金色の缶が目印の「ふなぐち菊水一番しぼり」や、ラベルの筆文字が映える「菊水の辛口」。コンビニやスーパーで、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。これらの人気商品を生み出してきたのが菊水酒造です。
そんな菊水酒造が蔵を構えるのが、新潟県新発田市(しばたし)。新潟市の隣に位置する人口10万人弱の都市で、江戸時代には城下町として栄えました。現在も「鍛冶町」「職人町」「馬場町」などの呼び名が残っており、城下町だった名残を感じることができます。さらに、「もっと美人になれる温泉」として親しまれている月岡温泉やスキー場、海水浴場まであり、1年を通して自然の恵みを満喫することができる場所です。
東京から、上越新幹線とJR白新線を乗り継ぎ3時間余り。海と山に囲まれた新発田のおすすめスポットを、菊水酒造マーケティング部の長谷川洋平さんと安達厚子さんにご紹介いただきました。さあ、菊水酒造を育んできた新発田とは、いったいどんな町なのでしょうか。
地元の人々に親しまれるシンボル・新発田城
まず訪れたのは、新発田城。1602年に築城が始まり、60年もの年月をかけて完成したという新発田のシンボルです。
新発田市ではさまざまな地域イベントが開催されており、なかでも毎年8月下旬に開催される「城下町新発田まつり」は市民にとっての夏の風物詩。新発田城の真裏から打ち上げる花火は"市街地花火大会"と呼ばれ、ライトアップされた新発田城三階櫓と大輪の花火が新発田の夜空を彩ります。
また新発田城は別名『あやめ城』と呼ばれていて、5月頃にはお城の周りに色鮮やかなあやめが咲くのだそう。さらに4月には美しい桜が堪能できる「新発田城址公園桜まつり」が開催されるなど、四季折々の風情が感じられます。
城の内外では、観光客だけでなく地元の方の姿もたくさん見かけました。町の中心に位置しているため、お堀の周りや城内を散歩するのを日課にしている方が多いのだそう。地元の人々が集い、身近なお城のある暮らしを楽しんでいるのも新発田ならではの魅力ですね。
観光名所と老舗酒蔵をつなぐ「庭園」と「和菓子店」
新発田城の次に向かったのは、大名の庭園だったという名所・清水園です。江戸時代に誕生した庭園を、昭和20年代に修復したのが名庭師・田中泰阿弥(たなかたいあみ)。なんと、菊水酒造の創業家である髙澤家の庭園も手がけたのだそうです。こんなところに菊水酒造とのつながりがあるんですね。
広々とした庭の中央には池があり、池の周りをぐるっと回って楽しみます。新発田の歴代藩主は茶道に力を入れていたそうで、庭園には5つもの茶室が。普段は入ることができませんが、なんと今でも現役で、時折お茶会に使われているのだそうです。
清水園の前は、石畳と新発田川が流れるとても趣のある通り。そこに店を構える和菓子店「新柳本店」は、菊水酒造の御用達のお店です。茶道が盛んな新発田には、数多くの老舗和菓子店が町中に店を構えています。
「菊水さんで何かお祝いごとがあると、必ずお菓子をご注文いただくんです」と、店主の渡辺裕介さん。一番の名物は、40年前から製法を変えていない「清水園まんじゅう」。温かいものを食べてほしいと、1日に何度もできたてのまんじゅうが店頭に並びます。
また、「新柳本店」は老舗和菓子店ではありますが、ロールケーキやパウンドケーキなどの洋菓子もたくさん並んでいます。
「和菓子も洋菓子も、それぞれの良さがあります。美味しいものをお届けできるなら、お菓子の形にはこだわりません」と渡辺さん。最近では、老舗の技と新たな発想を融合させ、新発田名産のアスパラガスを使った「アスパラチーズタルト」が大きな話題となり、同店の人気商品となっています。
120年もの歴史を持つ新柳本店ですが、老舗でありながら挑戦の気持ちを忘れない姿勢は、どこか菊水酒造と似ているように感じます。
歴史も文化も、町の人が一番楽しんでいる
少し町を歩いてみたところで、新発田の町に根ざす方にお話を伺うことにしました。まずお会いしたのは、長徳寺の住職を務める関根正隆さん。境内で料理教室やライブイベントを開催するなどのユニークな取り組みで、新発田の町ににぎわいをもたらしています。
新発田は江戸時代の町並みや、歴史・文化がしっかり残る町。市外出身だった関根さんは、移り住んできた当初、新発田の独特の文化に驚いたといいます。なかでも最も特徴的に映ったのが、「町が観光に依存していない」ということだったそう。
「最近は『町おこしのために外の人を呼び込まなければ』という風潮が強いですが、そもそも住民に必要とされていなければ、町は生き残ることができません。新発田という町は、歴史も文化も町の人こそ一番に楽しんでいると思います」と関根さんは語ります。たしかに、新発田城にも清水園にも、地元の方々がたくさん訪れていたことが印象的でした。
関根さんが始めた「寺びらき」というイベントは、今年で3回目を迎えました。その名の通り「寺を開かれた場所にしたい」という想いから生まれたものです。
「子どもが境内で遊んだり、大人たちがお茶を飲んだりと、かつてのお寺は自然と人が集まる場所でした。そんな文化をもう一度取り戻したいんです。用事がなくても気軽に立ち寄ることのできる、地域の人たちに開かれた寺になればと願っています」(関根さん)
長徳寺だけでなく、周辺の寺にも呼びかけ、寺町一帯でイベントが開かれるのが「寺びらき」です。歴史ある境内で開催されるイベントは、昔ながらのものと現代のアイデアを組み合わせた“ここにしかない”ものです。
常に「新しい価値を発信したい」という関根さんの想いもまた、菊水酒造の考えと通じるところが。"暮らしを楽しむ"という視点で志しを同じくする両者の、さらなる取り組みに期待ができそうです。
知る人ぞ知る、新発田のディープスポット!
