出てくる「澤の花 ひとつぶえり 中どり純米大吟醸」とよく合います。
魚料理・鮎のファルスは、肝と豆腐を詰めて焼いた鮎にバジルのソースが添えられた、香り高い一品。こちらに合わせるのは「澤の花 生酛特別純米」の燗酒です。
温度は55~60度ぐらいがおすすめだそう。燗酒はほとんど飲んだことがないと話していた参加者も「お燗はアルコールの香りが強い印象で苦手だったのですが、これは全然違う!」と驚いた様子。「冷たいほうが飲みやすいと思っていましたが、温めた日本酒も美味しいですね」と、新しい体験を喜んでいました。
肉料理は、信州太郎ポークのロースト。
甘味のある脂が、泡立てられたスダチですっきりと流れていきます。合わせるお酒は「澤の花 夕涼み 純米吟醸」。夏の季節商品として10年前から造っていましたが、今年はやっと満足できるものができあがったと話していました。しっかりとした酸味と若干の苦味で味が引き締められ、すっきりとした印象。夏にぴったりのお酒です。
食事は、信州サーモンの押し寿司と信州蕎麦。
しっとりとした脂でキメ細かい舌触りの信州サーモンは旨味たっぷりで、細切りの蕎麦は心地良く喉を通っていきます。お酒は、軽快ですっきりとした香りと淡麗な味わい、アルコールの刺激と苦味が特徴的な「澤の花 ささら 超辛口吟醸」。「辛口とは何だろう」という問いへの答えを表現したような一品です。
コースの最後を締めるのは、シャインマスカットの水晶寄せと「Beau Michelle bliss!」のペアリング。
橘ケンチさんは「Beau Michelle」を飲んで、伴野酒造の日本酒が好きになったのだそう。今回のお酒は、いわゆる貴醸酒と同じように、仕込み水の代わりに「Beau Michelle」を使うやり方で造られています。甘酸っぱい香りとミルキーな酸で、後味の良いお酒でした。
上品な甘味のシャインマスカットといっしょに味わうと、食事の余韻を堪能できます。
伴野酒造の印象を料理長に伺うと「飲みやすくて、すっきりとした味わいですね。女性が好みそうです。実際、参加者の方々も女性が多かったので、和食に洋のテイストを取り入れたメニューにしました」と、話していました。
「LDH kitchen WALKABOUT 47. JAPAN」の第3弾イベントは、「十六代九郎右衛門」を醸す湯川酒造店とのコラボレーションが決定しています。
今後は、日本酒にかぎらず、さまざまな職人が創り出す作品も広めていくそうで、プロジェクトの名前が表すとおり、47都道府県すべてを巡っていく予定です。これからどのようなコラボレーションが発信されていくのか、とても楽しみですね。
(文/まゆみ)