SAKETIMES編集部が、いま気になるお酒をテイスティングする新企画「SAKETIMES編集部 注目の一本」。今月ご紹介するお酒は、ぷくぷく醸造が造る「ぷくぷく醸造のホップサケ ネルソンソーヴィン」です。

ビール特有の苦味や香りを与えたり、泡持ちを向上させるなど、ビール造りには欠かせない植物であるホップ。2022年7月に誕生した「ぷくぷく醸造」では、このホップを副原料に使い、日本酒造りとビール造りの技法を掛け合わせて、新たなジャンルのお酒「ホップサケ」を造っています。

「ぷくぷく醸造のホップサケ ネルソンソーヴィン」

醸造を担当するのは、福島県南相馬市にあるクラフトサケ(※)の醸造所「haccoba」で醸造責任者を務めていた立川哲之さん。ぷくぷく醸造は、立川さんが2022年7月に立ち上げたファントムブルワリー(施設を持たない醸造所)で、現在は、他の酒蔵の設備を間借りして酒造りを行なっています。

※この記事における「クラフトサケ」は、クラフトサケブリュワリー協会の定義をもとにした、「日本酒の製造技術をベースにしながら、従来の日本酒にはない味や香りが楽しめる醸造酒」という意味です。フルーツやハーブなどの副原料を発酵過程で取り入れた「ボタニカルSAKE」や、もろみを搾る工程を経ない「どぶろく」の一部などが、それにあたります。酒税法上では「清酒」ではなく、「その他の醸造酒」や「雑酒」などに区分されます。

日本酒の製法をベースに、クラフトビールの技術を掛け合わせる

2022年9月に発売された「ぷくぷく醸造のホップサケ ネルソンソーヴィン」は、ぷくぷく醸造の記念すべき第1弾商品です。

「ネルソンソーヴィン」とは、ワイン産地として有名なニュージーランド・ネルソン地区で生まれたホップの名前。ネルソン産のソーヴィニヨン・ブラン(白ブドウ)の香りに似ていることから、その名が付けられたのだそう。

ぷくぷく醸造のホップサケは、クラフトビールの代表的なビアスタイル「ペールエール」をモチーフに、発酵中にホップを添加して香りづけを行うビールの技法「ドライホップ」を取り入れて造られています。

「ぷくぷく醸造のホップサケ ネルソンソーヴィン」

原料米には、福島県が開発した飯米「天のつぶ」を100%使用。精米歩合は87%と、ほとんど米を削っていません。

日本酒の製法をベースにしながら、クラフトビールの技術を掛け合わせることで、ホップ由来のさわやかな苦みと香りが溶け込み、これまでにない新しい味わいを実現させています。

日本酒のうまみ、ビールの香り、白ワインのようなさわやかさ

それでは、実際にテイスティングをしてみましょう。

香り

グラスに注ぐと、まず驚くのはその色。薄い紫、もしくは薄いピンク系の色合いで、多少のにごりも見られます。

「ぷくぷく醸造のホップサケ ネルソンソーヴィン」

この色は、ホップに含まれるカテキンの化学反応によるもので、紅茶を作る際、緑色の茶葉が赤色に変わるのと同じ現象です。

ゆっくりと香りを確認すると、思わず「お、ビールの香りだ!」と呟いてしまうほど、華やかなホップの存在を感じます。

ライチを思わせるジューシーな香りの横に、青々としたハーブのようなさわやかさ。一般的な日本酒の吟醸香とは異なる、苦みのニュアンスも含んだ香りで、これからの飲み口をじゅうぶんに期待させてくれます。

味わい

口に含むと、ライチやマスカットを思わせるフレッシュな味わい。そのあと、中盤からはグレープフルーツのような柑橘系の苦みが立ってきて、うまみとともに余韻が長く続いていきます。

アルコール度数は14度。ビールよりも高いアルコール度数ですが、重たい印象はありません。すっきりとした酸のおかげか、すいすいと飲み進めることができます。米をそれほど削っていないにもかかわらず、雑味はとても少なく、むしろ透明感のある味わいです。

「ぷくぷく醸造のホップサケ ネルソンソーヴィン」

日本酒らしいうまみのなかに、ホップの華やかな香りと苦味、そして、白ワインのようなさわやかな酸。クラフトビールだけでなく、白ワインのニュアンスも感じることができるのは、数あるホップの中でも上品な香りが特徴の「ネルソンソーヴィン」を使っているからなのでしょう。

料理とのペアリングは、桃や梨、ぶどうなどの果物とクリームチーズを和えたものがおすすめです。果物だけでもじゅうぶんによい相性ですが、チーズなどのコクのある食材をプラスすると、ホップサケの特徴である苦みとマッチしたペアリングが楽しめます。

クラフトサケの新たな可能性を感じさせる一本

「ぷくぷく醸造のホップサケ ネルソンソーヴィン」は、近年、人気が高まっているフルーティーな日本酒や、酸味が際立った日本酒とはまた異なる、クラフトサケならではの一本でした。そのジューシーな味わいを活かして、食後酒として楽しむのも良さそうです。

ぷくぷく醸造では、これからもクラフトビールを技術を取り入れた「ホップサケ」を醸造していく予定です。酒販店などで見かけた際には、ぜひ手にとってみて、自由な発想から生まれた魅力的なお酒を味わってみてください。

◎商品概要

(執筆・編集:SAKETIMES編集部)

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