前回の基礎編では、精米することで香り高く、きれいな味わいの日本酒になるということを書きましたが、今回の上級編では、なぜそのように香りや味わいが変わるのかということを説明します。

精米で味が変わるのはなぜ?

基礎編で書いたように、精米歩合の値が小さいと香り高くきれいな味わい、値が高いと旨みのしっかりした力強い味わいのお酒になる傾向があります。なぜ精米歩合によってそのような違いが出てくるのでしょうか?

その謎を解くカギはお米に含まれる3つの成分にあります。

お米には主に「デンプン」「タンパク質」「脂質」の3つの成分が含まれています。デンプンは「麹」の働きにより糖に変えられ、その糖を「酵母」が食べることでアルコールが生まれます。タンパク質は「麹」によりアミノ酸に変えられ、主にお酒の旨みになります。脂質は「麹」の働きにより脂肪酸に分解されます。

お米の外側にはたんぱく質や脂質が多く含まれ、中心に行くほどデンプンの割合が高くなります。そのためお米を精米するほどにタンパク質や脂質からくる旨みなどの味わいの要素が減り、シンプルできれいな味わいになるのです。

精米で香りが変わるのはなぜ?

日本酒の香りは「酵母」によって生み出されるものが多いですが、実は上記で説明したお米の主な成分も香りに影響を与えるんです。

お米をよく磨いているお酒によく感じられるフルーティな香りは、主にリンゴやメロンの香りの「カプロン酸エチル」とバナナのような香りの「酢酸イソアミル」という成分が主体となっています。「カプロン酸エチル」はお米のデンプンを分解してできた糖から、「酢酸イソアミル」はタンパク質を分解したアミノ酸から生み出されます。

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ここまでの説明を読んで疑問が生じた方もいらっしゃるかと思います。

精米するとタンパク質や脂質が減るのだから、タンパク質がもとになって生まれる「酢酸イソアミル」のバナナのようなフルーティな香りも減ってしまうはずでは? 香りのもとの成分が減るのに精米するほどフルーティな香りになるのはなぜ?

その答えは、お米に含まれる脂質にあります。

脂質が分解されてできる脂肪酸(特に不飽和脂肪酸)は、上記の香り成分「酢酸イソアミル」の生成を抑制すると言われています。精米することで「酢酸イソアミル」のもととなるタンパク質が減る半面、生成を抑制する脂肪酸も減るため、フルーティな香りが出やすくなるのです。

タンパク質が精米によりゆるやかに減っていくのに対し、脂質は精米することで急激に減っていき、精米歩合50%ほどでほぼなくなると言われています。「大吟醸」を名乗る基準が精米歩合50%以下というのもこれを考えると納得ですね。

また「カプロン酸エチル」や「酢酸イソアミル」などのいわゆる吟醸香といわれるフルーティな香り成分を多く生成していても、他の香りが強いと隠れてしまい感じにくくなってしまいます。それを避ける意味でも「大吟醸酒」や「吟醸酒」は、精米により余計な成分を削り落とし他の香りが少ない状態を作り出すことで、フルーティで華やかな香りを表現しています。

精米歩合別利き酒のすすめ

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ここまで精米によって味が変わるということを、やや難しい部分も含めて説明してきました。では、実際のところどのくらい変わるのか? やはり飲み比べてみないとわかりませんよね!

例えば、以下のような銘柄で飲み比べてみるとおもしろいかもしれません。
・福小町 純米酒 精米歩合70% (使用酵母:カプロン酸高生成の1801号酵母と9号酵母を中心としたブレンド)
・福小町 純米吟醸 精米歩合55% (使用酵母:カプロン酸高生成の1801号酵母)
・福小町 純米大吟醸 精米歩合40% (使用酵母:カプロン酸高生成の1801号酵母)

福小町銘柄は、比較的くせがなく純米吟醸・純米大吟醸ともに同じ酵母を使っているため、比較したときに精米歩合による味わいの違いがわかりやすいかと思います。また、比較するときに、純米造りのものと「醸造アルコール添加」のものを混ぜてしまうと精米歩合による違いがわかりにくくなってしまうため、3アイテムとも純米造りのものを選んでいます。

※  追記:福小町については「酒米品種非公開」であり、それぞれの使用酵母も同じではないため、純粋に精米歩合の違いだけが味わい・香りの違い生み出すものではありません。あくまで“飲み比べの実験例”としてご提案しています。

目をつぶってどれがどのお酒かを当てる遊びをしてみるのもおもしろいと思いますので、ぜひやってみていただければと思います。

(文/NAOYA)

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