古い町並みに風情が残る人気の観光地・飛騨高山。近年、ヨーロッパをはじめ、海外から多くの観光客が訪れるようになりました。岐阜県高山市には、酒蔵が7つもあることをご存知でしょうか。今回は日本酒に興味を持ち始めたばかりのアメリカ人・David(仮名)といっしょに、岐阜県高山市の酒蔵めぐりを楽しんできました。
歩いて回ろう!高山市内の7酒蔵
高山市にある7つの酒蔵はどれも歩いて行ける距離にあるため、ほろ酔い気分で散歩をしながら日本酒を楽しむことができます。今回は、平田酒造場・二木酒造・川尻酒造場・平瀬酒造店・原田酒造場・船坂酒造店の6蔵を訪れました。
平田酒造場
まずは平田酒造場から。国際的なワインのコンテストであるインターナショナル・ワイン・チャレンジのSAKE部門で2014年に金賞を受賞した熟成古酒「酔翁」で有名な酒蔵です。
こちらでは、1杯100円から試飲を楽しむことができます。海外からの観光客にやさしい、英語の解説メニューが用意されていました。
言葉による説明だけでなく、アルコール度数や甘辛の程度が色で示されています。Davidも「これはわかりやすいね!」と感動していました。日本語、とくに漢字が苦手な外国人にとって、こうした配慮はうれしいようですね。
おすすめは「醉翁」ですが、日本酒ビギナーのDavidに熟成古酒はなかなかハードルが高い様子。代わりに「飛騨の華」の純米大吟醸と純米吟醸をいただきました。
小さなメモにも英語の解説が。細やかな配慮がすてきですね。
どちらも華やかな香りを感じつつ、スッキリとした味わいで飲みやすいお酒。Davidは「ドライな味の日本酒もあるんだね」と驚いていました。
住所:岐阜県高山市上二之町43番地
TEL:0577-32-0352
二木酒造
2軒目は二木酒造へ。代表銘柄は「氷室」「玉の井」です。昔ながらの囲炉裏があるなど、古民家カフェのような内観で趣が感じられます。座敷に上がることはできませんが、Davidは端から眺めているだけでも喜んでいました。
蔵内では日本酒だけでなく、岐阜の陶芸作家による作品も売られていました。おしゃれな酒器の数々にDavidも興味津々!
今回は「大吟醸 H TAMANOI」と「氷室(ひむろ) 純米大吟醸 生酒」をいただきました。
「大吟醸 H TAMANOI」はボトルのデザインがスタイリッシュで、白ワインのような味わいのお酒。今まで飲んできた日本酒とはまったく異なるタイプです。Davidは「氷室 純米大吟醸 生酒」のトロっとした食感がお気に入りでした。
◎二木酒造
住所:岐阜県高山市上二之町40
TEL:0577-32-0021
川尻酒造場
続いて、3軒目の川尻酒造場へ。熟成古酒に特化した酒蔵です。
昔ながらの酒蔵という雰囲気で、Davidはキョロキョロしながら写真を撮っていました。
今回はおすすめの飲み比べセットと、日本酒で漬けた梅酒をロックでいただきます。この梅酒、なんと通常の2倍の梅を使って仕込まれているのだとか。甘酸っぱくて美味しい!
