ベルリンやフランクフルト、ミュンヘンなどの大都市を中心に日本酒が浸透してきているドイツ。ユネスコ無形文化遺産に登録された和食に比べるとまだまだこれからではありますが、特に日本ファンという方でなくとも、もともとビールやワインなどの醸造酒をよく飲む文化のあるドイツでは受け入れられやすいようです。
「ドイツといえばビール」とイメージしがちですが、実はワインの名産地であることもご存知でしょうか。日本では生産量の多いイタリア・フランス・スペインのワインをよく目にしますが、ドイツには世界最大級のワインフェストもあるのです。その歴史はなんと1417年に遡り、ビールで有名なオクトーバーフェストよりも歴史が古いのだとか。
そんなドイツ人ですから、「この人はソムリエなの?」と思ってしまうほどワインに詳しい人が多いのです。しかも、ただ詳しいだけでなく、自分の好みを追求してお気に入りのワインを見つけることに全霊を捧げます。その探究心はワインだけにはとどまらず日本酒にも向けられています。そこで人気が出始めたのが日本酒テイスティングです。
ドイツのワイン街道のほぼ中心に位置するノイシュタット(Neustadt)にあるレストランが日本酒テイスティングを始めたというので、ご紹介します。
1軒目 ワインとフラムクーヘンの専門レストラン バックブレッヒ(Backblech)
こちらのお店は、ドイツではワインに合わせてよく食されるフラムクーヘンのレストラン。フラムクーヘンとはピザに似た料理で、ビザのトマトソースの代わりにサワークリームに近い少し酸味のあるソースが塗られています。その上に玉ねぎとベーコンがのせられているのが一番オーソドックスなスタイル。ドイツではほとんどの郷土レストランで注文できます。
日本酒の瓶が並ぶだけでまるで日本の居酒屋のようですね。今回は日本酒が大好きなソムリエの方がテイスティングを主催されました。各銘柄のドイツ語で説明されたレジュメが配られ、日本酒に詳しくない参加者のみなさんも大満足。ワインと同じ醸造酒でも、発酵方法が異なる点や、日本文化と日本酒のかかわりについても興味深い様子でした。フラムクーヘンといっしょに写っている日本酒は信州銘醸の「瀧澤 純米吟醸」。幅広いお料理に合う純米吟醸だけあって参加者のみなさんからも好評でした。
全8種類の日本酒をテイスティングしたみなさんですが、やはりワインにこだわる方ということで、飲みやすさだけにとらわれず、見事に好みが分かれました。また、みなさんが驚いていたのは、ワインに比べて酸味が少なくどれもまろやかに感じること。ワイン以外の開拓の余地ができたことが、本当に嬉しかったよう。 この後、日本酒に合うおつまみもほしいとリクエストがあり、次回は和食と合わせたテイスティングが企画されているそうです。
2軒目 ヴァイクさんのレストラン&ワイン専門店(Weik’s Restaurant und Vinothek)
なんと趣のあるたたずまい。こちらで開催された日本酒テイスティングに集まったのは全員がワインのエキスパート。日本酒を提供したソムリエの方も少し緊張したそうですが、ネガティブな反応がなく、みなさんが日本酒を気に入ってくれて良かったとおっしゃっていました。
ヨーロッパ最大級の日本庭園でも日本酒の試飲会が開催!
カイザースラウテルン(Kaiserslautern)という街にあるヨーロッパ最大級の日本庭園で行われたイベントでも日本酒の試飲ブースが設置されました。
ひとりでも多くの方に日本酒を知ってもらえるよう試飲価格はリーズナブルで、丁寧な説明付きでした。このように現地で日本酒の魅力を一生懸命伝えようとする人たちが少しずつ増えていけば、日本酒がドイツのスーパーに並ぶ日もそう遠くないのかもしれません。
(文/フロメル麗奈)
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