戦国時代末期に創業した老舗蔵

茨城県結城市は栃木県との県境に位置しています。鎌倉時代以降にこの地を統治した結城氏が城下町をつくり、その面影が今も残る、歴史のある町です。そこで日本酒を醸している結城酒造の創業も古く、創業は1594年(文禄3年)の戦国時代末期という老舗。かの有名な豊臣秀吉が朝鮮出兵をしていた時期ですから、途方もない昔ですね。

結ゆい あかいわおまち の写真

近江商人の近江屋久右衛門氏が創業したといわれ、現在は37代目。江戸末期から残る酒蔵と明治期に造られた大きなレンガ造りの煙突は、国の登録有形文化財に指定されています。

女性杜氏が醸す人気銘柄

創業当初の屋号は「近江屋」で、長らく結城藩の御用蔵だったようです。主要銘柄「富久福(ふくふく)」は江戸末期か明治初期に名付けられたそうですが、近年、首都圏を中心に人気を博しているのは「結(むすび)ゆい」というブランド。蔵元の息子である浦里昌明さんと結婚し蔵に入った美智子さんが一念発起し、醸造責任者として醸したお酒です。

茨城県結城市で日本酒を醸す 結ゆいのあかいわおまちを使用した お酒のボトルの写真

酒蔵の娘でもなく、酒造りを学んだこともなかった美智子さんは、茨城県工業技術センターで研修を受けて、平成24醸造年度(24BY)から酒造りを行うようになりました。その後、メキメキと実力を上げて、「結ゆい」は首都圏などで人気銘柄のひとつに。また、昨年度から2年連続で、全国新酒鑑評会の金賞を受賞しています。

赤磐雄町を使用したインパクト抜群の一品

「結ゆい」のラベルは地元の書家がデザインしたのだそう。地元の名産・結城紬の糸でつくられた輪におめでたい「吉」の文字が入る個性的なものです。今回紹介する特別純米酒に使う酒米は、同ブランドを象徴する「雄町」。さらに、そのなかでも最高級とされる、岡山県産の赤磐雄町を使って醸されています。この赤磐雄町も、女性農家が育てたもの。米づくりから酒造りまで、女性が担当したお酒なのです。

茨城県結城市で日本酒を醸す 結ゆいのあかいわおまちを使用した お酒のボトルの写真

開栓すると、フレッシュな麹の香りや、ライチや完熟のイチゴを想起させる華やかな果実香が鼻をくすぐります。口に含むと、ピチピチのガス感に加え、芳醇なイチゴに少しの練乳をかけたような旨味が口いっぱいに広がります。雄町らしい、心地良いコクも相まって、インパクトのある味わいです。含み香もジューシーな完熟のイチゴを思わせるもので、フレッシュな旨味が口の中で踊り、後口はスッとキレていきます。

しっかりと冷やし、食前や食後酒としてワイングラスで飲むのがおすすめ。ウォッシュタイプのチーズと相性が良いでしょう。ロックにすると、酸味やフルーティーさが強調されます。楽しみ方の幅広いお酒です。

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