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仕事に効く!人生に効く!心に残る杜氏の言葉 〜行き詰まったとき、もう1歩踏み出すためのヒント〜

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野球界のイチロー、サッカー界の三浦知良、ITビジネス界のスティーブ・ジョブス・・・各界を極めた偉人の言葉には人を魅了するものがあり、「名言」として親しまれています。

酒造りのリーダーである杜氏も、酒の道を極めた究極の仕事人。杜氏の言葉にもまたパワーが宿っています。今回はそんな名言をご紹介します。たとえば、仕事や人間関係に行き詰まってしまったとき、壁を乗り越えたいとき、もう1歩踏み出すためのヒントになるはずです。

西堀酒造株式会社(栃木県小山市) /継枝邑一氏(1926-2012)

「つらくて辞めたくなったら
『あと、2日だけやろう』と考えればいい」

1872年創業の老舗・西堀酒造。代表銘柄「門外不出」「若盛」を世に送り出したのは、継枝邑一(つぐえだゆういち)氏。2010年に出版された、「最高齢のプロフェッショナル」(徳間書店取材班)で、「現役最高齢の杜氏84歳」として紹介されました。

半世紀以上も酒造りを続けた杜氏も、つらいときには「あと2日」と自分に言い聞かせていたのでしょうか。わたしたちも困難にぶつかったとき、「あと2日」と思ってみれば、その道を極めるための小さな一歩が踏み出せるかもしれません。

◎出典:「最高齢プロフェッショナルの教え」(徳間書店/徳間書店取材班 著)

大信州酒造株式会社(長野県松本市)/下原多津栄氏(1917-)

「前向きな人の想いの力こそが、
人生を漕ぎ渡るための櫓となる」

創業1888年、「大信州」を代表銘柄とする大信州酒造で酒造りを務めてきた下原多津栄氏。

昭和20年代のある冬、下原氏は貴重なお米で醸した醪が腐造しかけ、窮地に立たされました。もし酒造りが失敗すれば、蔵に大きな損害を与えることはもちろん、杜氏としての沽券も脅かされます。しかし、自らの名誉よりも、醪のことを第一に考え、あの手この手を尽くした結果、奇跡的に醪の状態が回復しました。

「なんとしても醪を救いたいという強烈な想いがあったからこそ、活路が開けたのではないか。」下原氏はそう振り返りました。前向きな人の想いが活路を開く──下原氏の言葉には、ひたむきに生きるためのエネルギーが宿っているようです。

◎出典「杜氏一代―時代の美酒を醸す男の物語」(有限会社無明舎出版/北川広二 著)

神亀酒造株式会社(埼玉県蓮田市)/小川原良征氏(1946-2017)

「機械は導入したときから壊れ始めるが、
人は蔵に入った時から育つ」

神亀酒造は、戦後、全国で初めて純米酒のみを醸す蔵となりました。三増酒が常飲されていた時代、「利益が出ないのに」と、純米酒造りに懸ける小川原氏を揶揄した人も当時は多かったのだとか。しかしやがて、その味わいが日本酒ファンを席巻。「るみ子の酒」で台頭する森喜酒造場など、神亀酒造に影響を受けた酒蔵は少なくありません。

多くの人が小河原氏を慕い、影響を受けたのは、小川原氏が"人間は成長する"と信じていたからではないでしょうか。自分自身の成長、部下の成長、家族の成長・・・身のまわりに置き換えて考えてみたい言葉です。

◎出典「闘う純米酒 神亀ひこ孫物語」(株式会社平凡社/上野敏彦 著)

宮泉銘醸株式会社(福島県会津若松市)/宮森義弘氏(1976-)

「売れるかどうかじゃなくて、
俺が造りたい味を追求したら、
この酒ができただけ」

昭和29年創業の宮泉銘醸株式会社。4代目にあたる宮森義弘氏は、念願かなって酒蔵を継ぐやいなや、傾きかけていた経営を徹底的に改革します。大幅な変更に、元・蔵元である父親をはじめ従業員と対立する場面もあったようですが、宮森氏は動じることなく、わずか1年で黒字経営に立て直しました。

宮泉銘醸の主力商品が普通酒だった当時、宮森氏は周囲に反対されながらも幼馴染じみの理解に支えられて「寫樂」を醸しました。2014年にはSAKE COMPETITIONで純米吟醸部門、純米酒部門の2冠を達成。寫樂のたおやかな美味しさの中には、我が道をまい進する強さが秘められているのです。

◎出典「蔵を継ぐ 日本酒業界を牽引する5人の若き造り手たち」(株式会社双葉社/山内聖子 著)

株式会社南部美人(岩手県二戸市)/松森淳次氏(1964-)

「酒造りが思うように出来たら
楽しみは半減する」

明治35年創業の南部美人株式会社。「全国新酒鑑評会」「SAKE COMPETITION」に加え、世界的に権威あるワインコンクール「IWC(インターナショナルワインチャレンジ)」、フランスの日本酒審査会「KURA MASTER」など、世界に名を馳せる「南部美人」を知らない左党はいないのではないでしょうか。

南部杜氏自醸酒鑑評会で連続50回以上金賞を獲得した、故・山口一杜氏は「酒造りは何年やっても、毎年が1年生」と語っていたそうです。その言葉が現杜氏である松森氏に託されているのでしょう。世界的な銘酒を醸しながらも「思い通りにならない」と感じる謙虚さ、また思い通りにならないことを楽しむ勇気。お酒の味わいと同様に魅力を感じずにはいられません。

◎出典「日本の杜氏413人名鑑(2010年版)」(株式会社フルネット)

パワーをもらえる銘酒・名言

杜氏は日々、蔵人とチームワークをはかりながら、計算通りに進まない「酒造り」という一大プロジェクトを成し遂げています。

一方、酒造りとはまったく無関係のビジネスマンにも、急な納期に振り回されるといった「計算通りに進まない」仕事は多くありますね。そんな想定外の事態でも、チーム一丸となり業務完遂を目指すのは、実はビジネスマンにも杜氏にも共通するところです。

壁を乗り越えたいとき、行き詰まってしまったとき、杜氏の言葉を思い出しながら、日本酒を味わってみましょう。きっとパワーをもらえるはずですから。

(文/佐野伸恵)

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