名鉄名古屋駅から空港特急「ミュースカイ」で30分。国内外問わず多くの方が利用する中部国際空港 セントレアは、2020年に開港15周年を迎え、さまざまな新しい試みを始めています。
そのひとつが「空乃酒蔵(そらのさかぐら)」。国内の空港内にある免税店として初の日本のお酒専門店です。今回は、オープニングイベントの様子を交えてレポートします。
国際線出発制限エリアにある酒販店
「空乃酒蔵」がオープンしたのは、中部国際空港セントレアの第1ターミナル、国際線出発制限エリア内。20番ゲートの近くに位置する空乃酒蔵は、遠くから見てもよくわかるように大きな杉玉が飾られています。
世界的に関心が高まりつつある日本酒はもちろんのこと、日本全国のリキュール、焼酎、お酒にまつわる商品を免税価格で購入することができます。
国際線の出発制限エリア内に位置しているため、日本在住の方は海外への出発時しか来店できませんが、海外へのお土産用のお酒を空港で、しかも免税価格で購入することができます。この規模の酒免税店は国内でも初めてのことで、セントレアの力の入れようが感じられます。
ITを活用したスムーズな接客
取り扱うお酒は、日本全国から約120銘柄。東海地方を軸に厳選された日本酒のラインナップも、ファンにはたまらないものばかりです。
仕入れを担当する中部国際空港旅客サービスの森崎さんに、仕入れのポイントについてお話をうかがいました。
─ 約120銘柄、200種が並ぶと圧巻ですね。どのような考え方で選んでいるのですか?
「セントレアのある東海3県をはじめ、富山や石川、岐阜などのお酒もそろえています。愛知から岐阜を通って北陸へ抜ける、南北を縦断する観光ルート『昇龍道(しょうりゅうどう)』というものがあるのですが、その昇龍道にある酒蔵を中心としながら、幅広く取り揃えました。
インバウンド需要も考えながら、インスタ映えするようなボトルや、地方でしか手に入りにくいお酒も取り揃えています。日本酒だけを考えると、約4割が東海3県の銘柄ですね。今後はお客様の反応を見ながらラインナップを見直していきたいと思っています」
─ 地元のお酒がたくさん販売されていると、旅行帰りの方や海外出張先へのお土産などの需要が多そうですね。実際に、お客様はどんな方が多いのですか?
「現状は国内と海外のお客様が半々くらいです。国内のお客様はご自身のお気に入り銘柄や出身地のお酒をプレゼントとしてご購入される方が多いですね。それもあって全国各地のお酒を仕入れています。
海外のお客様の大半は、中国と香港の方々で、アルコール度数が高い日本酒が好まれます。また、純米大吟醸の中でも高価格帯の華やかな香りを楽しめる日本酒や、しっかり熟成された梅酒がよく売れる印象です」
このお話をうかがっている間も、中国からのお客様が出国前の最後の買い物として、たくさんのお酒を買い求めている姿が見受けられました。
─ 海外のお客様が多いですが、店員さんはスムーズに応対されていますね。何か工夫があるのでしょうか?