ここでも英語の解説があります。ラベルが印刷された小さな紙をグラスの下に置いてくれるので、Davidは気に入ったお酒の紙を持って自分でボトルを探していました。この方法なら、漢字がわからなくても自分で探すことができるので便利ですね。
Davidのテンションが上がったのは、古酒独特の色合い。「まるでブランデーのよう」と、しみじみ見入っていました。さらに、お酒を飲んでみると「日本酒じゃないみたい!日本酒も、寝かせると深く甘くなるんだね!」と新しい発見があったようです。
住所:岐阜県高山市上二之町68
TEL:0577-32-0143
平瀬酒造店
7蔵のなかで少し離れたところにある平瀬酒造店を訪れました。とは言っても、ぶらぶらと歩くにはちょうどいい距離です。
中に入ると、お酒の瓶がずらりと並んでいました。よく見ると、それぞれに英語のラベルが付いています。Davidも「これとこれは何が違うの?」と言いながらボトルを見比べていました。
「どれを飲もうかなぁ」と呑気に考えていたら、Davidが素敵なものを発見。
酒米の精米歩合を示したサンプルです。サンプルといいながらも実際に精米された本物の米。袋の外側から触って、その磨き具合を確かめることもできました。
酒米が英語で説明されていることに感動したDavid。「この精米歩合のお酒はどれですか?そのなかでおすすめは何ですか?」と積極的に質問していました。外国人からの質問にも、お店のスタッフはていねいに対応してくれます。
こちらでは「久寿玉 うめ酒 清酒仕込」「久寿玉 特別純米 生酒」「久寿玉 大吟醸」をいただきました。
「よく冷えていて、スッキリとした辛口で美味しい!」と、Davidは「久寿玉 大吟醸」を気に入った様子。「この大吟醸はひだほまれの40%精米なんだよ!」と、学んだばかりの知識でご満悦そうでした。梅酒は川尻酒造で飲んだものよりも、さらにスッキリとした印象です。
住所:岐阜県高山市上一之町82
TEL:0577-34-0010
原田酒造場
6軒目は原田酒造場。「山車(さんしゃ)」が代表銘柄です。
200円でお猪口を購入すると、冷蔵庫入っているすべての日本酒を1杯ずついただくことができます。
私たちも早速乾杯。たくさんの種類があるので迷ってしまいますね。あまり辛口すぎないものからいただきました。
こちらは「山車 純米吟醸 花酵母造」。アベリアの花から分離された「花酵母」を使っている日本酒です。「花酵母」による仕込みを行っているのは、全国で30蔵のみだそう。
蔵内にある囲炉裏のまわりには、かわいらしいさるぼぼが飾られていました。Davidは「写真タイム!」と大はしゃぎ。日本の歴史が感じられるものは、海外の方にも人気があるようですね。
住所:岐阜県高山市上三之町10
TEL:0577-32-0120
船坂酒造店
トリを飾るのは、代表銘柄「四ツ星」の船坂酒造店。大丸松坂屋などのお歳暮・お中元カタログにも登場する、高山市を代表するお酒です。
営業時間が20:00までと、他の酒蔵に比べて遅くまで営業しているため、こちらが最後になるように調整ました。船坂酒造店は、店内の広場でイベントを開催することもあるのだとか。
今回訪れた時は「氷温熟成のしぼりたて生酒イベント」が開催されていました。
「氷温熟成って何?」「熟成なのに生酒?」という私たち。
なるほど!しぼりたての生酒を氷温熟成したということなんですね。
並々と升に注いでいただきました。なんとこれで300円。テーブルに常備された塩のおかげで、お酒がどんどん進みます。生酒特有のトロっとした食感があって、かなり濃厚でした。
Davidが選んだのは限定酒。「純米大吟醸 杜氏 平岡誠治」です。
「平岡誠治」というのは、船坂酒造店に務める杜氏の名前。自分の名前をそのまま銘柄名にするなんて、よほどの自信がなければできません。その心意気にDavidも感動していました。「どのお酒も造り手の気持ちがこもっているから、本当に美味しいよね。ぜんぶ欲しくなっちゃう!また絶対に来るぞ!」と大満足の様子。造り手の思いが国籍を越えて伝わった瞬間です。
住所:岐阜県高山市上三之町105
TEL:0577-32-0016
外国人目線で見ると、酒蔵見学にも新しい発見が!
日本人にとっても奥深い日本酒。改めて外国人からの目線で見てみると、伝え方や感じ方に違いがあっておもしろいですね。日本人ならではのおもてなしの心が感じられ、海外から来た方々にも満足してもらえる魅力的な町・飛騨高山。ぜひ、足を伸ばしてみてはいかがでしょうか?
(文/spool)