私は日本食文化に欠かせない日本酒がスペインの方にどのように受け入れられているか、みなさんにお伝えしていきます。
今回はマドリードにある某日本食レストランで、日本酒販売で大活躍をしているソムリエ、ビクター氏と訪日し酒蔵見学をする機会をいただいたので、スペイン人から見た日本の酒蔵の印象を記事にしたいと思います。ビクター氏は日本はもちろん酒蔵見学は初めてです。
伝統と最新技術を取り入れた「白壁蔵」
今回訪れた酒蔵は、全国新酒鑑評会で12年連続金賞受賞の神戸、灘にある「白壁蔵」です。「白壁蔵」と言ってもナショナルブランド「松竹梅」で知られる宝酒造なので大量生産可能な大きな工場をイメージしていたのですが、タクシーでJR芦屋駅から12、3分乗車し町並みに見とれていた所、遠くの方にぼんやりと真っ白な建物が見え始め、白壁蔵に着いた時の第一印象は清潔感のあるスッキリした酒蔵でした。
白壁蔵では厳選された原料(灘の名水「宮水」、兵庫県産山田錦など)で酒造りが行われています。数量限定の大吟醸酒等の特定名称酒を専門に、酒造りの伝統を継承しつつ、現代のハイテクノロジーを取り入れた品質にこだわる蔵であり、12年連続金賞受賞という実績が物語っている蔵です。蔵の門をくぐるとミーティングルームに案内され、予備知識として日本酒醸造行程のビデオ(約30分)や質疑応答の時間を見学する前に用意していてくれました。ビクターは日本に着いたばかりで時差ぼけもありましたが、緊張と期待で時差ぼけも吹き飛び、当初予定していた45分の予備知識をつける時間を大きくオーバーし、1時間30分位質問していたと思います。
スペイン人も興味津々!日本の精米技術
基本的な酒造り全般の説明後、蔵見学がはじまりました。見学される来客者の為にガラス張りで酒造りの行程を見ることができるようになっていて、ガラス張りの廊下は小さな酒蔵美術館のようになっていました。それぞれの行程に関連したものが展示されていました。さすがに日本を代表するナショナルブランド。
まず最初に目についたものは、壁に掛かっていた食用米、酒造好適米、古代米等の稲穂でした。日本人の私もこのように各種の穂を比べるような事は初めての事、ましてやスペイン人のビクターには米の稲穂自体が珍しいらしく、かなり見入っていました。スペインではパエリヤ等米を使った料理はあるのですが、食事の時はパンが主流なので(パンにパエリヤを添える)米は無くてもパンは欠かせない、米に対するなじみが無いようです。
次に興味深かった物は3台の精米機。私は精米機は何度か見る機会があったのですが、精米機の中にある精米砥石ロール、これは初めて生で見ました。白壁蔵には2タイプの砥石ロールがあるらしく、1つは目の粗い、もう1つは目の細かいロールだそうです。精米の仕上げの段階で目の細かいロールを使い削っていくと、米の表面がツルツルになり米の隙間に糠が入りにくく、洗米した時にきれいに米が洗えるそうです。
今の時代、インターネット等でたくさんの情報が手に入り、酒造りの過程もスペイン語、しかも動画付きで見れる事ができるようになりましたが、やはり日本酒を直に造っている蔵まで足を運ぶとネットにも載っていない情報がたくさんあり勉強になります。
白壁蔵では古代米の稲穂だけで無く伝統的な酒造りの様子の絵、昔使われていた道具もしっかりした状態で展示されており、大変貴重で興味深い見学になりました。日本の伝統ある日本酒が長い月日をかけてどのように造られていたのか、そして今現在どのようにして造られているのか、ほんの一部ですがそれを見ることができました。
ソムリエも唸らせる貴重な日本酒を試飲!
蔵を1周した後、最初のミーティングルームに戻ってきました。ドアを開けるとなんとテーブルの上に白壁蔵の商品が並べてありました。ここで私たちを待っていたのは、お待ちかねの試飲タイムです。試飲する前に記念に商品の写真をカメラに収めたのですが、1瓶だけラベルが無く汗をかいている瓶がありキャップには金賞受賞酒と記してありました。「もしかして!!!」と頭によぎったのですが、試飲の順番があるようなので何も見なかったように振る舞い、説明を聞きながら試飲を始めました。
今回の蔵見学の目的の1つは、スペインで入手できる日本酒は限られているので、普段味わえない日本酒の実際の味わいを体験することでした。さすがビクター氏はプロのソムリエで、ノートに1つ1つメモを取りながら試飲を進めていました。順番が金賞受賞酒になった時はビクター氏もノートを下におき、受賞酒を嗜んでいました。このお酒は約600本しか醸造されず、非売品なのでここでもなかなか飲むことができない大変貴重な日本酒だそうです。
ちょうど試飲が終わった頃、ミーティングルームの隣にある事務室から1枚の賞状が届きました。なんと12年連続となった平成27年の金賞受賞の賞状が届いたらしく見せていただきました。
写真の通り上に額で飾られているのが、平成26年の賞状で、まだ額にも収まっていない27年の賞状を直に見せていただきました。さすがにこの状況には驚きましたが、もちろん写真は撮らせていただいたので紹介させていただきます。
今回はスペインにいては絶対にできない体験をさせていただきました。今回の蔵見学を通してビクター氏のスペインでの益々のご活躍を期待します。
【関連】久礼をくれ!高知最古の蔵「西岡酒造店」体験レポート!
【関連】信州の豊かな自然が楽しめる!高橋助作酒造店体験レポート!
日本酒の魅力を、すべての人へ – SAKETIMES