2018年6月、SAKETIMESを運営するClear Inc.(以下、Clear)から新たな日本酒ブランドが誕生します。その名は「SAKE100(サケハンドレッド)」。

100年先の未来を見据え、日本酒の可能性を追求していく新規事業です。これまでメディア事業に取り組んできたClearが、なぜ、日本酒の商品開発とECによる直販に乗り出すのか。代表取締役CEO・生駒龍史が、その経緯と信念を明かしました。

SAKETIMESが培ってきた、日本酒を愛する人々との絆

― まず、SAKETIMESをスタートした経緯を、あらためて教えてください。

生駒龍史(以下、生駒):Clearのミッションは「未来視点のサービスでSAKEの市場・文化を発展させる」です。これを実現するには、日本酒のファンを増やすことが不可欠だと考えてきました。日本酒との接点は、飲食店やイベント、あるいは友人や同僚からのおすすめ......さまざまな機会が考えられますが、やはり、"知ること"なくして、日本酒のファンになるような体験にはつながりません。どんな酒蔵が造っていて、どんな背景があって、どんな価値があるのかを情報として知ることで、初めて興味をもつ。それが「ネットで見て気になっていた居酒屋に行ってみよう」「友人がSNSでシェアしていた日本酒を飲んでみよう」という行動につながるわけです。

SAKE100(サケハンドレッド)を運営するClear Inc.代表取締役社長の生駒龍史

知って、体験して、最終的にファンになる。顧客行動のファーストステップである"情報"が大切だと考えて、2014年6月にメディア事業としてSAKETIMESをスタートしました。おかげさまで、2018年現在、月間の読者数が20万人を超え、SNS上では3万人超のフォロワーをもつ日本酒専門メディアに成長しました。

― そして今回、新たな事業として「SAKE100」を発表されました。なぜ、このタイミングでEC事業を始めるのでしょうか。

生駒:現在の日本酒市場をみてみると、1970年代に1000万石(約180万キロリットル)を超える勢いだった生産量は年々減少し、市場全体として縮小が続いています。しかしここ数年、大吟醸酒や純米酒など特定名称酒の出荷数が伸長し、嗜好品としての楽しみ方が広がってきました。「安い酒をたくさん飲んで、酔えればいい」みたいな飲み方が敬遠されるようになってきたのです。多くの人々がQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を追求し、健康への関心が高まるなか、WHO(世界保健機関)は2010年、『アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略』を採択しました。事実として、飲酒運転や依存症など、お酒を飲むことに対してネガティブな印象を抱いてしまうような事象も起こっています。日本国内に目を向ければ、人口の減少による市場の縮小など、無視できない現実もある。そんななかで、いかにして日本酒の市場・文化を発展させるかを考えると、「高付加価値の日本酒を、国内のみならず海外のお客様にも届けて、その価値を理解してもらう」ことが、とても重要なのです。

創業以来、さまざまな日本酒と出会い、たくさんの酒蔵の方々と接してきました。どの酒にもそれぞれ個性やストーリーがあり、本当にすばらしい。大変な苦労を背負いながら、真摯に酒造りと向き合っている。そう考えると、果たして、いま市場に出回っている日本酒は適正価格なのかどうか。もちろん、企業努力の賜物として、"安くて美味い酒"があってもいいのですが、もっとハイエンドな価格帯の商品があってもいいんじゃないか。日本酒の革新には、"多様性"が必要だと思うのです。今まで形成されてこなかった高価格市場をつくることで、日本酒の多様性をさらに広げていきたいと考えています。

SAKE100(サケハンドレッド)を運営するClear Inc.代表取締役社長の生駒龍史

SAKETIMESには月間約20万人の読者がいて、それも日本酒に特化した情報だけを読んでくださっている。これは、マルチチャンネルのメディアよりも、圧倒的に熱量の高い読者と言えます。「リターン・オン・リレーションシップ(ROR)」という言葉があるように、単純な読者数だけでは換算できない、僕らの提案する情報にポジティブな反応を示してくれる方々です。そんな人たちに向けてSAKE100という新たなブランドを発表し、ダイレクトに届ける。僕らがこの4年間、SAKETIMESというメディアを通じて、日本酒と消費者の双方に対して、しっかりと向き合いながら勉強してきたからこそ、この大きなチャレンジができるんだと感じています。

