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静岡県清酒鑑評会で「杉錦」が2冠達成!杉井酒造・蔵元杜氏の受賞インタビュー

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平成29年(28醸造年度)静岡県清酒鑑評会が3月に開催され、杉井酒造(藤枝市)の「杉錦」が、純米吟醸酒部門と吟醸酒部門の両方でナンバーワンとなる県知事賞を獲得しました。静岡県は首都圏でも人気の実力蔵がひしめくレベルの高い銘醸地で、そこでの2冠達成は快挙といえるでしょう。

今回の受賞について、蔵元杜氏の杉井均乃介さんにお話をうかがいました。

酸味と甘みのバランスが受賞の決め手

両部門での県知事賞獲得、おめでとうございます。「純米吟醸酒」の部門では過去2回ナンバーワンになっていますね。

ありがとうございます。予想外の結果ではありましたが、素直に蔵人たちと喜びを分かち合いました。過去の受賞は、平成19年と平成21年ですので、8年ぶりの受賞です。過去2回のお酒は酸が抑え目で、自分でもひょっとしたらと期待しての受賞でした

対する今回の出品酒は、酸度が1.7と高めです。酸度は高くても1.4ぐらいまででなければ上位には食い込めないだろうと思ってましたので、県知事賞の次の評価である会長賞の中の上ぐらいに入ってくれればいいかなと思っていました。

それでも県知事賞をいただけたのは、日本酒度が-0.5と甘めだったので、これが酸味といいバランスとなり高い評価に繋がったのかもしれません

-かたや「吟醸酒部門」では初の栄冠ですね

私の蔵はどちらかというと純米酒派です。純米規格のお酒の方が味のバランスはよくなると考えているからです。出品酒も、純米酒は兵庫県産の山田錦(40%精米)と静岡酵母HD-1で醪(もろみ)を1本立てて搾り、純米吟醸酒にほんのわずかに吟醸酒をブレンドして出品しました。ですから、純米吟醸酒と吟醸酒の出品酒の酒質はほとんど同じです。

吟醸酒部門は、純米吟醸酒部門以上に酸味を抑えた綺麗なお酒が上位に入賞しやすいので、こちらも会長賞の下位に残ればいいかなと思っていました。それが県知事賞獲得ですから驚きましたね。

-審査員の方々は「杉錦」のどんなところを評価されたのでしょうか

それは私も聞いてみたいですね。時代の移り変わりにあわせて審査員の感性も微妙に変化しているんでしょうか。審査員のおひとりは「どちらも、とても柔らかい酒でした」と評価してくれました。

-杉井酒造は造りの85%を生酛(きもと)と山廃酒母で醸しており、速醸酒母はわずか15%に過ぎません。ですが、出品酒は速醸酒母での造りですね

市販酒はどんどん生酛(きもと)と山廃酒母に傾斜していますが、出品酒は不利になるので、やはり速醸酒母で出さざるを得ません。

-静岡県の酒蔵は、近年、全国新酒鑑評会では結果が奮いませんね

甘くて香り高い酒とは一線を画した吟醸酒を追求しているためだと伺っています。全国新酒鑑評会でよい成績を取るには、日本酒度は甘め、グルコース濃度が高め、かつカプロン酸エチルという華やかな香りの強い酒が求められます。

しかし、静岡県の酒蔵の多くは強い香りをよしとせず、酢酸イソアミルという穏かな香りと旨味が調和したお酒を理想としています。私も蔵元杜氏になって18年が経ちますが、最初の4年間は香りの高い酵母で全国新酒鑑評会に出品して、3年連続して金賞を獲得しました。でも、それ以降は静岡酵母で勝負しています。

-杉井さんはどのような酒造りを心掛けていますか

いま、マーケットで売れているお酒は、甘味があって、香りが高くて、綺麗な呑みやすいタイプです。ですが、私はそういうお酒ではなく、むしろコクがしっかりあって複雑な味わいを理想にしています。

ただし、そのようなお酒は造ってもどんどん売れるわけではありません。小さな酒蔵ですから、必要に応じて今風のお酒も造るし、私が求めている理想の酒やその折衷のお酒も造っています。

杉井酒造は造りの主力を山廃系にシフトして、酸味と旨味が骨格になった、どっしりとした酒をメインに据えています。しかし、賞を獲得しようと本腰を入れれば、今回のように栄冠を獲得できる実力も持っています。杉井酒造の今後の酒造りから目が離せませんね。

(取材・文/空太郎)

◎平成29年静岡県清酒鑑評会入賞酒一覧(得点順)

《吟醸酒の部》
県知事賞

  • 杉錦(杉井酒造)杜氏:杉井均乃介

以下、会長賞

  • 磯自慢(磯自慢酒造)多田信男
  • 高砂(富士高砂酒造)小野浩二
  • 花の舞(花の舞酒造)青木潤
  • 開運(土井酒造場)榛葉農
  • 初亀(初亀醸造)八重樫次幸
  • 富士錦(富士錦酒造)小田島健次
  • 英君(英君酒造)粒来保彦
  • 出世城(浜松酒造)増井美和
  • 富士正(富士正酒造)伊藤賢一
  • 志太泉(志太泉酒造)西原光志
  • 正雪(神沢川酒造場)山影純悦
  • 若竹(大村屋酒造場)日比野哲
  • 葵天下(山中酒造)山中久典
  • 天虹(駿河酒造場)葛巻文夫

《純米吟醸酒の部》
県知事賞

  • 杉錦(杉井酒造)杉井均乃介

以下、会長賞

  • 出世城(浜松酒造)増井美和
  • 開運(土井酒造場)榛葉農
  • 高砂(富士高砂酒造)小野浩二
  • 磯自慢(磯自慢酒造)多田信男
  • 花の舞(花の舞酒造)青木潤
  • 正雪(神沢川酒造場)山影純悦
  • 初亀(初亀醸造)八重樫次幸
  • 若竹(大村屋酒造場)日比野哲
  • 白隠正宗(高嶋酒造)高嶋一孝
  • 英君(英君酒造)粒来保彦
  • 喜平(静岡平喜酒造)久谷裕良
  • 富士錦(富士錦酒造)小田島健次
  • 富士正(富士正酒造)伊藤賢一
  • 萩錦(萩錦酒造)小田島健次
  • 志太泉(志太泉酒造)西原光志
  • 白糸(牧野酒造)半崎征勝
  • 天虹(駿河酒造場)葛巻文夫

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空太郎

日本酒指導師範(菊正宗認定)&酒伝道師です。 1年365日、日本酒を飲んでいます。 10人未満で丁寧にお酒を醸す銘酒小蔵がたくさん存在することが、 日本酒の多様性と魅力を維持するのには欠かせないと思っています。 そんな酒蔵の活動や、それを応援する酒販店や居酒屋の動きを お伝えしていきます。