しとしとしと・・・雨の中、あじさいが咲き誇る季節になりました。こんなシーズンは、あじさいを愛でながら、雨音に耳を傾けながら、美味しい日本酒をじっくり味わってみませんか。今回は、梅雨模様の日にこそ呑みたいお酒をご紹介します。
蔵しぼり生酒 雨のしらべ 純米吟醸(株式会社 福光屋/石川県金沢市)
モダンな装いの「雨のしらべ」は、福光屋が醸した純米吟醸です。福光屋は、1625年創業、食文化の高さでも知られる金沢の地で長く愛され続けている酒蔵。現在は、純米酒だけを醸す「純米蔵」として知られています。
開栓すると、甘味・酸味を含んだ吟醸香の中に、生酒らしい青竹のようなフレッシュな香りが漂いつつ、白玉粉のようなふくよかさも感じられます。
口当たりはなめらか、赤く蜜の詰まったリンゴというよりは青リンゴのような、甘味と酸味のバランスがよいお酒です。まるで音域の広いメロディーのように、口の中でさまざまな味わいを見せてくれます。
- 原材料:米・米麹
- 原材米:五百万石(石川県産)
- 精米分合:55%
- アルコール分:16度
- 日本酒度:+9
- 酸度:1.6
- アミノ酸度:1.3
純米吟醸 奏雨 (真名鶴酒造/福井県大野市)
絹糸のような雨を思わせる素材に、鉛筆で描かれたような「奏雨」の文字。
「奏雨」を醸しているのは、真名鶴酒造。福井県の越前大野で1750年代から続く老舗の酒蔵です。1985年に「名水百選」に選定された「御清水(おしょうず)」と呼ばれる名水に恵まれ、すべての銘柄を吟醸規格で醸している酒蔵です。
「雨が奏でる音色のような、甘やかで爽やかなお酒です」と真名鶴酒造のオンラインショップで説明されている通り、香りは爽やかで、梅のような酸味が感じられます。口に含むと、酸味の中にも甘さが感じられ、木になっている梅を連想するような味わいです。まさに、梅雨どきにぴったりのお酒ではないでしょうか。
- 原材料名:米(国産)・米麹(国産米)
- アルコール分:13度
- 精米歩合:50%
やまとしずく 純米酒 夏のヤマト(秋田清酒株式会社/秋田県大仙市)
ピチョン!雨粒がボトルの上に落ちてきたかのような、印象的なラベル。ファンの間では「ヘト」とも呼ばれているそうですが、秋田清酒株式会社の出羽鶴酒造が醸す人気のお酒、「やまとしずく」の夏酒です。
「やまとしずく」の「やまと」は、出羽鶴酒造の創業者・伊藤家の屋号「ヤマト」にちなんでいます。出羽鶴酒造は、十数年前から純米酒を中心にした酒造りに切り替えており、中でも「やまとしずく」は、地元で栽培した酒造好適米を原料にすることにこだわっているそうです。
こだわりの造りでありながら、ルックスは親しみやすく爽やかです。清涼感あふれる印象は、見た目だけではありません。爽やかな香気は、砂糖水のように甘やか。サイダーを彷彿させるやさしい甘みが喉を通り抜け、身体にすっと染み込んでいきます。
じとじとと蒸し暑い日の晩酌にいかがでしょう。キリッと冷やして呑めば、気分も爽やかになれそうです。
- 原材料名:米(国産)・米こうじ(国産米)
- 精米歩合:60%
- アルコール分:16度
上善如水 純米 原酒(白瀧酒造株式会社/新潟県南魚沼郡)
「上善如水」で広く知られる白瀧酒造株式会社。酒造りの始まりは、安政2年(1855年)に遡ります。新潟県南魚沼郡湯沢町で、旅人・行商人を相手に酒を提供することから始まったそうです。旅人相手のおもてなしの気持ちに由来しているのでしょうか、1年を通じて12種類のお酒を提供する「12ヶ月の上善如水」シリーズでは、個性的なボトルが目を楽しませてくれます。
「上善如水 純米原酒」も同シリーズの「水無月(6月)のお酒」に位置付けられています。ぽってりと丸いフォルムが可愛らしく、ボトルの色は涼しげでありながらグレードの高さも感じさせます。
味わいもやや個性的です。上立ち香は米麹の香りが優勢。ヨーグルトのような酸の中に、水アメを思わせる甘さと、レモングラスのような爽やかで若々しい香りもあります。口当たりにはやや厚みがあり、米の甘味・旨味がやわらかく感じられます。落ち着きのある酸、香り高い苦味もありますが、余韻は短く、キレの良いお酒です。
お酒を呑み終わったあと、空になったボトルはお部屋のインテリアとして、あるいは一輪挿しなどとして長く楽しめます。高級感のあるボックスも付属するので、ギフトにもおすすめ。
- 原材料名:米・米こうじ(国産米100%使用)
- 精米歩合:65%
- アルコール分:18度以上19度未満
- 日本酒度:+12
- 酸度:1.5
- アミノ酸度:1.5
季節の移り変わりを楽しみながら
じとじとと降り続く雨、蒸し暑い夜、何かと鬱陶しがられる梅雨どきですが、この雨が田んぼを潤し、稲穂を育てています。恵みの雨に感謝しつつ日本の四季の移り変わりを楽しめば、雨の日の晩酌もさらに美味しくいただけそうです。
(文/佐野伸恵)