みずからの酒を"平凡の銘酒"と称し、創業以来280年もの間、その味わいを守り続けてきた、岐阜県羽島市の千代菊株式会社。「地元のための地酒」を目指して、地域住民との交流にも力を入れてきました。

そんな千代菊は、2月と10月の年に2回、蔵開きを行なっています。

蔵開きでは、搾ったばかりの新酒をはじめとする、蔵自慢のラインアップを飲めるだけではなく、お酒に合ったおつまみや食事を提供する屋台が並び、さらにステージでは、地元の住民たちによって音楽や踊りが披露されます。また、ふだん入ることのできない酒蔵を見学することができるのも、このイベントの魅力です。

今回は、千代菊が地域住民の方々からどんなふうに愛されているのかを調査すべく、蔵開きに潜入しました。

千代菊の冬の酒蔵開放

樽酒を楽しみに、開場前から大繁盛

千代菊の酒蔵に到着したのは午前9時過ぎ。蔵開きのスタートは10時からですが、すでにお客さんの姿がちらほらと見えていました。30分も経つと、用意されていた席はほぼ満席。試飲を待つ人々で、行列ができるほどでした。

大盛況の千代菊蔵開き

午前10時、ステージに樽酒が用意されると「おぉ!」と会場が沸き立ちました。鏡開きの挨拶は、羽島市長である松井さんが務めます。

千代菊の鏡開き前に挨拶をする松井市長

「本日は、羽島が誇る千代菊の蔵開きでございます。千代菊の280年の歴史は、杜氏の技術と、自然の恵みである長良川の伏流水にあります。以前、御年93歳になられる方に『羽島きっての銘酒は、長良川の伏流水が生む千代菊が随一だ』と言っていただきました。みなさまとともに、この蔵開きが、新たな春の幸せを呼び込みますことを祈念申し上げ、お招き賜りました御礼とさせていただきます」

市長の挨拶が終わると、みなさんお待ちかねの鏡開きです。

鏡割りをする松井市長や千代菊の板倉会長

樽の中には、金粉の入った見事な新酒が!お客さんが続々と樽のまわりに集まってきます。

千代菊の蔵開きで振舞われた新酒

ほどよい木の香りのフレッシュな新酒に「美味しい!」と、歓喜の声が上がっていました。

蔵開きは、まさに"地元のお祭り"

蔵開きでは、たくさんの催し物が用意されています。

まずは、なんといっても試飲。樽酒はもちろん、燗酒や甘酒、リキュールなど、さまざまな種類のお酒を試すことができます。

千代菊の蔵開きで試飲できるお酒のラインナップ

千代菊の蔵開きで振舞われた甘酒

また、羽島市近郊からやってきた屋台が提供する郷土料理は、お酒のおつまみにぴったり。地元で栽培したそば粉からつくったそばや、中部〜東海地方の名物・味噌カツ、長良川で獲れた新鮮なアユなど、美味しそうな料理がずらりと並んでいます。

千代菊の蔵開きで振舞われた味噌カツ

千代菊の蔵開きで販売された大きな鮎

美味しいお酒と料理に舌鼓を打ち、お客さんも大満足。

千代菊の蔵開きで満足そうにお酒を飲むお客さん

ステージでは、地域住民の方々が音楽や踊りなどを披露しています。子どもたちによる太鼓や、フラダンス、ベリーダンスなど、見どころ満載のステージでした。

千代菊の蔵開きで披露されたフラダンス

また、この日は蔵の中を一般開放し、現役の蔵人が酒造りについて解説するツアーも行なわれていました。ふだんは見ることができない酒蔵に、お客さんはわくわくしている様子。「お酒ってこんなふうに造っているんだ!」「知らなかった!」という声が聞こえてきます。

千代菊の蔵開きで行われた酒蔵見学の様子

また、地元の方々による物販や、似顔絵を書いてくれるコーナーもありました。

千代菊の蔵開きの似顔絵コーナー

アイガモ農法で育てた米を販売している森川さんは、千代菊といっしょに、稲作から仕込みまでを一貫して体験できる「羽島体験プロジェクト」を20年続けてきました。

アイガモ農法でお米を作り続ける森川さん

千代菊の会長・坂倉さん(写真左)と、アイガモ稲作研究会の会長・森川さん(写真右)

