長野県のJR臼田駅から、美しい千曲川を眺めながらしばらく歩くと、立派な蔵が見えてきます。それが、橘倉酒造です。

蔵に残っている文献には、1696年に酒屋として営業していた旨が記載されているのだそう。それ以前から酒造りが行われていたと考えると、佐久市内でもっとも古い酒蔵ということになるかもしれません。

橘倉酒造・千曲川

創業300余年の歴史を感じさせる、酒造りの現場

橘倉酒造・屋外

蔵の入り口にはセイヨウトチの立派な木が立っていました。

蔵の広い敷地には、こうした木々や古いながらも美しく立派な建物が並んでいます。敷地内を眺めているだけでも興味深く、蔵が積み重ねてきた歴史を感じることができます。

橘倉酒造・井戸

栃の木を通り過ぎると、井戸がありました。

橘倉酒造・井戸水

地下130mから汲み上げている井戸水は八ヶ岳山系の伏流水。橘倉酒造の仕込み水はすべてこの井戸水でまかなっています。軟水と聞きましたが、想像していたほど軟らかくない印象でした。

橘倉酒造・本蔵入口

こちらが本蔵。

橘倉酒造・本蔵内部

本蔵に入ってすぐの場所が洗米を行うスペースです。洗米は専用の機械を使って行われます。

橘倉酒造・洗米場

酒米を蒸すのは和釜。掛米は放冷機で温度を下げられた後、エアシューターで仕込み用のタンクへ。

橘倉酒造・醪タンク

醪タンクの上部には、昭和43年に組まれた足場があります。隙間がないように組まれているので、タンク間の移動は簡単かつ安全です。醪タンクは7,700リットルという容量。満タンにすることはありませんが、それでも櫂入れには力が必要でしょう。作業を確実に行うという意味でも、この足場は便利ですね。

橘倉酒造・麹室

続いて麹室へ。年季を感じさせる柱が印象的です。室内の隅々まで、きちんと掃除が行き届いていました。

橘倉酒造・麹室

麹室の隣は枯らし場です。実は、甘酒の出荷も多い橘倉酒造。この日は甘酒用の麹が造られている最中で、ほんのりと甘い香りが漂っていました。

橘倉酒造・自動圧縮機

搾りには、自動圧搾機を使っています。

橘倉酒造・甘酒

瓶詰め場には、出荷を待つ甘酒が大量に置かれていました。

橘倉酒造・甘酒タンク

ここは甘酒の仕込み場。橘倉酒造は、近年の甘酒ブームが来るずっと前から甘酒を販売してきました。最近やっと落ち着いてきたものの、ピーク時はとても大変だったそう。1つのタンクで仕込みを行っていたため、かなり酷使していたとのことでした。今年からタンクを2つに増やし回転が良くなるため、作業しやすくなるようです。

蔵見学を通して、地域を盛り上げる

橘倉酒造・甘酒

橘倉酒造の甘酒は、きれいな香りとスッキリとした甘味が特徴。麹をそのまま食べているようです。

橘倉酒造・菊秀無尽蔵

「菊秀 無尽蔵」は伊勢志摩サミットのお土産にも選ばれた銘柄。新酒、夏酒、ひやおろしと1年を通して味の変化が楽しめるお酒です。

橘倉酒造・味の鍵

橘倉酒造では料理酒も造っています。純米酒を料理に使う一般家庭はまだ少ないかもしれませんが、旨味のある純米酒を使えば、それだけで料理の仕上がりがワンランクアップ。余計な調味料は必要ありません。

橘倉酒造・蔵内のパネル

橘倉酒造は佐久地域を盛り上げるためにイベント会社と協力し、蔵見学などを含んだツアーを提供しています。それもあってか、蔵のいたるところに、日本酒初心者にもわかりやすい造りの写真や説明などが掲示されていました。ツアーでは、一般公開されていない場所の見学や試飲ができるのだとか。

2000年までは新潟県の杜氏を雇っていましたが、杜氏の高齢化や人手不足のため、以降は社員杜氏による酒造りに変わりました。現在は、若い井上杜氏にバトンタッチ。今後、酒質が上がるだけでなく、橘倉酒造の新しい味が出てくるかもしれません。

佐久市の観光とお酒、ぜひセットで堪能してみてはいかがでしょうか。

(文/まゆみ)

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