45都道府県の日本酒と日本でもっとも歴史のある日本酒品評会「全国新酒鑑評会」の入賞酒411点が試飲できる「日本酒フェア 2018〜世界で一番日本酒が集まる日〜」が、池袋サンシャインシティ文化会館で6月16日(土)に開催されました。北海道から九州までおよそ1000銘柄もの地酒を飲み比べできる、世界最大規模の日本酒イベントです。

同イベントは、各都道府県の酒造組合をとりまとめる日本酒造組合中央会が主催。全国津々浦々の地酒が試飲できる「全国日本酒フェア」と今年4,5月に行われた全国新酒鑑評会で入賞した日本酒をきき酒できる「平成29酒造年度全国新酒鑑評会 公開きき酒会」で構成されています。

日本酒のオールスターが集う!

「全国日本酒フェア」には、鹿児島県と沖縄県を除く45都道府県の酒造組合がブースを出展。地酒の試飲や「全国燗酒コンテスト」「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」などの有志グループによるセミナーの受講などを楽しむことができます。

ブースは東日本エリアと西日本エリアの2つに分かれ、会場で配られるオリジナルお猪口を受け取った後は、会場内を自由に回ることができます。各ブースを見ると、それぞれの県がどのように日本酒の魅力を伝えていきたいのかが、よくわかります。いくつかピックアップして、紹介しましょう。

金賞受賞数6年連続ナンバーワン「福島県」

まずは、今年の全国新酒鑑評会で、金賞受賞数6年連続ナンバーワンを達成した福島県のブースへ。輝かしい栄光の秘密を聞くと「福島県は全国でも有数の米どころ。山々から流れるきれいな水にも恵まれています。また、日本酒に関する研究機関があるのも大きい」とのことでした。

日本酒の生産量全国1位「兵庫県」

今年、福島県と同数の金賞受賞数を誇ったのが兵庫県。日本酒の生産量が全国1位で、酒米の王様「山田錦」の発祥としても知られる、日本酒の世界において特別な存在感を放つ地域です。話をうかがうと「全国的にみても、酒蔵ごとの競争が特に激しく、それぞれが独自の戦略を展開している」とのこと。

日本酒発祥の地「島根県」

日本酒誕生の歴史は約2000年前、弥生時代の"口噛みの酒"にまでさかのぼると言われています。島根県酒造組合では、日本最古の歴史書『古事記』の出雲神話に出てくるスサノオノミコトが「ヤシオリノ酒」を使ってヤマタノオロチを倒した話や、地方の歴史や文物を編纂した奈良時代の風土記『出雲風土記』に佐香神社(島根県出雲市)で神に捧げる酒を造って宴を開いたことが書かれているのを根拠に、日本酒発祥の地としてのアピールをしています。

100年以上続く、出雲杜氏や石見杜氏などの技術集団がいることや、米と水に恵まれていることから、島根県の日本酒はバリエーションが豊富。「全体的に濃醇旨口のお酒が多く、燗にするとさらに旨味が広がる」そうです。

協会9号酵母の発祥「熊本県」

熊本県といえば、焼酎のイメージが強いかもしれません。しかし、多くの酒蔵が酒造りに使用する、協会9号酵母が誕生した地でもあります。

香りの重要度が高い現代の日本酒造りにおいて、華やかな香りを多く出してくれる協会9号酵母はとても人気のある酵母。別名・熊本酵母とも呼ばれ、銘酒「香露」を造る熊本県酒造研究所が発祥です。ブースをPRしていたのは、2017, 2018年のミス日本酒で熊本県代表となった渡辺夢さんと原田ひかりさんでした。

注目の若手ユニット「秋田県」

米どころとして知られる秋田県。大自然に恵まれ、日本酒造りに適した気候ときれいな水をもつ地域で、老若男女を問わず、多くのファンがいます。「白瀑」「ゆきの美人」「春霞」「一白水成」「新政」の5酒蔵が技術交流を兼ねて共同で日本酒を醸造する有志会「NEXT5」は特に人気があります。

「2018 ミス日本酒」秋田県代表・松田きよらさんにおすすめの日本酒を聞くと、ラベンダー酵母で造られた「美郷雪華」をあげてくれました。地元のお酒らしく、実家から送ってもらうことも多いのだとか。

今年はアニメ推しの「埼玉県」

さまざまなブースがあるなかで、ひときわ異彩を放っていたのが埼玉県でした。埼玉県はアニメの舞台となった地域がとても多く、観光協会が聖地巡礼を推している背景があります。アニメ作品と日本酒のコラボも珍しくありません。

「2018 ミス日本酒」の埼玉県代表・武田紗和子さんが持っている日本酒は、埼玉県秩父市が舞台となった人気アニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のお酒です。

伝統と格式の「京都府」

銘醸地として知られる京都・伏見は「月桂冠」「英勲」など、多くの酒蔵が集中しています。「日本=京都」というイメージが世界的に根付いていることもあって、外国人観光客が多く訪れる地です。日本酒の海外輸出量が伸びている昨今では、京都産の日本酒に対する注目度も上がっています。

全国新酒鑑評会で14年連続金賞受賞という未だかつてない記録を打ち立てた齊藤酒造の、京都府の酒蔵しか使えない酒米「祝米」で造った「古都千年」をはじめとする、地元色を大事にした日本酒造りが進んでいます。

サガサケマン(?)の登場も!「佐賀県」

九州の酒処として知られる佐賀県。今年3月、表参道に期間限定でオープンした、桜を愛でながら佐賀県の日本酒を楽しめる「SAKURA CHILL BAR by 佐賀ん酒」など、今までになかった新しいPRでも注目されています。

話を聞いてみると、酒造組合の青年会が活発に動いて、次々と斬新な企画を進めているそうです。現在は、昨年誕生した酒造組合のゆるキャラ・サガサケマンをプッシュしているとのこと。とにかく新しい!

有志団体のブースも充実!

酒造組合のブース以外でも、シャンパンやスパークリングワインと並ぶ"世界基準の乾杯酒"を目指す「awa酒協会」や、熟成古酒を広める活動をしている「長期熟成酒研究会」など、有志団体の出展が見られました。

また、加藤忠一さんの酒蔵探訪スケッチも展示されていました。

ふだん飲めない出品酒を、存分に堪能!

「平成29酒造年度全国新酒鑑評会 公開きき酒会」では、金賞を含む入賞酒をきき酒することができます。新酒の全国コンクールである全国新酒鑑評会には、レギュラー販売されている商品とは異なる、少量仕込みのお酒が出品されています。

公開きき酒会の会場は、各都道府県を大きくまとめたいくつか地方エリアに分かれ、どのエリアにも長蛇の列ができていました。

例えるならば、自動車メーカーによるF1レースのようなもの。「美味すぎる......!」と思わず口から漏れてしまうほど、興奮しながら試飲しているお客さんの姿が多く見られました。

パンフレットを持ちながら、ひとつひとつの出品酒を味わう参加者の顔は真剣そのもの。質問コーナーも用意されているため、専門的な知識についても話を聞くことができます。

「日本酒フェア」では、その年の日本酒トレンドや、各都道府県のPR戦略、燗酒やワイングラスなどの新しい日本酒の楽しみ方を知ることができます。「今の日本酒のすべてがここにある」と言っても良いのかもしれません。今年参加できなかった方々も、来年の開催を楽しみに待ちましょう。

(文/乃木章)

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