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地元の歴史や文化とともに歩む──地域との共生を大切に「竹生嶋」を醸す滋賀・吉田酒造

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滋賀県高島市マキノ町海津。海津大崎の桜が有名なこの地で酒造りを行なってきた吉田酒造は、これからの日本にもっとも求められるであろう、"地産地消"をメインに据えた、地域密着型の小さな酒蔵です。

人口減少の進行により、地方は年々衰退していくという意見もありますが、地域がそれぞれの魅力を発信していくことで、日本全体の活性化に寄与するとも考えられるでしょう。実際、現在注目されている観光業の視点に立てば、より魅力が多いのは都市圏よりも地方かもしれません。

小さな酒蔵であるがゆえの個性を前面に出した、「竹生嶋」醸造元・吉田酒造の吉田社長にお話をうかがいました。

地産地消を考えた酒造り

― 現在の製造石数はどれくらいですか?

約200石ですね。最盛期は約400石でした。

― ターゲットと考えている市場はどこでしょう?

主に滋賀県内。高島市北部のマキノ町や今津町、滋賀県下の都市部(大津、草津、彦根、長浜)です。

― 「竹生嶋」は全体的にしっかりとした甘みと旨味があり、ふくよかな味わいのお酒が多い印象でした。

比較的、甘口の酒が多いですね。甘みや旨味、コクがしっかりと出るように仕込んでいます。常に"地産地消"を考えた酒造りをしてきました。鮒寿司(ふなずし)をはじめとした、滋賀の地魚(鮒、鮎、鯉)や野菜を使った料理と合わせてみてください。

また、市場を見ていると、世間一般の方々は辛口のお酒をあまり望んでいないような気がします。それもあって、甘口のお酒を造っているんです。

歴史や文化、自然との共生を目指す

― 日本酒の海外販売に関して思うことはありますか?

日本酒の国際化は、避けて通れないでしょう。そのために必要なのは、日本酒を地域の歴史や文化といっしょにトータルで考えることです。

吉田酒造のある地域は江戸時代、北陸と大津を結ぶ重要な港湾で、宿場町として栄えた場所。今でも、琵琶湖の景勝地として知られています。また「日本さくら名所100選」に選定されるなど、桜の名所としても有名なので、アジアや欧米からの観光客も増えてきました。

観光客へアピールするために、吉田酒造でもホームページの英語翻訳を進めています。海外進出については現在、飲食店を通して中国の上海にお酒を出していますね。

― 近年の日本酒ブームに関して、課題を感じることはありますか?

日常の消費量をいかに増やしていくか、そして、アルコール離れの進む若い世代と日本酒の接点をいかに生み出していくかが課題でしょう。

また、大手地酒専門店などの酒屋で、品揃えに多様性が生まれにくくなっていると思います。滋賀県では、蔵元杜氏が増えたため、蔵の個性が出やすい状況になってきました。それぞれの蔵が、特徴を反映させたお酒を造っていけたらいいですね。

― 酒蔵として、地域との共生についてはいかがですか?

ただ日本酒を造るだけでは商売として成り立たないので、それに加えて、売りとなるような個性が必要だと考えています。

私たちの地域においては、高島市の歴史や文化、自然との共生が大切になるでしょう。地元の農家とタイアップし、地元産の酒米を使った酒造りにこだわったり、鮒寿司をはじめとした地元料理に合う日本酒を造ったりしてきました。

地域との共生という観点では、造りの技術的な部分以外にどうやって目を向けてもらうかを考えていく必要があると思いますね。

 

吉田社長はかなり現実的で、地に足の着いた考え方をもっていました。経営者として、非常に優秀な方なのでしょう。その一方で、根底には柔軟な発想があり、地域との共生に関しても真剣に考えていました。

これからの観光業に必要とされるのは、地域と連携し、その個性を活かしていくこと。地域との良い関係を構築してきた吉田酒造は、地方の小さな酒蔵が参考にすべき、ひとつの在り方かもしれません。

(文/石黒 建大)

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石黒 建大

SSI研究室専属テイスター。酒匠、日本酒学講師、SSIの日本酒地酒検証研究員、日本酒香味検証研究員、日本酒セールスプロモーション研究員。 第2回、第3回世界利き酒師コンクールセミファイナリスト。現在は大阪の某有名料理店に勤務。