名古屋の老舗酒蔵・金虎酒造と、人気の新感覚エンターテイメント「カブキカフェ ナゴヤ座」がコラボした新酒のお披露目会「虎変披露会 2019」が、9月23日(月)、秋分の日に行われました。
昼の部と夜の部の2回に行われたこの異色のコラボ企画は、各回40席のチケットの争奪戦が繰り広げられるほどの大人気のイベント。日本酒と芝居にどっぷりと魅了された当日の様子をレポートします。
名古屋を代表する酒蔵とカフェの魅惑のコラボ
170年に渡って名古屋で酒造業を営む金虎酒造は、「名古屋を醸す」という考えから名古屋のモノやコトとコラボし、さまざまな企画にチャレンジしている酒蔵です。浴衣でJAZZパーティーをしたり、チャレンジタンクで毎年違う味わいのお酒に挑戦したりと、その活動は多岐に渡ります。
そんな金虎酒造が醸す日本酒「虎変」は、2012年に”名古屋の誇れる銘酒を新たに造りたい”という、地元を愛する気持ちから生まれました。『虎の毛が美しく生え変わる様に変革を続ける日本酒に』という想いで造られ、今年の全国新酒鑑評会で4年連続金賞受賞したという話題のお酒でもあります。
「虎変」の素敵な題字は、紺綬褒章受章者でもある書家の金澤翔子さんによるもの。力強さのなかにあるしなやかさをもつ書は、お酒の持つイメージとよく合っています。
そんな金虎酒造とコラボする「カブキカフェナゴヤ座」は、2016年に名古屋の新名所として、円頓寺商店街に登場したカフェです。カフェとはいいながら、その形態は実に珍しいもの。
店内にある舞台が演じるのは、専属劇団、名古屋山三郎一座(なごやさんざぶろういちざ)。そこで金土日だけ公演される「ナゴヤカブキ」は、お芝居なのか、大衆演劇なのか、はたまた歌舞伎なのか、どのジャンルにも囚われない体験型エンターテイメントです。
イケメンぞろいなだけでなく、殺陣や口上までこなす彼らに酔いしれるファンも少なくありません。
日本酒を片手に、舞台に酔いしれる
当日は、最初にナゴヤ座の40分間のお芝居を目で楽しみ、その後に日本酒「虎変」と蕎麦をじっくり舌で楽しみます。
受付で「虎変」3本セットと金虎酒造のロゴが入った酒器を受け取り、2階の会場へと移動します。全体的に女性が多めでした、男性の参加者も姿も見受けられました。ナゴヤ座では、通常の公演で日本酒の提供はしていないそうですが、今日だけは特別。観劇しながら「虎変」をゆっくりといただくことができます。
舞台の暗転後、鮮やかなプロジェクションマッピングとカブキの口上とともに登場人物の紹介が始まり、贔屓の役者さんへの声援が響きます。
今回の演目は、白波五人男のナゴヤカブキ版「BENETEN the KID」。歌舞伎の演目「青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)」をベースにしたものです。
お芝居が始まると、舞台や花道がすぐ近くにあるため、役者の軽やかな殺陣や口上をとても近くに感じます。映像と音響が一体となり、まるで物語の中に入り込んだよう。お酒をいただきながら、おひねりを投げたり、大向こうを掛けたりしながら舞台を楽しむという、まさに体験型エンターテイメントでした。
幕間には「虎変」について解説がありました。「虎変」とナゴヤ座には、今回のコラボイベント以前から深いご縁があるそうです。
役者のひとり・名古屋参駄右衛門(なごやさんだえもん)さんは、ナゴヤ座が始まるより昔、今から6年も前から、お米の刈り取りから酵母選びまで、今の商品に至る「虎変」の酒造りを見守ってきました。名古屋への想いとチャレンジ精神という同じ志が繋いだご縁といえそうですね。
幕間後、ここぞというラストの見せ場で登場したのはなんと金虎酒造・専務の水野さん。衣装の背中に刺繍された寅が睨みを利かせるなか、「虎変」の一升瓶をしっかり掲げて、見事な口上を披露。笑いと拍手と共に会場が一段と盛り上がりました。
バッチリ決まったシャッターチャンスの後は、役者さんも観客のみなさんもそれぞれ「虎変」を手にとり乾杯という流れ。一口飲み、思わず出た感嘆があちこちから聞こえ、会場は一体感に包まれていました。
杜氏・木村さんによる「虎変」の生解説!
ここで金虎酒造・専務の水野さんが舞台に呼び寄せたのは金虎酒造・杜氏の木村さん。興奮冷めやらぬ会場で、杜氏によるお酒の解説が始まります。
今回参加者に配られた「虎変」は全部で3種類。ナゴヤ座の役者たちがラベルになった限定ものです。
「虎変 純米吟醸」(緑色)
「虎変」の中でも最初に開発されたお酒。飲みやすい日本酒を目指し、リピーターでも飲み飽きないお酒を造り上げたそうです。一口飲んでみると、さわやかな吟醸香が香ります。甘すぎずスッキリといくらでも飲めてしまいそうです。
「虎変 大吟醸」(青色)
純米吟醸にさらに飲みやすさを追求して造られたお酒。万人受け間違いなしの味わいのため、プレゼントとしてもオススメだそうです。口に含むとさわやかな甘さと軽さがあり、アペリティフとしても美味しくいただけます。
「虎変 特別純米 秋上がり」(橙色)
3種の中では一番日本酒らしさがあるお酒。夏の間に寝かせて美味しく仕上がった、季節限定の秋上がりです。少量仕込みで貴重なため、すぐに売り切れてしまうのだとか。しっかりしたパンチのある味わいなので、がっつりした濃い味の名古屋メシにあうことは間違いありません。
「夏の暑さのせいでお米の育ちが難しく、また発酵が特殊な状況でした。状況を見極めながら、毎年飲んでいただいている方にも楽しんでいただけるよう、初心を大事にしながらも『虎変』の名前の如く変化をつけました。うまく開発できたと思う自信作をお届けできてうれしいです」
「虎変」の出来について、木村杜氏はこのように話してくれました。
素材の引き立てる「虎変」の味わい
舞台後は、ナゴヤ座のお隣にある「えんそば 円頓寺店」に移動し、蕎麦と「虎変」を楽しみます。おいしそうな蕎麦を前にして参加者から歓声が上がりました。
この日は普段は流通していない貴重な「虎変 別誂袋吊り」が数量限定で用意されていました。一升瓶で1本だけの用意のため、あちこちから我先にとオーダーがかかります。その度に杜氏の木村さんがていねいに注いでいました。
このお酒は「虎変 純米吟醸」を造る過程で別で誂えた特別品。先ほど飲んだ大吟醸よりもさらに華やかな香りです。お米の甘みも少し強く感じ、スイスイと飲めてしまいました。
木村杜氏に一緒に合わせるお料理をうかがうと「別誂は繊細な味が特徴なので、同じく素材の味を楽しめる蕎麦や天ぷら、山菜の料理と相性が良いですね」とのこと。確かに、蕎麦の香りも吟醸香もどちらも一緒に楽しめて贅沢な気持ちになります。ワイングラスでいただくとより香りが引き立ちそうです。
ここで、先ほどまで舞台メイクと衣装に身を包んでいたナゴヤ座の役者の方々が、着替えを済ませて再登場。舞台とはまた違った距離でに直接お話をしながら「虎変」を楽しめるという贅沢な時間です。会の最後は、抽選会というお楽しみも。ナゴヤ座のグッズだけでなく、「虎変」が当たる抽選に参加者たちは盛り上がっていました。
(文/spool)