洋食と日本酒の出合い。近頃では日本酒を主体として提供するお店がメニューに洋風な料理を加えるなど、型にとらわれない自由な発想が増えてきて、日本酒が洋食とともに楽しまれるようになりました。

しかし、まだまだ日本酒を出す洋食店は少数派。日本酒に合いそうな料理に出会えたとしても、必ずしもその場で日本酒と楽しめるとは限りません。

そんな時こそ自分で作るべし!

今回のメニューはスペイン料理ではお馴染みのアヒージョです。このタパス(小皿料理)をバルで食べた時に、日本酒に合いそうだという予感がしました。自宅で試して以来、我が食卓ではかなりのリピート率を誇ります。

とにかく簡単。そして、食べ方の自由度が高く、具材にも好みのものを選べます。定義としてはニンニクを効かせオリーブオイルで煮込み、熱した器ごと供するということなので、そのスタイルを守っている限りはアヒージョだと言えるでしょう。

それでは、その一例を紹介します。
簡単料理なので、具材はすべて適量ということでご理解ください。

<材料一例> ※1~2人前相当

  • ホタテ(貝柱をスライスする)
  • タコ(スライスする) ※異なる食感を楽しむため頭と足を用意しました
  • 剥きエビ
  • ブラウンマッシュルーム(1/2か1/4に切る) ※良い風味に仕上げるためのマストアイテムです
  • ニンニク 2~3片(潰してぶつ切りに)
  • 鷹の爪 1本
  • オリーブオイル
  • 塩(オイル100ccに対し小さじ1/3)
  • お好みでバゲット(スライスする)

<作り方>
イ. 材料を耐熱容器に入れ、オリーブオイルを具材がひたひたになるまで注ぐ
ロ. オイル分量相当の塩を加える
ハ. オーブントースターで加熱しオイルがグツグツしてきたら頃合い

<ポイント>

  • 材料の切り方:ぶつ切りでも構いませんが、タコは特にあつあつを口に入れると食べるのに難儀します。
  • 塩の量:耐熱容器をクッキングスケールに置いてオイルを注げばその重量が分かり、必要な塩の量が算出しやすいです。計量カップ不要で洗いものが減ります。ちなみにオイル約110gで約100ccです。
  • 加熱:今回は「カスエラ」という直火可能な耐熱陶器を使い、フォンデュ用のコンロで卓上加熱しています。こうすると薄く切ったホタテをしゃぶしゃぶ風にして楽しめます。
  • 具材:好みで選んで良いですが、メインは海鮮がおすすめ。つぶ貝類も良い味を出します。また、マッシュルームの他、お好みのキノコを加えてもいいでしょう。

熱々のアヒージョを実食!

グツグツ煮えているところを撮りました(実物は動画で見せたいほど美味しそう)。

具材それぞれが、ニンニクの香りを身にまとい豊かな風味に。オイル煮ならではの、あつあつほくほくとした食感がたまりません。これは焼きものなのか揚げものなのか、そんなことを考える間もなく箸が進みます。

ここがバルならば白ワインか何か冷たいリキュールをいっしょに楽しんでいるところですが、今日の主役は日本酒。言い換えるなら、アヒージョはそのための肴です。

さて、アヒージョに合う酒選びのポイントを整理しましょう。
ニンニクを使ったことで一定のコクの深さがあること、オイルによってホタテやタコの旨みが芳醇であることなどから、ここは生酛の出番というのが第一点。

第二点はあつあつを楽しむ料理なので、じっくりと味わうというより、一定の軽快さを楽しめるタイプの酒がよさそう。

ということでチョイスしたのは・・・

オイリーな海鮮に寄り添う大七の微発泡な薄にごり

大七酒造/大七 雪しぼり 本醸造にごり酒

生酛といえば大七。多様な生酛のラインナップからお酒を選べるのがうれしいですね。酒屋には呑んでみたいものが他にもありましたが、店主との相談で今回は極めて軽やかなタイプをチョイス。微発泡の爽やかな口当たり、そして控えめながらもしっかりと伝わる甘みは、穏やかなスパークリングワインの如し。

ちょっと甘いかな?と思ったのも束の間、タコやホタテの旨みと見事に同調。一瞬でも酒屋のアドバイスを疑ったことを後悔しました。食前酒向きな印象もありますが、見事に料理と良縁です。軽やかな口当たりとはいえ、力があるなぁ。

新たな発見としてはトロッと煮上がったニンニクと実に良縁だったこと。ニンニク風味、でなく、ニンニク本体とは、より濃醇な生酛でなければという先入観はどこへやら。これが生酛の底力と思い知らされた次第。

アヒージョのもうひとつのお楽しみはこれ。具材の旨み広がるオイルを楽しむこと。これにも雪しぼりは付かず離れず程良い距離で寄り添います。

こうなると酒が進みます。雪しぼりはとにかく呑みやすいので、油断すると普段より早く「あれ?空いちゃった」ということになりそう。

(文:KOTA/編集:SAKETIMES)

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