何を肴に呑もうか。

思いつかない、あるいは迷っているなら、「旬」に献立を決めてもらうという手はいかがでしょうか。
「旬」という言葉の響きが薄れつつある現代ではありますが、魚屋に行けば何かある!まだまだ世の中捨てたものではありません。
今回は魚屋に並ぶ獲れたてのタラを使って、しみじみとした旨さを楽しんでみましょう。

野趣を感じるシンプルな海鮮料理

諸説ありますが、元来この料理は塩干のタラを塩抜きして使う漁師料理です。ここでは我が家流で調理をしたいと思います。

<材料>2人前相当

  • 生タラ切り身 2~3切れ
    重量の5%相当の塩を全体にまぶして1日置き、塩ダラを作っておく
    ※時間がない方は「甘塩」タイプを購入しそのまま使う
  • ジャガイモ 小~中サイズを2~3個
  • ネギ 1本
  • 昆布出汁(今回は700ccほど使いました)
  • 酒 70cc
  • 塩 小さじ1弱

<作り方>

イ. おつゆを作る。
・昆布出汁を取りおつゆを作る(買った昆布それぞれの説明書きを参照)
・酒70ccと塩を小さじ1弱加え(少し薄めの塩味にして)、いったん煮たてる。
ロ. タラは食べやすい大きさに切り、イモは皮を剥き10~15mmに輪切り、ネギはざく切りにする。
ハ.ロのイモを茹でておく。※イの出汁ではなく普通の水で
二. イのつゆでネギ、イモを煮る。ネギがやわらかくなったら、タラを加える。

<ポイント>

  • タラの塩分が加わるので、おつゆを薄味にしておく。味が足りなければ塩を加え調整しましょう。
  • 各具材の煮え具合をそろえるため、イモを別に茹でておく。

今回は、煮上がった材料を移して、小鍋立てで晩酌を楽しみます。

見た目は地味ですが、これが旨いんです。しみじみと。

まず、おつゆ。マイルドな昆布出汁にタラの風味がそこはかとなく相まって美味。
そして熱々のタラは、ふんわりホクホクとした食感がたまりません。「タラなんて味があるの?」と言う方もいるかもしれませんが、昆布出汁をまとったその淡い風味にこそタラの旨さを感じるのだと確信します。身を塩で漬けた分、タラの旨み成分も増しているはず。

そこにイモ。なぜタラにイモなのか分かりませんが、白菜でもなく豆腐でもなく、小鍋の保温係を一手に引き受けたような素朴な存在感にほっとします。塩味の中でイモの甘みが良く分かります。これも良縁だということでしょう。

この塩煮、飛び上がってすごく美味しい!と感嘆するほどの派手さはないけれどやはり旨いんです。箸が止まりません。これは地味でなく「滋味」と言うべきでしょうね。

洗練された出汁には麒麟山の芳醇な旨みを

昆布出汁のおつゆと強い主張がない具材は、きっと繊細な味になると予測しました。それと溶け合うような酒、ふくよかな旨みがある純米酒なら縁があるのではと考えました。が、そこへ酒屋主人のアドバイスがありました。吟醸なれど、生酒らしいふくらみとやや高めのアルコール度数が、そのニーズに応えると推してくれたのが、この1本です。

麒麟山酒造/ぽたりぽたり きりんざん(しぼりたて生原酒)

素朴な料理に似合いそうなラベルですね。

抜栓。料理と酒、互いの味わいをより引き立てるため「冷や」でいただきました。
穏やかながら、爽やかな含み香が出迎えてくれます。そして、予想以上に腰が据わった呑み応えと出合います。精米歩合が何パーセントとだとかの垣根を超えた、純米酒らしさがそこにありました。旨いです。

びっくりしたのは、おつゆを味わった余韻のあるところへ酒をひと口含んだときです。出汁の力を借りて酒の持ち味が増幅。おつゆの塩味と酒がふわりと一体化し、口の中がもろもろの旨み成分でいっぱいになりました。よく「溶け合う」という言葉を使いますが、こんなにも具体的に、分かりやすくそれを感じるとは。

さらに、タラの身をひと口いただくと、これまた旨い!酒の残り香がタラの美味しさを引き立てているのでしょう。「タラとイモの塩煮」の滋味と麒麟山の生原酒、極めて良縁です。

このシリーズの記事は、呑み食べしながら記録としてメモを取るのですが、この時はメモがもどかしいくらいに盛り上がってしまいました。

(文:KOTA/編集:SAKETIMES)

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