お米の産地として有名な秋田県。そのせいか秋田の日本酒には、お米の良さを上手に引き出したお酒が多いように思います。

そんな秋田のお酒から、今回は秋田県由利本荘市で140年以上にわたって酒造りを続けている天寿酒造をご紹介します。

県産米・花酵母・研究熱心がキーワード

sake_g_tenjusyuzou_02

秋田県由利本荘市から由利高原鉄道鳥海山ろく線に揺られること約40分。終点の矢島町に天寿酒造はあります。

ここは、東北の霊峰「鳥海山」の登山口でもあり、県内で最も良質なお米を産出すると言われる子吉川流域の町で、冬には積雪が1メートル以上になる豪雪地帯。酒造りには最適な環境と言えます。

1874年の創業以来の主要銘柄であり、社名でもある「天寿」とは、「百歳まで幸せに生きる」という意味で、飲む人の長寿を願って名づけられたそうです。

「天寿では、地酒としてあえて他県産の山田錦ではなく、地元でとれる米にこだわる酒造りに挑戦しています。それに伴い、県産酒米の品質向上を目指した研究も行っています。」とは、7代目当主の大井建史社長の言葉。

地元に根ざした酒造りを考え、1983年から蔵人と契約農家が中心となって天寿酒米研究会を発足。酒造好適米の「美山錦」や「秋田酒こまち」の研究に加え、合鴨を活用した無農薬栽培にも取り組んでいます。

sake_g_tenjusyuzou_03

また、東京農業大学短期大学部醸造学科が中心となって研究を進めている「花酵母」にもいち早く注目。現在製品化されているお酒の約2割に花酵母が使われているとのこと。

地元にあるものを最大限に生かしながら、新しい技術も必要に応じて取り入れる、酒造りへの柔軟な姿勢がうかがえますね。

国内外で評価される「鳥海山 純米大吟醸」

「天寿」と並ぶもうひとつの主要銘柄が「鳥海山」。こちらの商品はラベルの「鳥海山」が横書きなので、「横・鳥海山」シリーズとも呼ばれています。

sake_g_tenjusyuzou_01

純米大吟醸らしい華やかな上立ち香、米の旨味とやわらかな甘味、控えめな酸味との絶妙なバランス。何より、4合瓶(720ml)で1,600円(税抜)というコスパの良さに驚きです。「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」や、アメリカの「ISC(International SAKE Challenge)」、イギリスの「IWC(International Wine Challenge)」 など、数々の受賞歴もうなずける抜群のお酒です。

遊び心のある「縦・鳥海山」シリーズ

「横・鳥海山シリーズ」とは別に、縦書きの鳥海山シリーズというのがあります。

sake_g_tenjusyuzou_05

こちらは季節ごとに異なる味わいが楽しめるラインアップで、少量生産・限定流通のお酒です。天寿酒造ならではのホッとする味わいはしっかり表現されているので、酒屋さんで見かけたらぜひ手に取ってみてください。

コスパがよくて、美味しくて、どんな料理にも合わせやすい、ご飯をいただくみたいに親しめる日本酒をお探しの方に、イチオシの銘柄です。

天寿酒造株式会社
住所: 秋田県由利本荘市矢島町城内字八森下117番地
電話: 0184-55-3165
蔵見学可(要予約)

(文/沼田まどか)

関連記事