フランス人による日本酒コンクール「Kura Master」 がフランス・パリで始まったのは2017年。フランスにおいて認知度が高まりつつある、日本酒の欧州普及と地位向上を目的としています。

第3回目となる2019年は、5月27日(月)に開催が決定。その要綱について、初となる記者発表会が、1月21日(月)に神楽坂にあるフランス語教育機関「アンスティチュ・フランセ東京」で開催されました。

新たにスパークリング部門が設立

「Kura Master」審査員の方の写真

「Kura Master」審査員のみなさん(左から3番目が審査委員長のグザビエ・チュイザ氏)

審査委員長グザビエ・チュイザ氏から、同席した審査員のフランストップのソムリエ4人とソムリエジャーナリストの紹介があり、続けて当日より開始された2019年の出品酒のエントリー概要が発表されました。

過去2回の審査カテゴリーは、純米大吟醸酒・純米吟醸酒部門(精米歩合60%以下)と純米酒部門(精米歩合60%を超える)、にごり酒部門の3つでした。

2019年からは純米大吟醸酒部門(精米歩合50%以下)と純米酒部門(精米歩合50%を超える)に変わり、純米大吟醸酒の存在をより際立たせる審査内容になりました。また、にごり酒部門は廃止され、新たに2つのスパークリング部門(ソフト部門・スタンダード部門)が設置され、審査は計4カテゴリーで行われることになりました。

awa酒協会理事長の永井則吉氏

awa酒協会理事長・永井則吉氏

awa酒協会理事長であり、永井酒造社長の永井則吉氏は「日本はシャンパーニュの輸入が世界第3位で、2017年には約1,300万本を輸入していたのに対し、awa酒協会に加盟する15の蔵元によるスパークリング酒の年間生産量は10万本と、その差は歴然。スパークリング部門の新設によりフランスのプロによる評価がされ、世界に認められることに期待を寄せる」と述べました。

「Kura Master」が目指すもの

続いて審査委員長であるグザビエ・チュイザ氏が、日本酒に寄せる思いと、3年目を迎える「Kura Master」の意義や目標について話しました。

「Kura Master」審査委員長グザビエ・チュイザ氏

グザビエ・チュイザ氏はパリの五つ星ホテルのシェフ・ソムリエを歴任。日本酒をセレクトするプロジェクトで大きな役割を果たしたことをきっかけとして、フランスで日本酒を普及させるため2017年に「Kura Master」を立ち上げました。

「『Kura Master』で重要なのは、その日本酒の評価で消費者に信頼を与えること。日本酒がEUへ受け入れられることも考え、審査員は優れた現役のソムリエや、ワイン専門店のプロを揃えました。特に新設されたスパークリング部門は、スパークリング専門の審査員が評価をする予定です。審査員数も、前回の2倍以上となる200人に増員することを目指しています」

「Kura Master」記者発表会のポスター

さらに、フランスにおける日本酒の可能性と、今後の展望についての見解を述べました。

「スパークリングに注目することで、日本酒を飲み慣れていない層や、女性層への市場拡大を目指しています。また、審査員がトップソムリエだけでは顧客層の関心が高級酒に偏るおそれがあるため、ワイン市場を実質的に支えているビストロやワインバーのソムリエも増やす予定です」

これは日本酒がワインバーなどで食前酒として民主化されることをねらいとしています。2019年のコンクールの新しい照準により、フランスの食文化への日本酒の浸透を目指しているそうです。

「Kura Master」審査委員長グザビエ・チュイザ氏

「海外の酒であっても、その国の料理と合うものを探すことはソムリエの仕事であり、日本酒がフランス料理や西洋料理に合うことを伝えられるのはソムリエだけ。そのため、レストランのリストに載せるものは、ワインと同様に個性がしっかりした日本酒でなくてはならない。売る側も、生産地や精米歩合など特徴をきちんと理解する必要があります」と話し、ソムリエだからこそ伝えられることがあると強調しました。

最後に、「海外で外国人が日本酒を買う時に困るのは、欲しい情報がなかなか得られないこと。しかし、健康志向や品質重視を高いレベルで要求される近年のフランス料理に対し、白ワインに対抗する食中酒として日本酒には限りないポテンシャルが秘められている」と蔵元へのメッセージを送りました。

「Kura Master」の出品酒

2017年の初開催での出品数は550点、2018年には650点でしたが、2019年には800~900点に増やす計画で「Kura Master」の存在感を強化していくそうです。

乾杯酒として世界で名高いシャンパンが有名なフランスにおいて、日本酒のスパークリングを世界の乾杯酒にすることを目指す。この目標は永井氏や蔵元だけのものではなく、グザビエ・チュイザ氏のものでもあることがひしひしと伝わってくる発表会でした。

◎第3回「Kura Master」概要

  • エントリー期間:1月21日(月)〜2月28日(木)
  • 出品酒受付日:3月11日(月)
  • 審査会:5月27日(月)
  • 受賞酒発表:6月5日(水)
  • 授賞式:7月9日(火)
  • 対象カテゴリー:
    ・純米大吟醸酒部門(50%以下の精米歩合)
    ・純米酒部門(50%を超える精米歩合)
    ・サケ スパークリング スタンダード部門(アルコール度数は10度以上。純米酒であること。生酒のエントリー不可)
    ・サケ スパークリング ソフト部門(アルコール度数は10度未満。純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒、吟醸酒、大吟醸酒を含む。生酒のエントリー可)
  • 1社から各部門3点、合計12銘柄までとする

(文/中大路えりか)

この記事を読んだ人はこちらの記事も読んでいます