せっかくの機会ですから、地元の人しか知らない場所へも案内していただきました。ランチに訪れたのは、なんとスナック…?
ここ「ぐみの木」は、夜だけでなくランチも有名なお店なんです。
新発田はアスパラガスの名産地。それを活用した新名物を、という想いから誕生したのが「アスパラみどりカレー」です。アスパラガスのピューレを使った緑色のカレーは市内いくつかの飲食店で食べることができますが、ぐみの木のカレーは見た目にもこだわった一皿です。
それがこの「ダムカレー」。中央のアスパラを抜くと、カレーが“放流”されます。チキンピカタは岩、ブロッコリーが森を表していて、とてもカラフルな一皿。新発田産アスパラの太さ・甘さには驚きました。
シメのデザートにと訪れたのは、「アイスクリームショップ スギサキ」。“新発田市民のソウルフード”と言われるアイスの味は、なんと明治時代から変わらないそうです。
この日は持ち帰り用のカルピスアイスをいただきました。特徴は、驚くほどの固さ!木のスプーンでは全く歯が立ちません。少しずつ削るようにして食べるのがツウの食べ方なのだとか。一方で、店内用のアイスは柔らかい白アイスとカルピスシロップが絶妙と評判です。どちらも体験して自分好みのアイスをみつけるのも面白いでしょう。
日本酒といえば、菊水。新発田に寄りそう菊水酒造
夕暮れが近付いてきた頃、「鳥はし」さんにお邪魔しました。1976年からこだわりの焼鳥を提供し続けてきた人気店で、オープン当初から菊水酒造のお酒を提供しています。店主の佐藤正剛さんにお話を伺います。
焼鳥ならどこにも負けない、と自負する佐藤さん。おすすめは特製のタレに漬け込んで焼いた『にんにくつけ焼き』と、『とり団子』だそう。どちらも創業時からの名物で、『にんにくつけ焼き』は1人で10本召し上がるお客様もいるとのこと。もちろん合わせる日本酒は菊水酒造です。
「菊水さんといえば、『メガ徳利』ですよ。4合(720ml)入るのですが、かなり大きいので初めて見た時は驚きました。お客さんも面白がって頼んでくれますし、この企画力はすごいと思いますね」
銘柄は新潟県内の飲食店限定の「お晩です」。地元の方言で「こんばんは」という意味なのだそう。県外ではほとんどお目にかかれませんが、ここ新発田では多くの飲食店で「お晩です」が定番銘柄として提供されています。
「なんというか、新発田の人間にとって、菊水さんのお酒は特別なものではないんです。日本酒といえば、菊水。私だけでなく、お客さんを見ていてもそんな雰囲気を感じますね。当たり前にそばにあるものだとずっと思ってきました」(佐藤さん)
「鳥はし」さんは、菊水酒造のスタッフも度々訪れているのだそう。社員同士で飲みに来るのはもちろん、海外からのお客様をお連れすることも多いという結びつきの強いお店です。
最後に訪れたのは、新潟県屈指の温泉地・月岡温泉の老舗旅館で、菊水酒造の日本酒を提供している「月岡温泉 白玉の湯 泉慶」です。
こちらの宿で提供される料理のコンセプトは"伝統×革新"。老舗の伝統を受け継ぎながらも、新しいものを学び、目に美しく体に優しい『創作懐石』を提供しています。
泉慶で菊水の日本酒がどのように楽しまれているのかを訪ねると「地元・新発田のお酒として、必ずおすすめしたいお酒です」と、同旅館を運営するホテル泉慶の常務取締役・飯田武志さんは答えてくれました。
「新潟の地酒を楽しみに遠方からいらっしゃるお客様にも胸を張ってご紹介できる、そんな存在です。バリエーションが豊富なので、海外のお客様にも選んでいただきやすいのです。『ふなぐち』しか知らなかったけれど本格的なお酒もとても美味しいんだね、といった声もよく聞きます」(飯田さん)
「新潟」という土地柄をとても大切にされている泉慶。古き良きものと新しいものと、両方を掛け合わせているという点は、これまた菊水酒造と共通しているかもしれません。
人気の老舗温泉旅館でも自信を持っておすすめされているという菊水の酒。地酒として新発田に愛されているのですね。
歴史ある町で"暮らしを楽しむ"文化こそ、新発田の魅力
昔ながらの町並みや文化が今でも残る新発田。町の人たちは、シンボルの新発田城を散歩コースにしたり、歴史ある茶室やお寺を活用してイベントを開いたりと、"新発田で暮らす"ということ自体を楽しんでいるように見えました。「文化を守ろう」と変に気負っているわけではなく、自然に文化と共存しているよう─。
菊水酒造には、「コトづくり」という考え方があります。ただ酒造り(モノづくり)をするだけでなく、酒を通して"楽しい" "面白い"と感じてもらう生活提案(コトづくり)をし続けているのです。お酒の味わいだけを追い求めるのではなく、その先にある人々の暮らしを豊かにしていこうという姿勢は、"暮らしを楽しむこと"を大切にする新発田市に育まれたものなのかもしれません。
派手ではありませんが、温かく、穏やかな魅力にあふれた城下町・新発田。訪れた時にはきっと、温かく迎え入れてくれますよ。
(取材・文/藪内久美子)
sponsored by 菊水酒造株式会社