「中国人のお客様が多いので、中国行きの便が出発する前には、中国語が話せるスタッフを配置しています。また、電子ディスプレイでさまざまな言語で日本酒についての情報を随時発信しつつ、個々のお酒にはQRコードをつけました。QRコードを読み取るだけで、6つの言語(日本語、英語、繁体字、簡体字、韓国語、タイ語)でそのお酒についての情報がわかるようになっています。
この仕組みのおかげで接客時に困った場合もスマホでも対応出来ますし、何よりお客様が帰国後に日本酒を楽しむときに、温度、酒器、お料理とのマリアージュなど参考になる情報をご自身で確認することができます」
─ 素晴らしいですね!ネット上の情報ならSNSを使ってシェアするのもやりやすそうですね。
「そうなんです。空乃酒蔵でお酒を選ぶ時だけでなく、ご自宅に帰って家族と楽しむ時やお土産として恋人やご友人にお渡しする際にも、実際に飲む段階で気になる情報がすぐわかるので、ご活用いただきやすいと思います」
空乃酒蔵はどんなお客様でも、日本酒をより幅広く楽しめるように考えた、おもてなしが随所に溢れていました。
日本酒以外のおみやげも充実
空乃酒蔵には、さまざまなお酒を楽しむアイテムも販売されています。
日本でも人気なお酒のおとも「缶つま倶楽部」シリーズ。国際線の制限エリアでも持ち出しやすいことを考慮して選んだそうです。スーパーの店頭ではなかなかお目にかからない、高級缶つまのラインナップにも注目です。
日本酒のペアリングを楽しめるようにと酒器も販売。味わいの違いを試せる形違いの酒器セットや、お燗酒用のちろりもありました。
普段は酒蔵に行かないと買えないグッズも販売されています。この日も海外航空会社のキャプテンが「妻へのお土産に良さそう」と銘柄がデザインされた前掛けを購入されていました。出張や旅行のお土産に悩んだときは、日本酒と合わせて選ぶのも良さそうですね。
「Miss SAKE(ミス日本酒)」が華を添えたオープニングイベント
2020年1月24日(金)に行われたオープニングイベントでは、東海3県代表を中心としたMiss SAKEが来場し、セントレアフレンズ「謎の旅人フー」と一緒に、艶やかな振袖姿で空乃酒蔵限定の日本酒を振る舞いました。
振舞われたのは、東海3県の酒蔵とともにセントレアが開発した3種類のセントレア限定酒「空乃酒蔵」です。
「國盛」で有名な愛知県・中埜酒造の純米吟醸酒、「四ツ星」で有名な岐阜県・舩坂酒造店による大吟醸酒、「半蔵」で有名な三重県・大田酒造による純米大吟醸酒。それぞれ、空乃酒蔵でしか買えない各1,000本の限定販売品です。
いずれもその土地で有名な酒米を使っていて、料理にも合わせやすいお酒。いただいてみると、味わいは各酒蔵の良さが出ていながら、全体的に華やかな香りを感じます。
クセがなく飲みやすく感じるため、外国人のお客様にも好評で、ワイングラスで香りを楽しみながら飲むのがオススメだそうです。
また、外箱は昇龍道を意識した昇り龍が睨みを聞かせているオシャレなパッケージで、中国では縁起が良いと言われる龍のデザインに、中国からのお客様も興味津々でした。
お客様へ日本酒をオススメされていた「Miss SAKE 2020 愛知」の髙田百子さんにお話をうかがいました。
─ 空乃酒蔵で試飲販売を体験してみていかがでしたか?
「空港の中、それも制限エリア内に設けられた空乃酒蔵にまずは驚いていたお客様も多くいらっしゃいました。私たち、Miss SAKEは日本酒と日本文化のアンバサダーとして、日本酒に対しての知識や経験を積むべく研鑽に励んでおりますが、実際に日本酒を楽しまれるお客様と直にお話しさせていただくことで、新たな日本酒の魅力に気づくことができました。
今まで日本酒を飲んだことがない方も、こうした試飲を通じて日本酒の印象が変わったり、蔵元さんと直接お話をすることでストーリーに引き込まれたりする様子を見て、さらなる日本酒の可能性を知れた貴重な機会でした」
─ 海外のお客様も多かったかと思いますが、どのようにコミュニケーションされましたか。日本のお客様との違いを何か感じましたか?
「中国からのお客様が多く、なかなか言語を通じたコミュニケーションは難しかったのですが、QRコードや日本酒のラベルを見せることでお話ができて良かったです。お客様の中には事前に買いたいものを調べており、写真をお持ちになるお客様もいらっしゃいましたので、昨今はSNSを通じた情報発信の重要性を再認識しました」
意外なことに日本人のお客様よりも、特定名称や生産地にこだわりのあるお客様が多かったとのこと。これは中国国内で流通している日本酒の多くが、純米大吟醸酒であることに起因するようです。
「海外のお客様にご紹介する際は、そのお客様の文化的な背景や嗜好も踏まえてご提案し、日本が誇るものづくりの代表でもある日本酒のさまざまな魅力をお伝えしていきたいと思います」と髙田さん。グローバルな視点を持ちながら日本酒・日本文化を伝えていくMiss SAKEとして、とても頼もしく感じました。
多くのお客様で盛り上がるこの試飲コーナーは、毎週、異なる酒蔵が登場するそうです。
空乃酒蔵の開店は、朝7時から。旅の前に酒蔵のお話をうかがいがら試飲をしつつ、お土産を決めるのも楽しそうですね。中部国際空港セントレアから海外へご出発の際には、ちょっと早めにチェックインして、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
(文/spool)