仕込み水は白神山地の湧水

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尾崎酒造は、青森県の西海岸部にある唯一の酒蔵。創業は1860年(万延元年)です。世界自然遺産・白神山地の麓にある、人口1万人ほどの鰺ヶ沢(あじがさわ)町に蔵があります。

鰺ヶ沢町は、日本海や白神山地などの自然に恵まれた土地。尾崎酒造の仕込み水は、蔵の裏手にある山から湧き出ている白神山地の伏流水を使っています。また、酒米や酵母などについても、基本的に青森県産のものを使用。できあがるお酒は酸度が少なく、きれいでスッキリとした味わいが特徴です。

主要銘柄は「安東水軍」と、俳優の故・森重久彌さんが名付け親である「神の座」です。また、同酒蔵は日本遺産「北前船寄港地・船主集落」のひとつとして、2017年4月に認定されています。

中世に栄えた「安東水軍」を名前に冠する

鰺ヶ沢町の海の写真

今回、紹介する銘柄「安東水軍」は1988年(昭和63年)に純米酒として発表されました。今では、県外の日本酒ファンにも愛される、同蔵を代表する銘柄になっています。ちなみに「安東水軍」とは、十三湊(とさみなと)で栄えた豪族・安東氏の率いた船軍を指す言葉です。

安東氏は、唐に工師を派遣し、操船や造船技術を習得。大船を建造した後に一大勢力「安東水軍」を率い、拠点である十三湊を海賊などから護るとともに、日本や海外の各地と交易を結び、巨大な利益を得ました。安東氏の活動によって、博多や堺と並ぶ日本有数の国際貿易港として同地が繁栄したといわれています。

当時、十三湊は東日本最大の都市を形成していたのだそう。鎌倉時代から室町時代に栄えた土地の誇りを、尾崎酒造は銘柄名に込めているのです。

甘口ながらキレが良い、上質な純米大吟醸

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この純米大吟醸酒は、青森県産米をメインに使う同蔵としては珍しく、山形県産の「出羽燦々」を使用。オレンジの下地に銀色で「安東水軍」と書かれたラベルは、シンプルながらインパクトがあります。イソアミル系のバナナやメロンを思わせる甘い香りが印象的です。

口に含むと、バナナやメロンを思わせるきれいな甘味が感じられます。酸味はあまりなく、甘味が中心。後口の渋味がアクセントとなって、しっかりとキレていきます。

甘味が強いものの、メリハリがあってキレも良いので飲みやすい一品です。35~40度くらいの燗にすると上質な甘味が強調されます。冷やしてグラスで飲むのも良いでしょう。

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