既成概念を取り払った先に見えてくる"至高の日本酒"

―「SAKE100」とは、どんなブランドなのでしょうか。

生駒:端的に言えば、「100年先にも誇れる日本酒」を届けるブランドです。"未来にあるべき価値"をもったオリジナル商品の製造・販売を通して、これまで日本酒市場にほとんどなかった高価格帯のマーケットを創造し、顧客に新たな価値と体験を提供します。現状の日本酒は、価格を決める要素が単一化していると感じています。日本酒は本来、原料の米だけでなく、テロワール(米や酒ができる風土)、醸造技術、製造年、稀少性、デザイン性など、さまざまな要素が複雑に絡みあって、その価値が決まるべきです。実際、ワインにはそういう文化がありますよね。さまざまな物差しや評価基準のなかで、価格が決められている。日本酒って、本当に優れた技術によって醸されているんです。だからこそ、既成概念を取り払うことによって、想像もできなかったような新たな表現が生まれるのではないでしょうか。僕はそれをこの目で見てみたいし、味わってみたい。日本酒の多様性を実現して、新しい未来をつくっていきたいんです。

「100年誇れる1本を。」SAKE100のブランドロゴとキャッチコピー

―これまでの常識を覆して、日本酒の新たな可能性を追求していくということですね。「SAKE100」ではどんな商品が開発されているのでしょうか。

生駒:まずは3商品のリリースを予定しています。山形県の楯の川酒造さんと共同で開発した『百光』は、まさにSAKE100のフラッグシップモデル。人の嗜好はさまざまですから、一概に"良い酒"を規定することは難しいかもしれない。しかしあえて、「これこそが、良い酒の代名詞です」と胸を張って言えるような、ある種の最適解を提示したいと思っています。クラウドファンディングサイト「Makuake」にて『百光』の限定先行販売をしているのですが、プロジェクトの開始からわずか3時間で目標額を達成しました。このスピードには僕たちも驚きましたが、日本酒の高価格市場に大きな可能性があることを示すことができたと思っています。『百光』の先行発売は5月30日まで行なっているので、この機会にぜひ、僕たちが提案する"上質な酒"の答えを体験していただきたいですね。

山形県・楯の川酒造と共同開発したSAKE100(サケハンドレッド)第一弾商品『百光 -byakko-』(びゃっこう)。"上質の極み"を目指して造られた、精米歩合18%の日本酒

山形県・楯の川酒造と共同開発したSAKE100第1弾商品『百光 -byakko-』。クラウドファンディングサイト「Makuake」にて5/30まで先行発売中

そのほかには、貴醸酒の決定版とも言うべき、1日の終わりにひと口飲めば、心地良く眠りにつけるような"超芳醇"な1本。さらに、耕作放棄地を復田して収穫した酒米だけを使い「この1杯を飲むことで、失われていた原風景が蘇る」という、地域のサステナビリティを支えるような純米酒などを提供していく予定です。SAKE100が提供するのは、高品質の味わいだけではありません。幅広い視点から"消費者にとって本質的な価値"を打ち出していきます。

―どんな人に「SAKE100」を届けていきたいですか。

生駒:やはり、QOLを大切にしていて、上質な体験によってみずからの人生をより良いものにしたい、充足感を高めたいと考えている方々に届けたいと考えています。日本酒に詳しいかどうかは、あまり関係ないと思っています。

日本全国にさまざまな酒蔵があり、それぞれが複数の銘柄を醸しているので、日本酒をまったく知らない人からすると、どうしてもハードルが高いというイメージがあります。「何か良いものを飲みたいけれど、どれを選べばいいかわからない」という人もたくさんいるでしょう。このSAKE100というブランドを確立することで、「SAKE100を選べば、最良の体験が得られる」「大切な人にはSAKE100を贈りたい」と、真っ先にその名を思い浮かべてもらえるようになりたい。そのために、本当に良いものだけを追求していきたいですし、その酒がもっているストーリーをていねいに伝えていこうと考えています。

