こんにちは!SAKETIMESライターの梅山紗季です。

夏至も過ぎ、梅雨明けが待ち遠しい時期ですね!私は以前SAKETIMESで、松尾芭蕉・与謝蕪村・小林一茶という江戸時代の俳人が詠んだお酒の句を「一杯と一句でタイムスリップを」という記事としてご紹介したのですが、今回は、そんな一杯と一句でタイムスリップ第2弾!と称しまして、これからの季節に味わいたい、 お酒と夏を詠んだ江戸時代の俳句をご紹介したいと思います!

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夏の季語「一夜酒」の登場する句

今回は特に、「季語」に注目して俳句をご紹介していきたいと思います。先の記事でも取り上げた、与謝蕪村(1716~1783年)小林一茶(1763~1827)の句から。

  1. 酒十駄ゆりもて行きや夏木立(蕪村)
  2. 御仏に昼にそなへけりひと夜酒 (蕪村)
  3. 有明も さし合せけり 一夜酒(一茶)
  4. 一夜酒 隣の子迄 来たりけり(一茶)

さて、この4つの句、俳句なので季語が存在します。①の句はわかりやすく、季語は「夏木立」ですが、残りの3つの季語は「ひと夜酒」「一夜酒」です。実はこの「一夜酒」、実は私達も飲んでいるある身近なお酒のことを指しています。

そのお酒というのは……ズバリ、甘酒です!

江戸時代、白米を柔らかく炊き、冷まして麹を混ぜ、醸して甘くしたもの、また、酒粕を溶かして甘みをつけたものを「甘酒」と呼んでいました。日本酒ひとつ作るにも大変な手間のかかった江戸時代、他と比べ一夜のうちにできあがることから、「甘酒」のことを「一夜酒」と表現することがあります。

甘酒は夏の季語!?  句から覗く江戸時代の「甘酒」

今ではお正月に飲むイメージの強い、特別な日の飲み物の側面のある甘酒ですが、江戸時代の人々は、もっと身近に楽しんでいたようです。「甘酒売り」といって、甘酒を売ることを商いとしていた人々がいたということを、当時の資料からうかがい知ることが出来ます。

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こちらは「江戸と東京 風俗野史」という文献による、「甘酒売り」の姿です。お米を柔らかく炊いてお酒を造るため、お釜を携えて商いをしています。

「近世風俗史(1)」という資料によれば、京都や大阪ではもっぱら夏の夜、甘酒を売っており、鉄の釜を用いて売り歩いていたそうです。昔は、寒い冬の夜のみ売っていたのが、少しずつ暑い時期にも売り始め、日中の商いも増え始めたのだとか。

また、先の「江戸と東京 風俗野史」では、江戸では最初、同じく寒い夜に売っていたのが、季節に変わりなく売るようになり、暑い日のお昼にも売るようになったことが記されています。それだけ、江戸時代の人々にとって甘酒は身近なものであり、なおかつ、夏に飲む「甘酒」には、暑い夏の日中を乗り切る、滋養強壮の効果のある飲み物として普及していったことが想像できます。

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「甘酒」を詠んだ句たち

「一夜酒」と表現されることも多い中、先に挙げた与謝蕪村は、「甘酒」という言葉でもいくつか句を詠んでいます。どれも、短い中に工夫の凝らされた句なので、ご紹介します。

まずこちらの一句。

あま酒の 地獄もちかし 箱根山

この句の収録された句集には「箱根にて」と記述があり、箱根で詠んだ句だとわかります。箱根の街道に存在する旅の難所「大地獄・小地獄(現在の大涌谷・小涌谷)」に、甘酒の泡や湯気を見立てて、もうすぐ甘酒にありつけるぞと、険しい道のりを励ます旅人達への一句です。一杯の甘酒を風景に重ね合わせた、壮大な句です。

愚痴無智の あまざけ造る 松ヶ岡

ここの「松ヶ岡」というのは、鎌倉・松ヶ岡の東慶寺というお寺を指しています。昔は、離婚を望む妻はこの寺で三年修行を積めば離縁が認められたため、人生に迷った尼さんが多くいる寺でもありました。「松ヶ岡」では人生に迷った尼たちが愚図愚図と語りつつ甘酒を作っているようだ、という様子を詠んだ歌なのですが、この「尼」と甘酒の「あま」がかかっています。また、「愚痴無知」という語は、甘酒が発酵していく際の擬声語でもあり、5・7・5の中に言葉の遊びが込められています。

 能き人や 醴(あまざけ)三たび 替にけり

最後にご紹介したこの句の「能き人」は、身分の高い人のことを指し、庶民的な「甘酒」を味わうあまり、そのおいしさに3度もおかわりをなさったことを詠んでいます。先ほどの「甘酒売り」の姿からもわかるように、高貴な人ほど「甘酒」を飲む機会が少ないこと、そんな身分の人でも「うまい」と感じる滋味があったことが読み取れます。

いかがでしたでしょうか?季語に焦点を当てながら、今回は「甘酒」に関する俳句を紹介して参りました。私も調べるまでは甘酒は冬の季語だと思っていたので、この記事を読んでくださった方は是非、「『甘酒』って、いつの季語だと思う?」と、周りの方にも新しい発見をご紹介してみてくださいね。

参考文献
・「江戸と東京 風俗野史」2001 国書刊行会
・「近世風俗史(1)」2002 岩波書店
・「蕪村全集 第一巻」1992 講談社
・「一茶全集 第一巻」1979 信濃毎日新聞社

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