東京都東村山市にある豊島屋酒造で毎年開催される「豊島屋フェスタ」。多くの酒蔵で開催されるファンとの交流イベント「蔵開き」を、独自の試行錯誤が凝らされたプログラムで進化させたもので、今年で4回目を迎えました。
たくさんの人が訪れ大盛況だったイベントの様子をレポートします。
蔵開きといえば、まずは試飲!
蔵開きで一番うれしいことといえば、大好きなお酒が造られているその場所で、雰囲気を味わいながらお酒を楽しめることではないでしょうか。受付を済ませたら、まずは試飲。豊島屋フェスタの今年のラインナップは以下の5種類でした。
- 亀口無濾過生原酒
- 無濾過しぼりたて生原酒
- 活性にごり酒
- フェスタ限定仕込
- 純米無濾過原酒「豊島屋十右衛門」
試飲会場は3つのブースに分かれていて、道順に沿って歩くと酒蔵内も見学できます。
酒蔵内は凛とした空気に包まれ、暗い場所に陽が射し込んでくる美しい情景も楽しめます。仕込みタンクには酒造りの写真が展示されていて、造りの一場面も垣間見ることができました。
醸造所の中で試飲できるブースもあり、その厳かな雰囲気からお酒の味わいも心に深く沁み入りました。
美味しいフードも目白押し
たくさんの人だかりの向こうに、もくもくと上がる煙と一面に広がる芳ばしい香り。出来たてのおつまみとお酒を存分に味わえるのもこのイベントの醍醐味です。
「久米川 絹-kinu-」が提供するのは、豊島屋酒造の銘柄のひとつ「屋守」の酒粕で漬けた鶏モモの炭火焼き。パリッと焼かれた鶏肉からジューシーな旨みが溢れ出てくる逸品でした。
五反田にある人気店「SAKE story」からは、名物のすき焼きコロッケ。大人気のため、お昼を過ぎると売り切れていました。東村山市から離れたお店の名物が味わえることも、このイベントの楽しい点です。
東村山市のうどん屋「手打ちうどん こげら」からは、きつねうどんが振舞われました。普段から、豊島屋酒造の仕込水を出汁に使っているのだそう。太くてもちもちの特徴的な麺は、クセになる食感でした。
美味しい酒に、絶品ぞろいのつまみ。豊島屋フェスタでは、とても贅沢な時間を過ごすことができるのです。
今年の新顔プログラム!和物ブース「トシマヤ亭」
今年は、室内で行う参加型の催しが一新。落語とテーブル茶道が開かれました。
登壇したのは、東村山市出身の三遊亭兼太郎さん。サラリーマン、介護士、空調清掃などの職を経て、落語家になられたのだそう。酒蔵で噺を聞く、とても貴重な体験でした。
続いて、テーブル茶道です。実は茶道と日本酒には深い関わりがあります。茶事(食事や濃茶、薄茶などでお客様をもてなす正式な茶会)の中では、懐石料理と日本酒の組み合わせは欠かせないものなのです。
今回は、正座ではなく気軽に参加できるテーブル茶道を体験しました。先生を務めるのは「有結-AYU-テーブル茶道教室」の代表の神林裕子さん。茶道についての説明を聞いたあと、日本酒、お菓子、そして抹茶という流れで体験しました。
提供された日本酒は、直汲み純米無濾過原酒 「十右衛門」。ガス感があり、フレッシュですっきりきれいな味わいで非常に美味しいお酒でした。
お菓子は純米大吟醸「利他」と稀少糖・素焚糖を使用した神田豊島屋限定品「利他酒饅頭」。餡のやさしい甘味としっとりとした皮の食感が楽しめました。
お茶というと緊張してしまいがちですが、小さな子どもも一緒に参加できるほど気楽に体験することができました。
「ステージまちジャム」も大盛りあがり!
野外にあるステージでは、ライブや乾杯の記念撮影などが行われました。
和楽器による演奏を行う「切腹ピストルズ」の出演時間には、ステージ前に大勢の観客が集結。演者も掛け声を上げながらステージから降りて会場を練り歩き、リズムと日本酒に酔いしれて会場のテンションは最高潮に達しました。
続いて、豊島屋酒造の社長である田中忠行さん、2017年ミス日本酒東京都代表の加藤香さんによる乾杯。
記念撮影には、ご当地キャラの「ひがっしー」も登場。ひがっしーは、けやきの妖精でツンツンした髪型がチャームポイントです。階段を上るのに一苦労する場面もありながら、無事にステージに上がった時には、会場に笑顔があふれていました。
来場者全員にオリジナルグラスをプレゼント
昨年までオリジナルグラスは販売していましたが、今年はなんと来場者にプレゼントする大盤振る舞い。デザインは今年限りのもので、スタッフも同じデザインのTシャツやパーカーを着用していました。
お時間のある方は、来年はぜひボランティアスタッフとして参加してみてはいかがでしょうか。Tシャツが貰えるだけでなく、ひと味もふた味も違う体験ができること間違いなしです。
毎年、子どもにも人気のあるシネマブースやグッズ販売は、今年も引き続きの大人気。
会場内で唯一、人気銘柄「屋守 純米中取り直汲み生」が販売されているクラブブースでは、ライムスターのDJ兼プロデューサーをつとめるDJ JINさんなど著名なプレイヤーも登場し、多くの人で賑わっていました。
日本酒ファンを増やすためにさらなる進化を目指す
今年の来場者は1,572名。その中でもっとも多かった世代は、40代男性なのだそうです。しかし、会場を見る限り、女性や家族連れのグループ客の姿も多くみられました。
営業部長の田中考治さんに、豊島屋フェスタの狙いをうかがったところ、「日本酒イベントは限られた層に対してのアプローチに偏りがちなので、いろいろなコンテンツを入れ幅広く仕掛けていきたい」と思いを語っていただきました。この新たな取り組みの結果として、参加者の年齢層が下がり、特に女性の参加が増えたことを実感できているそうです。
来年の抱負としては、「まだまだ20~30代へのアプローチが弱く、この年齢層への拡充を狙っています。まだ漠然としてますが、東京の酒蔵らしく尖って行きたいですね」という力強い言葉をいただきました。
毎年進化し続け、今年はどんなイベントになるのだろうとワクワクさせてくれる「豊島屋フェスタ」。来年の開催も、今から楽しみです。
(文/三浦環)