SAKE100(サケハンドレッド)を運営するClear Inc.代表取締役社長の生駒龍史

日本酒の新たな価値が、100年後の未来をつくる

― 「SAKE100」は今後、どのように展開していく予定ですか。

生駒:実現したいことはたくさんあります。消費者の体験として、日本酒の楽しみ方はもっと多様であるべきです。ここ数年、日本酒が"ブーム"のようになって、新しいお客様が増えていることは、確かに明るい話題だとは思います。けれども、特定の銘柄ばかりに光が当たったり、フルーティーで香り高い酒ばかりが求められたりするのは、僕らとしても不本意な側面がありますし、同じ思いの蔵元さんも少なくないでしょう。それぞれの酒蔵に個性があって、得意分野も異なるのに、違う土俵で戦わざるを得なくなるようなもの。SAKE100を通して、スペックや銘柄だけではない、日本酒の評価軸を増やしていく。その酒がつくられた背景やストーリーを伝え、新たな価値を提供していく。そういった僕らの理念を酒蔵の方々にお伝えすると、強く共感していただけることが多いんです。この先、SAKE100とともに課題意識を共有し、理念に共感していただける蔵元さんとのつながりを広げながら、多様な顧客体験をベースに商品をつくっていきたいです。

― ゆくゆくは海外への展開も想定されていますか。

生駒:日本酒の輸出額は2010年から8年連続過去最高を更新していて、2017年度も前年から約20%増の約187億円の売上高です。僕らも、2016年5月に海外向けの「SAKETIMES International」をリリースし、108カ国からアクセスされるメディアになっています。海外では関税の関係で、日本国内での販売価格よりも高い価格で日本酒が販売されていますが、「高くても良いものを飲みたい」というお客様がたくさんいらっしゃるのです。当然SAKE100も、海外展開していきたいと考えています。

「SAKETIMES International(サケタイムズインターナショナル)」の画面イメージ

― これから日本酒の市場・文化が発展していくなかで、たとえば100年後、日本酒の在り方はどのようになっていると思いますか。

生駒:日本に限らず、世界の裏側でも当たり前のように日本酒が楽しまれるようになって、世界中の人々の人生が豊かなものになっていると良いですよね。ひとりひとりが日本酒の多様性に触れ、その奥深さを知ることで、暮らしのなかの楽しみがひとつ増える。今はさまざまな娯楽があふれていますが、その選択肢のひとつとして日本酒があることは、社会としても豊かなことだと思うのです。

僕らが今SAKE100を通して実現しようとしていることは、その100年後の未来をつくることだと思うし、僕らの一歩が世界への一歩でもあるという確信がある。ものすごくワクワクしているんですよ。SAKE100の商品を手に取ってくれた人にとって、これがさまざまな日本酒と出会うきっかけになってほしい、日本酒への扉を開く鍵であってほしいと思いますね。

SAKETIMESを通して、日本酒の文化が豊かで奥深いことを知っているからこそ、さらにその多様性と可能性を追求していく......それが、より多くの人々の暮らしを豊かにすることを願い、「SAKE100」は生まれました。日本酒が鮮やかに彩る100年先の未来を目指して、Clearの挑戦はここから始まります。

(取材・文/大矢幸世)

◎ 上質を極めた日本酒『百光』は、5月30日まで先行発売中!

山形・楯の川酒造とともに開発したオリジナル日本酒『百光 -byakko-』は、クラウドファンディングサイト「Makuake」にて、大好評先行発売中です。誰もが納得できる"上質な味わいの到達点"を目指し、原料の酒米を18%まで磨き上げて雑味を極限まで取り除きました。【720ml/17,800円 (※送料込)】という価格にふさわしい、至高の1本です。

「SAKE100」(サケハンドレッド)の第1弾商品『百光 -byakko-』のキービジュアル。クラウドファンディング「Makuake」プロジェクトページ。

『百光』の先行発売は5月30日まで。SAKE100が自信をもってお届けする、日本酒の"粋"を集めてつくりあげた至高の1本。ぜひ、その魅力を体感してください。

プロジェクトページ:100年誇れる至高の1本。上質を極めた日本酒『百光』を限定先行発売! (期間:2018年4月18日〜5月30日)


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