日本酒を知る

日本酒を楽しむ

日本酒を考える

特集

「本流ではない」という葛藤を越えて──長野・伴野酒造が醸す「Beau Michelle(ボー・ミッシェル)」の軌跡

> > > 「本流ではない」という葛藤を越えて──長野・伴野酒造が醸す「Beau Michelle(ボー・ミッシェル)」の軌跡
このエントリーをはてなブックマークに追加

2017年1月2日、京セラドーム大阪で人気アイドルデュオ「KinKi Kids」のコンサートが開かれました。

そのステージ上、堂本剛さんが堂本光一さんの誕生日祝いとしてプレゼントした日本酒があります。長野県佐久市の伴野酒造が醸す「Beau Michelle(ボー・ミッシェル)」です。

"食前酒に良い"、"ビートルズの音楽が流れる酒蔵で造られた"などの解説付きで手渡されたため、この話題がSNSで拡散。「Beau Michelle」を扱う酒販店に注文が殺到し、あっという間に在庫がなくなってしまいました。

ふだん日本酒を呑まない若い女性たちも口にするようになった「Beau Michelle」は、今後のさらなる飛躍を感じさせます。

「本流から外れたお酒を造っていることが恥ずかしかった」

「Beau Michelle」の前身は、1996年に発売されたお酒です。

1990年代、需要の落ち込みが続く日本酒業界では、新しい顧客層を開拓するために、それまでにないジャンルのお酒を造ろうという動きが各地で広がっていきました。アルコール度数が10度以下で、甘みと酸味の際立つお酒が次々と発売されたのです。

そんな流れのなか、伴野酒造は「Beau Michelle」の前身となる商品をリリース。"ビートルズの音楽を流しながら醸した"というキャッチフレーズがウケて、一時は人気が出ましたが、次第に低位安定の販売状況になってしまいました。

当時大学生で蔵元を継ぐ予定だった伴野貴之さん(現在は取締役と杜氏を兼任)は、百貨店の催事などで「Beau Michelle」の試飲販売を経験し、「日本酒の本流から外れたお酒を造っていることが恥ずかしかった。こういうお酒はやめたほうがいい」と思ったそう。

貴之さんは2002年に蔵へ戻り、さまざまな改革を少しずつ積み重ねていきました。

そのなかで「今のまま続けるのであれば、『Beau Michelle』はやめたい。どうしても残したいのであれば、全面的にリニューアルさせてほしい」と、父の賢一さん(現蔵元)を説得します。

そうして、ラベルデザインを日本酒と感じさせないようなものに、瓶はワインボトルを思わせる500mlに変えました。酒質についても「もったりとして田舎臭かったので、クリアで軽快な味わいを目指しました」と貴之さん。2010年のことでした。

"甘酸っぱい低アルコール日本酒"を代表する銘柄に成長

無事、リニューアルを成し遂げたにも関わらず、貴之さんは「本筋ではないお酒を熱心に売る気にはならなかったので、積極的な宣伝は控えました。しかし、うちの品揃えに『Beau Michelle』があるのを見つけてくれた酒販店からの注文が徐々に増え、ゆっくりと販売量が増えていきました」と、振り返ります。

転機が訪れたのは2015年4月。

京都の松尾大社で開かれた日本酒イベント「第2回 松尾大社 酒-1グランプリ」で「Beau Michelle」がグランプリに輝き、その様子がNHKで全国放送されたのです。

商品名を伏せて放送されたものの、蔵の法被が映り込んだことから酒販店に問い合わせが殺到。これを機に、売り上げが大きく跳ね上がったのだとか。

そして今年、再びブレーク。「Beau Michelle」は今や、"甘酸っぱい低アルコール日本酒"のジャンルで、日本を代表するブランドのひとつになっています。

貴之さんは「これからは、主力商品のひとつとして大事に扱っていきます。1年中飲んでほしいですが、真夏の暑い時期もおすすめ。キンキンに冷やして、みんなでわいわい言いながら飲んでください」と、話していました。

販売量は増えた今でも、小さな仕込みタンクを使って繰り返し造ることで、常に酒質の向上に努めている「Beau Michelle」。みなさんも、ぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか。

(取材・文/空太郎)

この記事を読んだ人はこちらの記事も読んでいます

このエントリーをはてなブックマークに追加

ライター募集中!

空太郎

日本酒指導師範(菊正宗認定)&酒伝道師です。1年365日、日本酒を飲んでいます。10人未満で丁寧にお酒を醸す銘酒小蔵がたくさん存在することが、日本酒の多様性と魅力を維持するのには欠かせないと思っています。そんな酒蔵の活動や、それを応援する酒販店や居酒屋の動きをお伝えしていきます。