「田植えや稲刈りが体験できるこのプロジェクトでは、小さいお子さんにとって、かけがえのない経験ができると思います。実際、このプロジェクトをきっかけに食の安全性について興味をもち、大学で食に関する分野を学んで、食品メーカーに就職した子もいるんです。彼は、就職活動の面接でも、羽島体験プロジェクトについて話してくれたようで、『環境にやさしい食品をつくるためにがんばっている』と連絡をもらったときは、とてもうれしかったですね」

「アイガモ農法を経験することで、私たちが命あるものを食べて成長していることを感じてほしい。楽しみにしてくれる人たちがいるので、今後も続けていけるよう努力します」と、力強く語ってくれました。

みんなに愛されている千代菊

蔵開きの参加者に、千代菊に対するイメージについて聞いてみました。

まずは、羽島に住んでいる地元のお客さんから。なんと、毎年この蔵開きに通っているのだとか。

「ふらっと遊びに来る感覚です。千代菊は、昔から生活の一部になっていますね。お酒はもちろん、スタッフのみなさんがやさしくて、親しみがあります」

 千代菊の蔵開きに参加した名古屋の大ファン

名古屋から毎年参加しているというこちらグループは、千代菊の大ファンです。

「さまざまな蔵開きに参加しましたが、一番気に入っているのは千代菊。なんともいえぬ開放感と地元感が大好きなんです。千代菊のお酒は飲みやすくて美味しい。いくらでも飲み続けられますね」

千代菊の蔵開きに家族で来た人

会場には、子どもといっしょに楽しむ家族の姿もありました。

「岐阜市から来ました。千代菊の蔵開きは、お祭り気分になれるので、子どもも喜びます。今年で3回目の参加ですが、来年もまた来たいですね」

さらに、全国各地の酒蔵を巡っている日本酒が大好きなグループの方々は、細部にまで行き届いた配慮に感動していました。

「千代菊の蔵開きは、気候を考えて燗酒を出してくれたり、樽酒に金粉が入っていたり......お客さんの喜ぶポイントをしっかり考えていますよね。そんな優しさがお酒にも表れているのか、千代菊のお酒には繊細さがあります」

お客さんのほとんどがリピーター。千代菊の蔵開きを体験すると、ほとんどのお客さんがそのファンになってしまうのです。

地元に感謝を込めて、愛のある蔵開きを

千代菊の蔵開きは、20年前に初めて行なってから、毎年欠かさず開催しています。千代菊の会長・坂倉さんは「お祭りを開催する目的は、地元への感謝を示すこと」と、言います。

「今日の千代菊があるのは、みなさまのおかげです。蔵開きでは感謝を示して、ふだん酒屋に出さないお酒を提供しています。また、私たちが自信をもって紹介できる方々に出店していただいているので、参加者の方々にも、ぜひその魅力を知ってほしいですね」

千代菊の板倉会長

さらに、羽島の魅力と千代菊の今後について、語ってくれました。

「羽島の魅力は、"田舎であること"。田んぼがきれい、川がきれい......自然の風景が一番大事だと思っています。地元の方々に『千代菊は、自然あふれる羽島の風景の一部』と言っていただくことを、私たちは昔から大事にしてきました。今後も、まずは地元の方に飲んでもらい、美味しいと言ってもらえるお酒でありたいですね」

賑わいを見せる千代菊の蔵開き

千代菊の蔵開きは、スタッフの方々とお客さんの愛であふれたイベントでした。

「自分のまわりの幸せを願う。それをみんなが思えば、すごく素敵ですよね。その思いこそ、まさに"地酒"の在り方ではないでしょうか。それぞれの蔵が、まずは身近な地元を幸せにする。全国各地にたくさんの蔵があるのは、そのためだと思いますね」と、笑顔で語る坂倉さん。

千代菊はきっとこれからも、"平凡の銘酒"として、地元・羽島で愛され続けていくことでしょう。

(取材・文/石根ゆりえ)

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